「一般用医薬品の通信販売の再開を求める要望書」を提出しました。

MIAUは、一般社団法人 eビジネス推進連合会および特定非営利活動法人 日本オンラインドラッグ協会と共に「一般用医薬品の通信販売の再開を求める要望書」を長妻昭厚生労働大臣ら宛に提出しました。

これは、現在行われている一般用医薬品のネット通信販売規制は、その決定までの過程がやや性急に過ぎ、満足な議論や理解を得られていないのではないかとの視点から、上記2団体との共同提出に至ったものです。

医薬品の取り扱いが安全第一であるべきなのは言を待ちませんが、インターネットの利便性との兼ね合いの中で、より良い制度設計を検討すべきではないかと当会は考えます。

厚生労働大臣 長妻 昭 殿
内閣府特命担当大臣(消費者)荒井 聰 殿
内閣府特命担当大臣(行政刷新)蓮 舫 殿
内閣官房副長官 古川 元久 殿
内閣官房副長官 福山 哲郎 殿
自由民主党 幹事長 大島 理森 殿
自由民主党 政務調査会長 石破 茂 殿
民主党 幹事長 枝野 幸男 殿
民主党 政策調査会長 玄葉 光一郎 殿
平成22年7月9日

一般用医薬品の通信販売の再開を求める要望書

一般社団法人 eビジネス推進連合会 会長 三木谷 浩史
一般社団法人 インターネットユーザー協会 代表理事 津田 大介
特定非営利活動法人 日本オンラインドラッグ協会 理事長 後藤 玄利

「一般社団法人eビジネス推進連合会」、「一般社団法人インターネットユーザー協会」及び「特定非営利活動法人日本オンラインドラッグ協会」は、下記の事項を強く要望いたします。

  1. 要望の内容

    一般用医薬品の通信販売の再開に向けた取組みを積極的かつ早急に進めていくことを要望します。

  2. 要望の理由
  3. 一般用医薬品の通信販売を行う薬局・店舗では、これまでも、安全・安心に供給する仕組みを自主的に整備してまいりました。しかし、昨年6月1日に施行された厚生労働省が定める省令により、従来適法に行われていた一般用医薬品の通信販売は、“対面の原則”という不明確かつ不合理な理由のもと、一部の例外を除き全面的に禁止されてしまいました。

    一般用医薬品が通信販売で購入できなくなったことにより健康の維持や体調管理に不安を訴える切実な声が事業者に多数寄せられており、販売継続を求める署名も150万を越えております。また、「ハトミミ」に寄せられた第1回集中受付月間(本年1月18日~2月17日受付)の意見のうち約4割が、医薬品の通信販売規制の問題です。こうした事態からは、規制導入の決定過程で国民的な議論が不足していたのではないかという疑念が拭えません。

    国民の健康の維持を図る観点からは、全ての国民に平等に安全に医薬品が届けられることが前提でありますが、消費者の上記の声を踏まえると、通信販売を含めた形で供給体制を構築しない限りそのことは達成できないということが明らかになっています。したがって、通信販売の問題はこのまま座視してよい問題でなく喫緊の課題であります。

    安全確保のための業界ルール案は昨年の舛添厚生労働大臣(当時)主催の検討会でもすでに示しております。一刻も早く安全かつ平等に医薬品を供給するための制度設計について科学的根拠に基づく議論を開始し、所要の法令整備を早急に図ることが必要不可欠です。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-07-20 20:39:31

ネットリテラシ読本Ver1.3.1(全6セクション)のパワーポイント版を公開します

MIAUは、法や条例による安易な規制よりも、青少年に対するネットリテラシー教育がまず先にあるべきとして、インターネットリテラシ読本「“ネット”と上手く付き合うために」を公開して参りました。

今回はより学校の授業で使いやすい形態として、パワーポイント版を公開いたします。PDFの本文から若干追記された部分もありますので、Ver1.3.1とさせていただきます。PDF本文の改訂は、7月を予定しております。

なおこの教材は、クリエイティブコモンズ「表示・継承」ライセンスによる公開となります。利用される皆様は、複製・配布など商用非商用に限らず、無償でご利用いただけます。また携帯電話の利用環境にあわせた改訂も自由に行なっていただけます。ライセンスの詳細は、読本の奥付をご覧ください。

【変更履歴】

  • パワーポイント版として新規作成
  • §6にチェーンメールに関する記述を追加

なお読本に関するご意見ご要望がありましたら、下記アドレスまでお送りください。より良い教材とすべく、フィードバックへのご協力よろしくお願いいたします。

E-mail: literacy◎miau.jp (◎を@に変えてください)

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-06-15 19:40:50

6月7日付で、内閣府「児童ポルノ排除総合対策案への意見募集」へ意見を提出しました

MIAUは7日、内閣府が実施した「児童ポルノ排除総合対策案への意見募集」に対し、下記のパブリックコメントを提出しました。

意見

当団体では、ブロッキングについて反対し、削除の促進と摘発の強化を求める。

ブロッキングは児童ポルノとほとんどの場合無関係な全てのインターネット利用者の通信の秘密を侵害し、インフラとしてのインターネットの可用性を損なう。にもかかわらず、ブロッキングはどの方式でも、確信的な児童ポルノ掲載者・閲覧者双方にとって決定的な対応策となり得ない。しかも、捜査に先行してブロッキングを行うことは、ある種捜査情報を事前に漏洩することになりはしまいか。

「サーバーの国内外を問わず、画像発見後、速やかに」ブロッキングが行われる体制で、リスト管理団体の運営に透明性を持たせ、利用者の表現の自由に不当な影響を及ぼさないことが本当に可能か。海外でもリスト管理団体への監視は十分でなく、例えばイギリスではポルノ全般やヘイトスピーチもリスト対象とされており、その範囲の不明瞭さから、妥当性の検討は英国内においても重要な問題とされている。

