MIAU 一般社団法人インターネットユーザー協会

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プレスリリース

2009.10.13

私的録画補償金に関する意見及び要望書を文部科学省・文化庁・消費者庁に提出しました。

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は10月9日、文化庁長官、文部科学大臣、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長へ宛てて「アナログチューナー非搭載DVD録画機器を私的録音録画補償金の対象機器に含む件についての意見と要望」を提出いたしました。

アナログチューナー非搭載DVD録画機器につきましては、「ダビング10」の運用によりユーザー(消費者)の録画が厳しく制限されていることから、私的録画補償金を課すべきかどうかで関係者間(権利者・ユーザー・メーカー)の意見が分かれているところです。それにもかかわらず、9月8日に文化庁が当該機器が課金対象であるとの見解を示したことで、今後関係者間の対立がより激化することが予想されています。

当会といたしましては、至急関係者間で協議の場を設け、結論が出るまでの間はアナログ非搭載DVD録画機器への補償金の課金を見送るべきと考えております。

 

2009年10月9日
文化庁長官 玉井日出夫 様
文部科学大臣 川端 達夫 様
消費者担当大臣 福島瑞穂 様
消費者庁長官 内田俊一 様
消費者委員会委員長 松本恒雄 様

 

一般社団法人インターネットユーザー協会

 

アナログチューナー非搭載DVD録画機器を
私的録音録画補償金の対象機器に含む件についての意見と要望

2009年9月8日、文化庁は社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)からの照会に回答する形で、「アナログチューナー非搭載(デジタルチューナーのみ搭載)のDVD録画機器が著作権法第30条第2項に規定される私的録音録画補償金制度の対象機器(政令第335号第1条第2項第3号で規定される特定機器)に該当する」との文書を文化庁長官官房著作権課長名で出しました。私的録音録画補償金制度については抜本的見直しのための議論が2006年から2008年にかけて文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会で続けられてきましたが、関係者が包括的な合意に至らず、また短期間で合意が実現できる状況にはありません。このことは2008年6月17日に発表された文部科学省及び経済産業省の合意文書「ダビング10の早期実施に向けた環境整備について」においても、2009年5月22日に発表された「著作権法施行令等の一部改正について(通知)」においても確認されております。

アナログチューナー非搭載のDVD録画機器が私的録音録画補償金の対象機器に含まれ るかという点については、2009年5月22日付の「著作権法施行令等の一部改正について (通知)」において「アナログチューナーを搭載していないレコーダー等が出荷される場合、及びアナログ放送が終了する平成23年7月24日以降においては、関係者の意見の相違が顕在化し、私的録画補償金の支払の請求及びその受領に関する製造業者等の協力が十分に得られなくなるおそれがある。両省(文部科学省・経済産業省)は、このような現行の補償金制度が有する課題を十分に認識しており、今回の政令の制定に当たっても、今後、関係者の意見の相違が顕在化する場合には、その取り扱いについて検討し、政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずることとしている」と記載されております。

しかし、今回文化庁は、関係者間で合意の取れていない「アナログチューナー非搭載のDVD録画機器が対象機器に含まれるか」という判断を何の審議も経ず、独断で行った形になります。権利者・消費者・メーカーなどの関係者間で意見の相違が顕在化しているにも関わらず、このような文書を出されたことは誠に遺憾です。

そもそも行政庁が、「関係者間で慎重に議論しながら進める」という合意が取れている事項について一方的かつ法的拘束力のない法令解釈を外部に対して出したことに、どれだけの妥当性があるのでしょうか。政権交代という混乱の時期だからこそ、行政官庁には慎重な態度が要求されると当協会は考えます。

私的録音録画補償金制度は、メーカーに「協力義務」を課しているだけであり、法的制裁もなく、メーカーが協力をしなければ実効性を持たない脆い制度です。言い換えれば、 関係者間の話し合いに基づく合意がなければ成立しない制度ということです。権利者とメーカーの対立構図が深まっている中、行政官庁である文化庁がこのような見解を出せば、メーカー側が態度を硬化させ、補償金制度に一切協力しないという行動につながりかねないのではないでしょうか。文化庁にどのような意図があるのかは消費者・ユーザーの立場からはうかがい知ることはできませんが、私的録音録画小委員会で当協会代表理事の津田大介が、委員として3年間の長きにわたり議論に協力してきたことが結果的に無視されて進められたことについては強い遺憾の意を表明せざるを得ません。今回の件は、私的録音録画補償金制度全体に関する大きな問題です。この時期になぜ文化庁長官官房著作権課長が問題をより一層混乱させるこのような文書を出したのか、文化庁は真意を明らかにする必要があるのではないでしょうか。

本件に関する当協会の意見は以下の通りです。

  • 私的録画補償金は、著作権保護技術による複製制限のないアナログ放送のデジタル録画が無制限にできることを懸念して導入されたものであり、コピーワンスやダビング10といった複製回数に厳しく制限されるDRMが施されているようなコンテンツについてはそもそも「補償すべき損害」が存在しない。そのため、コピーワンスやダビング10が施されたコンテンツを録画するメディアや機器について補償金徴収の対象から除外する必要がある。今春より市場投入されているアナログチューナー非搭載型DVD録画機器は、物理的にDRM制限の下でしか複製を行えない仕様になっているため、補償金の対象機器とす ることは不当である。
  • 文部科学省・経済産業省ともに「関係者間で包括的な合意に至らず、また短期間で合意が実現できる状況にないと認識」している合意文書を出しているにも関わらず、何の審議も経ずに文化庁の裁量で補償金の対象機器を決めるやり方は、あまりにも一方的であり、私的録音録画補償金制度により一層の混乱をもたらすものである。

以上のことに鑑み、本件について以下のことを要望いたします。

  1. 無料デジタル放送の録画に対する私的録音録画補償金制度のあり方については、消費者、権利者、メーカー等を含む、公平な人選のもと、透明性の確保された審議の場を設け、そこで引き続き合意をめざして議論すべきであり、早急にそのような議論の場が設定 されること。
  2. アナログチューナー非搭載DVD録画機器を補償金制度に関して政令指定機器であるとした文化庁長官官房著作権課長の回答を撤回し、議論の結論が出るまで本件は保留とすること。
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