「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に意見書を提出しました。

MIAUは、文化庁の「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2015年7月27日

「著作物等の利用円滑化のためのニーズ」意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

(1) どのような種類の著作物等をどのような場面、方法で利用するにあたり課題がありますか。現在又は将来想定される課題について具体的に御記入ください。また、そのような利用ができないために、既にビジネスに支障が生じている、又は支障が生じうることが考えられる場合は、それについても具体的に記載をお願いします。

1. いわゆる自炊代行など、ユーザーが合法的に入手した著作物のデジタル化・アーカイブを、有償無償問わず第三者に依頼することができない。

デジタル化やアーカイブ化はユーザーにとっても重要な視点である。書籍を例に取ると、自身が合法的に所有する書籍をデジタル化しようとした場合、現状では所有者自身がスキャンせねばならないことになっている。しかし高齢者や蔵書が大量にある人にとって、それは敷居が高く、また時間もかかる。その点を解消するためにいわゆる自炊代行業が存在するが、現在権利者が自炊代行業者に対して訴訟を起こし、その利用や発展が止まってしまっている。

またVHSテープやレコードなどのアナログメディアも、その再生機器が今後は入手困難になることが予想される。そのためにもメディアチェンジを代行する事業者を認める必要がある。

2. ユーザーが合法的に入手、あるいは自身が作成したソフトウェアが携帯電話やタブレット端末などのOSによって実行させることができない場合、その制限を解除(いわゆるJailbreakやRoot化)して、それらのソフトウェアを実行させることができない。

現状iOSなどのスマートデバイス向けOSでは、そのソフトウェアの実行や配布に対して、OSを提供するベンダーとの有償契約が必要となっている。またそのベンダーが不適切だと判断したソフトウェアは、アプリストアに並べることもできない。またその判断理由が明らかにされないことも多い。

しかし任意の端末の上で動作するソフトウェアを記述し、それを実行することは、プログラマおよびその端末を購入したユーザーの自由である。教育の現場では、教員が開発した教材を生徒のタブレット上で動作させられないなどの弊害も出てきている。

3. 教育や批評、セキュリティ検証、公正に入手したコンテンツの視聴やアーカイブ目的などの公正かつ必要な複製を行うために、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避する行為ができない。

教育や批評を行う場合、手法として対象の引用は必要不可欠である。しかしDVDやBru-layなどの映像媒体やテレビ番組には、コピーコントロールないしアクセスコントロールがかけられており、現状ではその解除は目的を問わず違法とされている。

現在そのアクセスコントロールが事由により、ユーザーが合法的に入手したコンテンツにもかかわらず、オープンソースプラットフォームでは視聴することができない。あるいはそのコンテンツをバックアップする目的で私的複製する際も同様である。SACDやDVD Audio、DTS Music Discなど、今後プレイヤーの普及が望めないソフトについても、ユーザー自身でのリッピングによるデータ取り出しやバックアップを認めるべきである。

一方でソニーBMG製CD XCP問題のように、コピーコントロールのソフトウェアにセキュリティ上の問題があることがユーザー自身の検証によって初めて明るみに出るなど、ユーザーによるセキュリティ検証が重要な役割を果たすことがある。この事例を考えれば、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避することを一律に違法とすることは、消費者の財産やプライバシー保護の観点で大きな問題がある。

4. 読み上げ機能や点字変換機能を利用するため、電子書籍のDRMを解除する行為ができない。

我が国においても電子書籍市場は拡大し、一般的なものになりつつある。電子書籍の利点として、紙の本では難しかった自動読み上げや点字ディスプレイへの対応が容易であることが挙げられる。

しかし現実として、電子書籍にはDRMがかけられており、そのような利点を活かすことができない状況がある。これは障害者への情報アクセスを不当に害している。

5. ハードウェアドングルが実行に必要なソフトウェアにおいて、そのソフトウェアのサポート切れやハードウェアインターフェイスの進化によって、そのハードウェアドングルが物理的に利用できなくなった場合、そのソフトウェアにドングルを回避するような改変を加えることができない。