児童ポルノの排除には、効果が限定的なブロッキングよりも 当該リソースについての削除の促進と児童ポルノ正犯の摘発のほうが重要である。にもかかわらず、本対策案ではブロッキングと比べその具体策が著しく欠けている。例えば、まず児童の人権侵害等が発生している緊急時において、事業者が画像の削除を行うことができる法的根拠を明瞭化することを検討案に追加してはどうか。児童ポルノの国別発信数の統計については諸説あるが、米国内のサーバがその大きな割合を占めていることは複数の統計で明らかである。国外については、各国ホットラインの連携のみならず、個々の事案についての当該国捜査機関への迅速な情報提供や捜査協力によって、迅速なテイクダウンが行える体制を整えていく必要があろう。

なお、携帯電話利用者の年齢認証やメッセージ交換サービス監視等、CGM事業者の青少年保護に向けた新たな取組を支援するにあたっては、利用者の真に有効な同意を取るための方法の検討や、通信の秘密についての権利意識の希薄化を招かない工夫を入れることも、同時に支援する必要がある。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-06-15 19:40:47

6月3日、『MIAU Presents ネットの羅針盤』第2回生放送を行います

MIAUは6月3日に、ニコニコ生放送で『MIAU Presents ネットの羅針盤』第2回を放送いたします。

今回は、3月5日に内閣が国会へ提出した「放送法等の一部を改正する法律案」(衆議院審議経過参議院審議経過)を取り上げます。この法案は、近年総務省を中心に議論が続けられてきた「通信・放送の融合」のための施策として、テレビ放送・有線放送・「電気通信役務利用放送」などの放送ごとに並存してきた放送関連法をまとめるものです(総務省による法案概要PDF)。その一方で、通信と放送の境界が曖昧になっている現在、法案での「放送」の定義如何によっては、利用者が増え続けているニコニコ生放送やUstreamなどのユーザー発ネット“放送”に対しても内容規制が加えられかねないとの懸念も指摘されています。

心配する前に、まずは法案の内容を知ることから始めよう――ということで、この法案を追いかけていらっしゃる弁護士の日隅一雄氏と、法案を審議する立場の民主党参議院議員・藤末健三氏をゲストにお迎えします。ネット規制への懸念も含め「問題」と言える点が法案にあるのか、そして「通信・放送の融合」の向かうべき先はどこなのかを考えます。

番組サブタイトル

「どうなる放送法改正! ネット放送の行方は?」

番組URL

http://live.nicovideo.jp/gate/lv18321720

日時

6月3日 21:00~23:00

出演者

  • 日隅一雄氏(弁護士)
  • 藤末健三氏(民主党参議院議員)
  • 庄司昌彦(GLOCOM講師・主任研究員、MIAU理事)
  • 司会:津田大介(メディアジャーナリスト、MIAU代表理事)
著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-06-01 18:07:54

「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」に対する意見を提出しました

MIAUは12日、内閣府男女共同参画局が実施した「第3次男女共同参画基本計画策定に向けて(中間整理)」に対する意見を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」

「メディアにおける有害情報の氾濫等情報化の進展による新たな課題も発生している」(p.35)とあるが、そもそも有害情報と呼ばれる情報の種類は多様であり、一般論としてその氾濫がどれだけ女性に対する暴力と認めることができるのか不明である。さらに「インターネットや携帯電話等の急速な普及により、これらを介した新たな形態の被害が次々と発生してきた。」 「インターネットや携帯電話の普及により、女性に対する暴力は多様化してきている」(共にp.35)とあるが、「新たな形態の被害」「多様化」の内容が文章のこの時点であきらかにされていないため、根絶の対象が無限定に広がり、検証不能な新メディア悪玉論に陥っている。

そもそも、「インターネットや携帯電話の普及により、女性に対する暴力は多様化してきている」(p.35)との指摘に関しては、インターネットという技術が、女性に対する暴力のみ多様化させることはあり得ない。もしインターネットが何らかの暴力を増幅させ多様化させているのならば、男女を問わず問題としなければならない。男女共同参画を志向する以上、男性に対する暴力の根絶をもうたわないのは不完全である。平成12年度の総理府男女共同参画室による『男女間における暴力に関する調査』においても明らかな通り、暴力は男性から女性へ一方的に行われるものではない。そもそものこの分野の題名からして、不適当であると考えられる。

第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」

「児童ポルノの根絶に向けて、国民運動の実施、インターネット上の流通防止対策の推進や閲覧防止対策の検討等総合的な対策を検討・推進するとともに」(p.38)「インターネット上の児童ポルノ画像の流通防止対策を推進するとともに、ブロッキングの導入等閲覧防止対策を検討する」(p.40)とあるが、広く流通する児童ポルノに対応が必要であるとの考えは妥当であると考えられるものの、閲覧防止対策を行うことを検討する以前に、まず徹底した発信者への対応を行うことが必要である。国民の通信を恣意的に遮断するブロッキングについての法的根拠は現行法上一切存在せず、電気通信事業法や日本国憲法等との兼ね合いの中で様々な問題が考えられるが、発信者への対応と被害児童へのケアは、現行の児童ポルノ法・児童福祉法等において100%の対応が可能である。検討ではなく、現行法の下での即座の児童ポルノ対策を行い、暴力の根絶に邁進するべきである。

