青少年ネット規制法案についてのプレスリリース

時下、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

すでに複数のメディアで報道が行われておりますが、現在、自民党及び民主党において、インターネット規制法案とも言うべき法案が検討されています(自民党法案名『青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案』、民主党法案名『子どもが安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案』)。

MIAUでは、複数のルートを利用して法案の原文を手に入れ、検討を行ってきましたが、少なくとも下記のような疑問点があると認識しています。

  1. 有害基準の問題

    インターネット上の莫大な情報について、何が有害で何が無害なのかの基準を、内閣府に設置される少人数の委員会が独占的に決定することには、大きな問題があります。たとえ実際にコンテンツを見えないようにするのが民間の事業者に託されたとしても、その基準を国が作るというのは、情報の検閲にあたると思われます。

  2. 個人ウェブサイトなど非商業的運営者が対象になっている点

    現状、商業的なサービス提供者だけではなく、個人のウェブサイト運営者も対象となっています。 個人のウェブサイトに対しても対象となる情報発信について商業サイトと同様のレイティングや会員制サイトへの移行が義務づけられるとすると、個人が自由に情報を発信するという行為自体を阻害することになりかねません。(現行の青少年条例における有害図書規制では、業としての図書販売などについての規制がありますが、個人の情報発信を規制するものではありません。)

  3. プロバイダの講ずべき範囲が不明確かつ広範囲である点

    ウェブサイト運営者の利用するISP/ASPや、コンテンツプロバイダなどの事業者について、本法案では、有害なコンテンツのレイティング、もしくは会員サイトへの移行などの措置を行うことが求められています。しかし地域に密着する中小の事業者には負担が重く、またコンテンツの性質を第三者が判断し、特定のレイティングを行なうことは、利用者と事業者間で日常的にトラブルを発生させる要因ともなります。

    また競合他者がブログサービス等に有害情報の書き込みを行なうことで、健全な運用を不当に妨害するというようなことも起こりうるでしょう。「知った場合には」という条件がついているにしても、プロバイダに負わせる責任が重く、かつ、不明確です。

    法案では、このようなトラブルについて紛争処理機関による解決を求めていますが、この紛争処理機関の裁定については非公開で処理すべきとしており、透明性・公開性への配慮がみられません。

  4. フィルタリングの技術上の問題点

    フィルタリングは未だ不完全な技術です。携帯用のフィルタリングソフトが自民党のウェブサイトを遮断してしまったように、大切なサイトを遮断したり、本当に有害とされるサイトを素通しするなど、多くの問題が指摘されています。そうした技術を、PCや携帯電話などといった機器で、有効性が実証されてもいない段階から義務化してしまうというのは、誤りではないでしょうか。

    また年齢に応じたカスタマイズやメンテナンスは、すべて親の責務としてのしかかってきます。現時点でこれらの責務を果たせるのはごく一部の限られた親であり、すべての親に対してこれを求めることは無謀と言わざるを得ません。

  5. 知る権利の侵害

    本法案は表現規制を慎重に避けている点が見受けられますが、その一方で国民の知る権利を大きく侵害しています。先に述べたように現在のフィルタリング技術は、有害と見なされる情報のみをピンポイントでブロックすることは困難であり、その周辺にある多くの有益な情報も一緒に遮断します。特にコミュニティサイトは、サイト単位でまとめて規制されてしまう可能性が高く、同世代とのコミュニティによって精神的平衡を保っている青少年に対しては、有害な対策となりかねません。

    またこのような規制は、「 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」の第三条に定められた(すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現)の精神に反するものであり、18歳未満であるという理由だけでこれを阻害して良いことにはなりません。

  6. 教育という視点の欠如

    本法案では、フィルタリング運用の具体性と比較して、啓蒙活動や青少年への教育に対する具体的な対策がありません。そもそも青少年の有害情報への対処は、危険なものを全て包み隠してしまうのではなく、何が危険かを教えていくことが大事なのではないでしょうか。教育面での具体策なしの法案は、青少年の健全な育成という大前提を見失っていると言わざるを得ません。

  7. 経済的な問題点

    本法案では、PCメーカーにフィルタリングソフトのプレインストールを行うことを、努力義務として課しています。これにかかる費用は、製品価格に転嫁される可能性が高く、青少年が使用するか否かに関わらず、すべてのPC購入者への負担増となります。また、海外からの輸入品や、Linux等のフィルタリングソフトの無いOS等の場合には、誰がどのように対応するのかという点が明らかではありません。

以上のように、言論規制という意味でも、実際の運用という意味でも、多くの懸念がある法案になります。私どもMIAUでは、このような懸念についてきちんと解決を行ってから、法案を国会に提出するべきであると考えており、一部報道に見られるように、拙速な対応を行うべきではないと考えます。

MIAUでは、引き続き法案についての検討を行うとともに、議員の方々へのロビイング活動や、法案の問題点についての一般の方々への周知を行なっていく予定です。また同時に、青少年の健全な育成を阻害する有害情報対策案の研究・模索等も行なって参ります。

とりいそぎ、日程のみの決定ではありますが、下記の時間にて、本法案に関するイベントを開催することを予定しています。正式な告知は後日になりますが、この件に興味のある方は是非ご参加いただければと存じます。(申込み受付先等は正式告知時に公開します)

  • 日時:2008年5月1日(木) 18:30 ~
  • 場所:都内

今後とも、MIAUのご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

著作者 : 中川 譲
最終更新日 : 2008-04-09 07:33:40