6. 情報公開請求によって開示された行政文書や、行政が公開しているデータを、ユーザーがウェブサイト上で公開したり、利用したりすることができない。

情報開示請求に応えるための行政文書の複製は権利制限されているが、それを広く知らしめ、批評のためにウェブサイトなどにアップロードすることが、時に複製権や公衆送信権、あるいは送信可能化権によって問題となったケースがある。これは市民の知る権利や、ジャーナリズムを害することがある。またこれは政府の進めるオープンデータおよびオープンガバメント推進政策を阻害する。

7. 批評やオンラインショップやネットオークション等で販売するため、その商品の写真(書影やジャケット等)を撮影し、それをウェブサイト上に掲載することができない。

Eコマースの普及により、現在は事業者同士、あるいは事業者消費者間の取引だけでなく、インターネットオークションやフリーマーケットアプリなどを用いた消費者同士での取引が実施されるようになってきている。この際はその商品の状態を示すために商品の写真を掲載することが重要であるが、現状ではそのような商品イメージをウェブサイトに掲載することに許諾が必要である。しかしこれは権利者の権利処理コストをあげるのみで、かつ迅速な流通を害するのみである。

8. 会議資料や取材資料作成など業務のために、著作物を複製し、利用することができない。

9. Podcastや動画作成、DJミックスなどCGMコンテンツ作成の際に、音楽をBGMとして用いたくても、現状の包括契約モデルでは著作隣接権をクリアする手続きが煩雑で、利用料金の目安もない。

(2) (1)で挙げる利用は、現在の著作権法のどの規定(権利に関する規定・権利制限規定)との関係で課題がありますか。

  • 1. 著作権法第30条
  • 2. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 3. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 4. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 5. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 6. 著作権法第30条
  • 7. 著作権法第30条
  • 8. 著作権法第30条
  • 9. 著作権法第21条・第23条・第30条

(3) (1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ①権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、具体的にどのような制度を望みますか。また、そのような制度設計が望ましいと思われる理由を述べてください。

当該の行為が実施できるような権利制限規定、特に個別規定でなく、包括的な権利制限規定を創設すべきである。その際には米国のフェアユース規定を範とし、さらに現代の情報通信環境に即し、言論の自由を担保する、先進的な「日本型フェアユース」の導入を目指すべきである。

(1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ②権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、(1)に挙げた利用が著作権者等の利益を不当に害さない(著作権者等の正規のビジネスとの競合、衝突の有無や度合いを含む。)と判断する理由は何ですか。

1. あくまでも正規に入手した著作物のメディアチェンジにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。

2. 自身のデバイスの上で動かすソフトウェアに関わるものにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。ソフトウェアの違法コピーとは論点が異なる。

3. 公正かつ必要な複製であるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

4. 障害者の情報アクセスを担保するためであるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

5. 正規に購入したソフトウェアを実行するためにすぎないから、著作権者等の利益を不当に害さない。

6. 市民の知る権利やジャーナリズムを担保するため、著作権者等の利益を不当に害さない。

7. 目的とする著作物そのものをやりとりするものではなく、その流通に資するものであるため、著作権者等の利益を不当に害さない。店頭に陳列されている状態と変わらない。

8. 現実問題としてこのような軽微な利用は広く行われており、多くの人が違法状態にある状況は打開すべき。また現在議論されているTPPの知的財産条項に著作権侵害の非親告罪化が導入されるという議論もあり、その際のセーフガードとしても議論すべき。

9. BGMなどの軽微な利用は、著作物そのものを単独で利用するわけではなく、音源配信とはバッティングしない。よって著作権者等の利益を不当に害さない。

③著作権の集中管理の促進など、ライセンシング体制の充実によって解決すべきとお考えの場合は、具体的にどのような環境整備を望みますか。

特になし。

④その他の解決方法について御提案があれば、理由とともに具体的に御記入ください。

拡大集中許諾制度(Extended Collective Licensing; ECL)の導入なども検討し、利用したいユーザーが自由に正しく利用しやすい環境整備を進めることが、最適なクリエーターへの適切な対価還元につながる。

以上
著作者 :
最終更新日 : 2015-07-31 23:24:26