第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」

「こうした性・暴力表現については、インターネットの普及等を通じて発信主体が社会一般に拡大していることに加え」(p.40)とあるが、そもそも、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける表現」とされているものの多くは、社会の中で主流の表現ではなく、マイナーなものである。そして、そのようなマイナーな志向の表現がマイナーながらも生き残るのは、人々の多様なライフスタイルの反映であり、インターネットは多様な人々をつなぐことを可能にした存在でしかない。「多様な生き方を可能にする社会システムの実現」を目指すべき男女共同参画基本計画の策定にあたって、性に関する領域で暴力の概念を拡大してインターネット等の新メディアを悪玉としてあげつらう論議は、全体の方針に合致しないのではないか。

第12分野「メディアにおける男女共同参画の推進」

「インターネット等を利用した新たなサービスが次々に生まれ、メディアが多様化する中、<略> 女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報の流通が社会問題となっている」(p.52)とあるが、インターネットという技術が女性や子供の人権「のみ」を侵害するような違法・有害情報の流通を促すことは論理的にあり得ない。男女共同参画社会においては、老若男女を問わず人権を守っていくことが肝要となると考えられる。女性・子供のみを特筆することは避けるべきである。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-05-13 03:32:24

「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言(案)に対する意見を提出しました。

MIAUは10日、総務省が募集していた、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言(案)に対するパブリックコメントを提出いたしました。内容は、下記の通りです。

1. フィルタリングの普及改善に関して

意見概要

フィルタリングの普及改善にあたっては、保護者の自律的な選択を妨げるべきではないと考える。

詳細

P.7の以下の部分について

さらに、携帯電話フィルタリングの解除の抑制については、危険性を十分に認識しないことによる安易な解除を防ぐための取組が求められる。例えば、解除申告を受け付ける際に保護者に対する危険性の説明と明確な意思確認を行うプロセスを導入するといった解除受付方法の改善などが具体的には考えられる。また、解除理由の実態を踏まえ有効な対策を検討していくことも必要である。加えて、保護者になりすました子どもによる解除申告を防ぐための取組が求められる。例えば、解除申告を受け付ける際に、保護者に、架電での対応を含め、直接意思確認を行う対応や、保護者の本人確認書類の原本の確認等の対応が考えられる。

このような形でフィルタリング解除を抑制する場合、保護者の自律的な解除の選択を、手間を煩わせるような形で抑制することは望ましくない。あくまでも、不用意な解除を抑制する程度に止めるべきである。

2. 「ミニメール」内容確認に関して

意見概要

「ミニメール」や類似の呼称のサービスにおける内容確認の取組の拡大には反対する。内容確認が行われるメッセージ交換は、信書に見えてはならない。 中間の事業者の存在を可視化するべきである。

詳細

「ミニメール」内容確認について、P.16で以下のようにまとめているのは、法的な整理としてはそのとおりであろう。

この点については、「ミニメール」が通信当事者の範囲について特段の前提条件なく提供されている場合、内容確認を追加的に行うに際しては、利用者から有効な同意を取得することにより、通信の秘密の保護との関係で問題なく実施することができる。 また、サービス提供に先立ってCGM運営者が通信当事者として加わることについて利用者からの明確な同意が得られている場合も、内容確認を行うことができると解される。

しかし、「ミニメール」は、そもそも「メール」様のものがCGMサイトに閉じているという意味において「ミニ」であり、個人間のメッセージ交換という性質はメールと変わるところがない。そして、電子メール自体、紙の信書を模したメッセージ交換の形式である。通信の秘密の保護というのは、単なる法律上の制約ではなく、利用者にとっては基本的人権のひとつである。

大規模なユーザ数のCGM運営者による「ミニメール」内容確認は、たとえ利用者の同意を得ていようとも、利用者にとって重要な権利の制約であることにかわりはない。そして、この内容確認の影響を受けるのは、成長過程にある子どもたちである。多くの子どもたちが日常的に利用するサービスにおいて、個人間のメッセージのやりとりを運営者が内容確認することは、子どもたちに内容確認が行われることを前提するということを習慣づけてしまう可能性がある。これは、原則と例外を逆転するものであり、通信の秘密や信書の秘密についての権利意識を大きく歪めることになりかねない。実際、P.13に

要件4)通常の利用者であれば同意することがアンケート結果等により合理的に推 定されること →(当てはめ)CGM 運営者が通信当事者とならない場合の「ミニメール」内 容確認について、利用者の包括同意は推定されにくいため、個別のサービス について利用者啓発等を通じて、同意が合理的に推定される環境を整備して いく必要がある。

とあるが、このような利用者啓発それ自体が、ネット上のメッセージ交換一般について通信の秘密の保護を期待してはならない、という誤った印象を子どもたちに植え付ける危険性がある。

現実に、「ミニメール」を通じた児童被害がある以上、内容確認自体を否定することはできないが、少なくとも、個人間のメッセージ交換への内容確認が通信の秘密や信書の秘密についての権利意識の低下につながらないようにする必要がある。そこで、「ミニメール」という、信書メタファーを用いることを止めることを当団体では求める。 具体的には、内容確認をするのであれば、「メール」という文言をサービスの名称から外すべきである。 内容確認が行われるメッセージ交換は、信書に見えてはならない。 中間の事業者の存在を可視化するべきである。

たとえば、利用者がアバターを用いてコミュニケーションをするCGMサイトでは、事業者のみが所持することができる「執事」アバターに伝言を依頼し、執事が相手に伝言を伝える、といった形式をとることが考えられる。このような形をとることは、さまざまな発達段階にある子どもたちを含めた利用者から、実効性のある内容確認についての同意を得るという意味でも必要があると考える。

3. 利用者年齢認証の確実化について

意見概要

年齢情報の携帯電話事業者からCGM運営者への第三者提供にあたっては、ひとたび同意すれば携帯電話事業者が適格と認定した全てのCGM運営者に第三者提供が行われる包括的な同意ではなく、CGMサイトごとに同意・非同意を選択できる必要がある。

詳細

P.22の以下の部分について、

青少年の利用者や保護者の視点を踏まえれば、自ら提供した個人情報については的確に把握・管理していくことが望ましいものの、 年齢情報の提供先主体であるCGM運営者の適格性や情報の活用方策について個別に判断することは困難であること、提供先主体の範囲は不断に変わり得ること等から、実運用上は携帯電話事業者等による管理に委ねられる部分が多くなるため、提供先主体の選定基準(適格性の判断基準)等については、なるべく明確かつ透明であることが望ましい。例えば、携帯電話事業者等としては、顧客からの照会に対して、当該契約端末の利用者年齢情報の提供先主体である CGM 運営者の名称を開示する等の取組が考えられる。

「自ら提供した個人情報については的確に把握・管理していく」ことと、携帯電話事業者等が提供先の適格性判断を行い基準を明確かつ透明とすることは別の問題である。しかし、自らが提供した個人情報の的確な把握・管理を青少年の利用者や保護者が行うことができるようにするためにどのような取組が行われるのか、提言の中では明確になっていない。むしろ、上記の引用に続く以下の部分

また、年齢情報を CGM 運営者に対して第三者提供する際には、個人情報保護法第23 条(ガイドライン第 15 条)に基づく同意取得を行うことが求められる。同法は、第三者提供の事実や情報の種類、第三者提供の手段方法等の事前通知等を要件として、オプトアウトの手続も定めているが、 (ア)携帯電話事業者等にすれば、年齢情報の取得時に利用者と接触することから、その際に第三者提供の同意を取得するのが合理的であること、 (イ)利用者視点を踏まえればオプトインの方がより丁寧な対応であることから、オプトインによる同意取得がより望ましいと考えられる。 具体的に求められる対応は、年齢情報を取得する対象により異なる。新規契約や端末の機種変更等、青少年利用者又は保護者が販売店等に来店する場合、利用者年齢情報の取得等について説明するとともに、第三者提供に関する同意を取得することが考えられる。他方、一部携帯電話事業者に見られる利用者年齢情報を既に登録済みの青少年利用者又は保護者に対しては、第三者提供についての同意を取得する必要があるため、利用者本人に対して行う手法(例:携帯電話事業者が顧客端末に送付する SMS での案内等)や保護者に対して行う手法(例:請求書同封物を通じた案内等)等何らかの手法を講じる必要がある。また、利用者年齢情報を取得していない既存の契約者に対しては、機種変更等に先だって直ちに情報を取得するかどうかについては、費用対効果や利用者の利便性等に配慮しつつ検討を進める必要があると考えられる。

では、議論が、携帯事業者からCGM運営者への年齢情報の第三者提供についての、一括の同意取得が前提とされていて、個別のCGMサイトごとについての、青少年の利用者や保護者による的確な把握・管理を想定していないように思われる。しかも、新規契約や機種変更などのさいの来店の場合についてはオプトインの可能性があるが、既存契約者などについての同意取得のためのSMSでの案内や請求書同封物での案内は、オプトインではなくオプトアウトを想定しているように思われる。

しかしながら、青少年の利用者や保護者による自らが提供した個人情報の的確な把握・管理のためには、少なくともサイト単位での同意ないし非同意が可能でなければならない。

技術的には、例えば携帯電話事業者がOpenIDプロバイダーとなり、各CGM事業者がOpenIDコンシューマとして、OpenIDの属性交換のメカニズムで年齢情報の取得を行おうとするのであれば、携帯電話の利用者は個々のCGM事業者ごとに、年齢情報の提供について同意ないし不同意を選択することができる(従来、携帯電話でのOpenIDの利用は困難と見られてきたが、認証基盤連携フォーラム 実証実験ワーキンググループの2010年3月26日付の報道発表によれば、携帯電話からも問題なくOpenIDに基づく認証を行えることを実証したとのことである)。この場合は、端末を操作する携帯電話の利用者のみが同意ないし不同意を選択するため、利用者である青少年の保護者の関与はないが、OpenIDによる年齢情報の提供に先立って店頭等での同意取得(この場合の同意は、年齢情報提供システムのデータベースに利用者の情報を格納するための基本的な同意であり、第三者提供の包括的な同意ではない)を行うのであれば、個別サイトについての選択を行えない状態よりはましである。

また、本取組が青少年の福祉犯被害の防止のための機能制限のための年齢認証の確実化を目的としていることをふまえると、必要のない段階での携帯電話事業者からCGM運営者への年齢情報の第三者提供は行われるべきではない。CGMサイトに利用者として登録するものの全てが、福祉犯被害で問題となるメッセージ交換の機能を利用するわけではない。登録したまま実質的な利用のない利用者や、運営者の提供するゲームや電子コミック等のコンテンツを享受するのみにとどまる利用者に対してまで、携帯電話事業者の所有する年齢情報を必要とするような形は、行き過ぎである。ゲームや電子コミック等の内容に関する年齢認証が行われる場合でも、正確な年齢が必要だとされる社会状況ではない。

従って、すでに述べたようなCGMサイト個別の年齢情報の提供についての同意確認は、例えば利用者が最初に利用者間のメッセージ交換(送信ないし受信)を行おうとしたタイミングで行われるべきであるし、仮に、CGMサイト個別の同意確認ではなく店頭等での同意取得をもって包括的に第三者提供に同意したとする場合でも、実際の個人情報の提供は、サイト登録時ではなく利用者間のメッセージ交換利用開始時とするべきである。

また、この提言では利用者年齢認証の実装方法の詳細には言及がないが、現状の多くの携帯電話向けCGMサイトでの利用者識別方式を考慮すると、契約者固有ID をキーとして、携帯電話事業者からCGM運営者に利用者年齢情報を渡すような単純な方式を想定しているようにも思われるが、そもそも契約者固有IDによる利用者識別は、現在のCGMサイトが、携帯電話キャリアのいわゆる公式サイトに限定されずオープン化したものであることや、携帯電話端末の機能の高度化を考慮すると、そのような方式にはセキュリティやプライバシー保護上の問題があるので、行われるべきではないと考える。

4. ライフログ活用サービスにおける対象情報の個人識別性について

意見概要

位置情報は比較的短期間で個人が推定可能になる場合があることを明示すべきである。

詳細

P.41に

イ 行動ターゲティング広告等への適用 一般に、行動ターゲティング広告等においては、利用者の興味・嗜好の分析に必要な、(ア)ウェブページ上の行動履歴(閲覧履歴、購買履歴等)や(イ)位置情報と、行動履歴の取得及び広告等の配信に必要な、(ウ)クッキー技術を用いて生成された識別情報や(エ)携帯端末の識別に必要な契約者固有IDのみが必要であり、特段の事情がない限り、これらの情報自体は個人識別性を具備しない。よって、通常、行動ターゲティング広告等の事業者は個人情報取扱事業者には該当しないと考えられる。 ただし、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できる場合には、(ア)~(エ)の情報は個人情報に該当する。例えば、コンピュータ上に保存された(オ)氏名等の契約者情報のデータベースと(ア)~(エ)の情報とを容易に連係して用いることができる場合にあっては、(ア)~(エ)の情報は個人情報に該当する。 (表2は、行動ターゲティング広告等の事業者が取得し得る情報に個人識別性が認められるかをまとめたものである。)また、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できる立場で、第三者から(ア)~(エ)の情報を取得した場合(いわゆる「名寄せ」)にあっても、(ア)~(エ)の情報は個人情報に該当する。 また、(ア)ウェブページ上の行動履歴(閲覧履歴、購買履歴等)が相当程度長 期間にわたって大量に蓄積された場合等、個人が容易に推定可能になる可能性があ る。また、(イ)位置情報も、相当程度長期間にわたって時系列に蓄積された場合 等、個人が容易に推定可能になる可能性がある。

とあり、位置情報に個人識別性がないとされている。しかしながら、位置情報は、例で示されているような契約者情報との連係や長期間の蓄積がない場合でも、たとえば住宅地図とのマッピングを行うことによって、比較的短期間で個人が容易に推定可能になる可能性がある。

現在、iPhoneやAndroidといったスマートフォンでは、行動支援型のアプリケーションが急速に普及しており、それらのなかには、ソーシャルアプリケーションとして、利用者の端末とのインタラクションの時のみならず、携帯電話端末の電源が入っている限り、頻繁に位置情報等を事業者に送信するものがある。さらに、こうしたアプリケーションのうちの少なくないものは広告収益に頼る無料アプリケーションであり、アプリケーション内で表示される広告が行動ターゲティング広告である可能性もある。行動支援型のソーシャルアプリケーション内の広告が行動ターゲティング広告である場合、取得可能なデータは通常のWebブラウザ上の行動ターゲティング広告に比べてはるかに詳細なものとなると考えられる。

従って、位置情報については、他の「個人識別性を有しない」情報よりも、より容易に個人識別性を有する可能性があるむね、注意喚起すべきである。

5. DPI技術を活用した行動ターゲティング広告について

意見概要

DPI技術を活用した行動ターゲティング広告については、推奨しないむね明記すべきである。

詳細

提言案は、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告を行うこと自体については、中立的であろうとしているようにも思われるが、しかし、P.56で

従来、DPI 技術は、帯域制御のための要素技術として利用されてきたが、現在、ファイアウォールでは防ぎきれないインターネット上の脅威に対する防衛手段のための要素技術として、より洗練された行動ターゲティング広告のための要素技術として、先進的な利用が検討されており、今後の展開が期待される技術である。

とした上で、結論としてP.58で

 よって、DPI 技術を用いた行動ターゲティング広告については、各事業者は、透明性の確保に向けて運用に当たっての基準等を策定し、これを適用することが望ましい。

としていることは、ややもすると研究会がDPI技術を活用した行動ターゲティング広告を推奨・推奨しているようにもみえる。しかしながら、法的整理によっても明らかなように、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告は通信の秘密の侵害であり、正当業務行為でもなく違法性阻却が認められない。また、「ミニメール」内容確認における福祉犯被害防止といった大義名分があるわけでもない。

利用者視点を踏まえるならば、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告は、利用者にとって利益があるとは言い難いものである。DPI技術を活用した行動ターゲティング広告に同意することによって利用者がISPに支払う回線利用料が無料になる、あるいは大幅に低廉化する、といった、利用者の目に見える利益がある場合であればともかく、例えば、ISPの収益が増加することでISPの経営が安定するので利用者にも利益がある、といった水準の説明が受け入れられるものとは考えにくい。

従って、少なくともISPの既存の接続サービスにDPI技術を活用した行動ターゲティング広告を導入するような形は、推奨しないむね明記すべきである。そして、運用基準等の策定においては、DPI技術を活用した行動ターゲティング広告を前提とする新規の接続サービスを基本とするような形に限定するべきである。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-05-13 03:22:22

「『子ども・若者ビジョン(仮称)』の作成に向けた意見」を提出いたしました。

MIAUは本日、内閣府が実施していた「子ども・若者ビジョン(仮称)」の作成に向けた意見募集に対し、下記の通り意見書を提出いたしました。

意見

施策⑥「メディアリテラシーの向上及び情報モラル教育の充実」及び⑧「子ども・若者を取り巻く有害環境への対応」について、理念③の「未来を切り開く社会の能動的形成者」を踏まえ、社会活動や生活全般での積極的なICT利用を前提とした上での内容とし、有害情報対策の敷衍よりも、国民自身による主体的な情報教育の重要さを訴える必要があると考える。

理由等

当団体では、インターネット利用者の視点で子どもたちのインターネット利用のリテラシー向上に努める独自の教育教材の開発を行い、学校への授業の採用をはかっている。また、各都道府県単位で携帯電話やネットのリテラシーに対する考え方などを調査している。

これらの活動を通して、現行の行政主導のアプローチでは規制色が強く、健全なICT利活用まで含めて制限してしまうような施策になる傾向が強いと感じている。地方行政の中では、ICTがインフラとして定着しつつある実態に対して、いまだそれ以前の、ICTが生活にとって必要なものでなかった時代の感覚が強く、子どもが健全かつ積極的にICTを利用するイメージを欠いているように思われる。

一方実際に子どもの教育に携わってみた体験では、子どもの誤った判断は、情報不足や、市中の間違った情報の影響によるものであり、子どもに必要なのは正確な情報の積極的な提供である。子どものICT利活用を抑制したり、情報発信を抑制することによって問題の発生を防ごうとするアプローチは、逆効果である。加えて、今後も急速に変化するであろう情報環境を踏まえれば、ともすれば画一的な内容に陥りがちな現行の情報モラル教育を、柔軟性と多様性を養う内容に変えていく必要がある。

また、子どもの情報リテラシー教育の機会にもっとも恵まれ、かつその責任を負うのは保護者である。しかし現実には、殆どの保護者がこのような教育に無関心であり、情報リテラシーに関しては放置状態にある。行政が行うべきは、子どもへの教育のみならず、保護者を中心とした国民全体に対して、主体的な情報リテラシー教育の必要性を説くことである。

なお、「有害環境」としてのネットの問題については、子ども・若者育成支援に関するワーキングチーム会合第6回の有識者発表や意見交換にもあるように、広範な規制は意味がなく、具体的に子どもに対して害をなした大人を適切に摘発していくべきと考える。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-04-20 16:13:22

ニコニコ動画公式チャンネルを開設し、第1回公式生放送を行ないます

このたびMIAUでは、株式会社ドワンゴ様のご厚意により、ニコニコ生放送内にて公式生放送番組「MIAU Presents ネットの羅針盤」と、MIAU公式チャンネル「MIAUチャンネル」を持たせていただくことになりましたので、ご報告いたします。MIAUチャンネルは3月26日よりオープンいたしました

また公式生放送第一回といたしまして、3月27日19時より、『大激論! 都条例改正案に賛成? 反対?』を放送いたします。

昨今、東京都青少年健全育成条例改正案を巡り、青少年の保護と表現の自由の狭間で、様々な議論を呼んでおります。この番組では、当団体代表理事の津田大介を司会に、条例改正案の是非を巡り、熱い議論を交わします。

番組URL

http://live.nicovideo.jp/gate/lv13294470

出演者(予定)

  • 津田大介(司会、メディアジャーナリスト、MIAU代表理事)
  • 東浩紀(批評家、東京工業大学世界文明センター特任教授)
  • 藤本由香里(評論家、明治大学国際日本学部准教授)
  • 白田秀彰(法学者、法政大学社会学部准教授、情報法・知的財産権法)
  • おがわさとし(漫画家、京都精華大学講師)
  • 田中秀臣(経済学者、上武大学ビジネス情報学部教授)
    (敬称略)
著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-03-26 22:26:45

知的財産戦略本部「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するWG」に意見書を提出しました

MIAUは、3月15日の知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」第4回会合に対して意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するWG」への意見書

2010年3月15日

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)
代表理事 小寺信良
代表理事 津田大介
担当 八田真行

総論

1.現時点でのACTA草案を一刻も早く公開すべき。

一連の議事録を見ても明らかなように、今回のWGでの議論は、現在策定中の模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の存在を前提に進められている。ACTAは国際条約であり、国内法の整備においても強制力を持つことになろう。しかし、ACTAは現在に至るまで一度も草案が開示されたことはなく、議論そのものについても完全な秘密主義が貫かれ、「リーク」という不自然な形でしか情報が外部に出てこないなど、策定のプロセスに重大な問題があり、国際的にも多くの批判を浴びている(※1)。すでに土肥座長も指摘しているように(※2) 、そもそも具体的な法文案がないものを前提に議論を進めるのは無理があると言わざるを得ない。議論する上での大前提として、現時点でのACTA草案を一刻も早く公開することを求める。また、ACTAに関する議論においては拙速な合意に至ることのないよう、強く要望するものである。

※1  たとえばhttp://www.eff.org/issues/acta

※2  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/wg/internet/dai1/gijiroku.html

2.侵害コンテンツによる「被害」は過大に評価されているのではないか。

侵害コンテンツによって権利者が被ったとされる被害額を算定する際、現在は「ダウンロード数×コンテンツの平均小売単価」で計算しているように思われる。しかし、有体物の万引き等と異なり、情報財としてのコンテンツはコピーによってオリジナルの価値が損なわれることはなく、また仮に侵害コンテンツが強力な規制によって完全に消滅したとしても、現在のダウンロード数と同等の需要が生じる(=購入するユーザが増える)とは限らない。むしろ、規制強化に伴う利便性の低下から、正規ユーザの数が減少する可能性すらある。よって、この種の「被害」額は、現実に即した推計よりもはるかに過大に算定されていると言わざるを得ない。 そもそも、著作権や規制の強化が、コンテンツの売上増につながることを支持する研究はほとんど存在しない。逆に、WinnyのようなP2Pソフトウェアの存在が音楽ソフトの売上に全く影響しないこと、あるいはむしろプラスの影響を与えているとする研究は数多く存在する(※3)。コンテンツが本質的に「経験財」であり、享受してはじめて価値が分かるものであることを鑑みれば、この結果は何ら奇異ではない。このような見地からすれば、「被害」額の過大な見積もりに立脚してむやみに規制を強化することは、規制の実施に要するコストを急増させるのみならず、ユーザの「コンテンツ離れ」を助長し、今後のコンテンツ市場やその創造基盤に回復不能なダメージを与えるだけになるのではなかろうか。

※3 田中辰雄・慶応大准教授の研究など。

3.ユーザからの意見具申の機会を設けてほしい。

侵害コンテンツ対策は、法律的、経済的、そして技術的な要素が複雑に絡み合った問題であり、できるだけ様々なバックグラウンドを持った人々によって議論されるべきである。中でもコンテンツの主たる消費者である一般的なユーザは、こうした対策によって最も影響を受ける立場であるにも関わらず、現状では発言の機会を十分に与えられているとは言えない。よって、より一層の情報公開と、WGへのユーザ代表の参加、直接的な議論参加の機会を求めたい。これは、ユーザのニーズを探るという点でも、消費者の啓発という意味でも有益だと考えられる。

プロバイダの責任の在り方について

1.ノーティス・アンド・テイクダウンではなく、あくまでノーティス・アンド・ノーティスを基本とすべき。

プロバイダによる侵害対策措置として、現在WGでは米DMCA(あるいはACTA)に則ったノーティス・アンド・テイクダウン・システムの導入を検討しているようである。しかしノーティス・アンド・テイクダウンは、実際の侵害の有無を確認することなくプロバイダがコンテンツを削除することを強制するという点で、表現の自由やプライバシーといったユーザの権利を深刻に損なう可能性が高く、目的に比して手段としての適切性を著しく欠くものと考えられる。

これに対し、権利者から侵害の可能性について通知された場合、侵害者と目されたユーザにプロバイダが通知を転送すること、そしてユーザごとに通知転送の事実と、場合によっては一定期間の(通信の秘密に抵触しない範囲での)アクティヴィティを記録しておくことを義務づける「ノーティス・アンド・ノーティス」システムでは、悪質な侵害コンテンツの排除とユーザの自由の両方を確保することができ、より適切と言える。すでにこのシステムが導入されたカナダでは、通知されたうち71%のユーザが侵害コンテンツを自主的に削除するなど、大きな成果を挙げている(※4)。侵害者の大半が、そもそも自分が侵害していることに気づいていないか軽視している「カジュアルな」侵害者であることを考えれば、この数字は当然のものと言える。日本においても、第2回議事録で指摘されているように、日本レコード協会によるメールでの警告が有効に機能したという事例がある(※5)。もちろん、悪意ある常習的な侵害者に対しては、権利者は情報開示請求の後に記録を根拠とした強力な対応が可能である。コストの面でも、侵害通知とその転送(および記録)は大幅な自動化が可能であり、少なくともノーティス・アンド・テイクダウンに要するコストを著しく上回るものにはなり得ない。

このように、ノーティス・アンド・ノーティス・システムは、権利者の権利、ユーザの権利、そして仲介者たるプロバイダの責任制限という点で、最もバランスがとれた優れた措置と考えられる。

※4  http://arstechnica.com/tech-policy/news/2010/02/world-get-ready-for-the-dmca-actas-internet-chapter-leaks.ars

※5  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents_kyouka/wg/internet/dai2/gijiroku.html

2.「スリーストライク法」の導入には反対。

一部報道によると、ACTAには、複数回警告を受けたユーザのネット接続を強制的に切断するという、いわゆる「スリーストライク法」に関する条項が盛り込まれる可能性があると言う。WGにおいても、すでにスリーストライク法に関する検討が行われているようである。スリーストライク法は推定無罪の原則に反し、国民の通信の自由や表現の自由を不当かつ容易に侵害することを可能とするものであり、インターネットを介した情報アクセスの重要性が今後ますます増すであろうことを考えても、容認できるものではない。 加えて、第2回議事録においてすでに森田委員が指摘されているように、WGで現在想定されているのはフランスの現行HADOPI法とも違い、一切の司法手続を経ることなくプロバイダが任意に侵害者の利用を強制的に遮断する、というもののようである。そもそもHADOPI法に関しても多くの批判がある(というより、フランス以外に賛同する国は存在せず、当のフランスにおいても議論が続いている)現在、このようなものの導入には全く賛同することができない。

アクセスコントロール回避規制の在り方について

1.アクセスコントロールでもコピーコントロールでもなく、「アップロードコントロール」を重視すべき。

問題とされるのは侵害コンテンツの広汎な流通であって、ユーザによるアクセス行為でもなければ、ユーザの手元におけるコピー行為でもないはずである。アクセスコントロールは、どれだけ技術的に洗練されたものであっても必ずユーザの利便性を大幅に損ない、正当で多様な利用をも困難とし、かつ国民の知る権利を阻害する。しかも、結局は侵害コンテンツの流通を止められないという意味で、権利者にとってさえ全く実効性がないものと言わざるを得ない。流出した後の対策を練るより、あくまで「蛇口を閉じる」ことに専心すべきではないか。 その観点からすれば、日本の法律は、すでに権利者に対し、アップロードコントロールに関して強力な「武器」を多く与えている。アクセスコントロール回避機器の頒布に関しては不正競争防止法、侵害コンテンツのアップロードに関しては著作権法における公衆送信化権で十分対応できるはずである。むしろ、権利者に対する日本の法的保護は国際的に見てもかなり手厚い水準であって、これ以上の規制強化はステークホルダーの誰にとっても全く資するものではない。権利者には法制度的な庇護ではなく、あくまで適切な権利行使を以て違法アップロードと対峙することを求めたい。

以上

注記

上の文書は、首相官邸サイトに掲載された知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」第4回会合の配付資料2と同じものです。

当初3月18日にこのエントリーを公開する予定でしたが、手違いにより表示されておりませんでした。その後も新たなエントリーを上げている関係上、公開日時を当初の予定のまま公開させていただきます。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-06-09 02:01:05

「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案についての意見書

現在都議会で審議中の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案(以下、「条例案」という。)について、以下、当協会の意見を述べます。

1. 既存の情報リテラシー教育の取組に逆行する

青少年インターネット環境整備法では、青少年有害情報の対象については、あくまでも民間に委ねるものとしています。しかしながら条例案は、地方行政が情報の選別に介入するものであって、青少年インターネット環境整備法の精神を踏みにじるものです。

条例案では、携帯電話における青少年のフィルタリングサービスの解除にあたっては、保護者に東京都規則の「正当な理由」に限定された解除理由の書面での提出を求めています。当協会では、保護者の選択の自由を認めない原則義務化に反対します。

保護者が書面に書くことができるほぼ唯一の「正当な理由」は、条例案にあるように携帯電話事業者の提供する履歴閲覧サービスを利用した利用状況の監督を行うことですが、閲覧履歴サービスを提供する事業者は一部に限られています。また、現行の履歴閲覧サービスは、利用者自身の確認を目的として利用者自身にパスワードなどを発行するものです。情報リテラシー教育上、計算機やサービス利用に必要なパスワードなどの認証情報は、自身で管理し、たとえ保護者などの監督者に対してといえども他人には教えないことはごく基本的な内容です。条例案は、これに反する行為を推奨するものです。

青少年のインターネット利用に関する啓発の指針内容は、インターネットの適切な利用によるメリットにも十分に配慮し、過剰に抑制的なものとならないよう、 バランスが取れたものにする必要があります。

2.青少年のインターネット利用への曖昧・不明瞭な権限がある

条例案では、「青少年がインターネットを利用して自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為をし、又は犯罪若しくは被害を誘発した」場合、行政機関が知事へ通報できるとするほか、その場合に知事が保護者に対し指導または助言、さらに説明や資料提出を求めたり、調査を行ったりすることができるとしています。

現行の青少年保護条例での説明や資料提出の要求、立入調査に関する権限の付与では、権限付与の対象を「知事が指定した知事部局の職員」や「知事が指定した知事部局の職員及び警視総監が指定した警察官」と限定し、調査の対象となる場所を条文に定め、調査等の時間帯と限定し、さらに職員や警察官に、規定の証票の携帯や提示を求め、調査の権限を「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と限定しています。しかしながら、条例案では、権限を付与する対象を「知事」として実際に指導助言や調査などを行う公務員の範囲を限定していませんし、調査の範囲も限定していません。

条例案は、たとえば警察に、該当する行為を行った青少年の存在を知った場合に行動を起こす権限を与えるものになりえます。「違法」には、犯罪として処罰されることのない、違法着うたダウンロードなどの罰則のない著作権侵害、犯罪とはいえない誹謗中傷などもふくまれるでしょうし、「有害」となるとさらに曖昧です。青少年がネット上で自分の恋人の存在についてつぶやくと、「青少年を性的対象として扱う風潮に加担する有害行為」とみなされてしまうかもしれません。「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ」も曖昧であり、「犯罪若しくは被害を誘発した」も、犯罪や被害との因果関係の証明まで行われた上でのものとなるとは読めず、曖昧なものです。

問題とされる行為の主体が青少年であることから、警視庁少年警察活動規程の対象とする範囲をインターネット上の青少年の活動へと拡大するものではないかとも思われますが、少年警察活動規則などで定める「不良行為少年」とは異なり、前例がない規定のためにその対象範囲が抽象的で曖昧だと当協会では考えます。とくに問題なのは、調査対象にインターネット上のサイトを運営する事業者なども含まれる可能性があるにもかかわらず、明示されていないことです。また、調査の内容によっては、当該青少年や、当該青少年と交流する機会のあった他の利用者の通信の秘密やプライバシー等が侵害される可能性もあると思われます。このまま、具体的な施行規則案や規程案の提示もなく都に広範な権限を付与することに対して、当協会では反対します。

3. ブロッキングは表現の自由の侵害である

当協会は、利用者の選択の余地なくインターネット上の対象コンテンツの閲覧を阻害するブロッキングを都が「児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた」施策として推進することについて反対です。ブロッキングには、誤判定や、対象コンテンツ以外のオーバーブロッキングが不可避であり、憲法の表現の自由に含まれる情報へのアクセスの自由が侵害されます。また、ブロッキングの実現にあたっては、対象コンテンツに対するもの以外を含んだ全てのウェブ閲覧を監視する必要があり、憲法や電気通信事業法にある通信の秘密が侵害されます。とくに「青少年性的視覚描写物のまん延抑止」におけるブロッキングについては、違法ではないコンテンツに対する措置であり、利用者が青少年であるか否かを問わずに閲覧を阻害するものであることから、対象を現行条例の「不健全な図書類」「表示図書類」に相当する内容のものに限ると狭めてもなお表現の自由の侵害は重大であると言わざるをえません。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2010-03-13 20:06:07
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