パブリックコメントへの意見提出方法

多くの方にウェブサイトや、設立発表会の際の映像を見ていただき、 誠にありがとうございます。 今回の報告書は重要だと考えている方がとても多いようでして、 真紀奈たちのところにも、パブリックコメントに意見を提出するに はどうすれば良いの?という質問がたくさん来ております。そこで 簡単に解説させていただきます。

さて、パブリックコメントには下記の6項目がそろっている 必要があります。(意見募集要項より)

  1. 個人/団体の別
  2. 氏名/団体名(団体の場合は、代表者の氏名も御記入下さい。)
  3. 住所
  4. 連絡先(電話番号、電子メールアドレスなど)
  5. 該当ページおよび項目名
  6. 御意見

ちなみに、基本的に意見書を受け付ける官庁では、団体(法人) 名義の方が重んじられるようです。企業等が複数加盟している業界 団体等からの意見であればさらに影響は大きいと言われています。 それだけ利害関係がある方からの意見であるととられるというこ とだと思われます。自ら団体を主催しているという方は、 その組織として出すということに、大きな意味があります。
  ただし、企業・団体で出す場合は、必ず企業・団体内での合意を 得てくださいね。

次に、住所とか連絡先ですけど、基本的にほとんど使われませんし、 権利者団体に明かされるなんてこともありません。MIAUのメンバー には今までに個人で意見書を送っている人が何人もいますが、 細かい内容についての質問が来たことはありません。
  今回は電話番号必須と書いてある訳じゃないですので、住所と電子 メールだけでOKでしょう。

そして、肝心の意見です。報告書に照らし合わせて、
  「5.何ページの『○○○』という項目」
  「6.私は『反対/賛成』である、理由は『×××』である」 

というように、最低限書くことが求められています。
ここでたいていの方がつまずきます。あの分厚い報告書を読んで、該当 箇所を探すのだけでも大変ですから。(報告書本体は こちら

そこで、MIAUでは、この点について意見書の素材を公開する ことにいたしました。
  問題になりそうな、「何ページの○○という項目」ということをとりあげて、 それぞれについて、複数の理由を挙げているリストです。
  パブリックコメントを出す際に、上記にあげているリストから、みなさまが この理由を挙げたいと思ったものについて、もってきて、自分なりの文章にして、 出していただければと思います。

  どのようなフォーマットに最終的になるかについては、MIAUの ドラフト案が参考になると思います
  このような形にして出していただければ、まず確実に、ちゃんと意見書として 受け取ってもらえるはずです。なお、理由を長々と書く必要性はありませんので、 MIAUであげている理由のうち、1項目について、2,3とりあげれば十分通じると 思います。

最後に、今回の意見書の提出先は、下記のメールアドレスになります。 タイトルを「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」 とするのを忘れないで下さい。

E-mail: keiyaku@bunka.go.jp
  タイトル:「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見

郵送、Faxの場合は、下記になります。

     
  • 住所:〒100-8959 東京都千代田区丸の内2-5-1
  •     文化庁長官官房著作権課 宛  
  • FAX番号:03-6734-3813

以上のようになります。

もしわからないことなどありましたら、MIAUまでご連絡をいただければ と思います。

また、提出終了後、提出したことを私たちに教えていただけると、 どのくらい意見が出ているのかがわかりますので、大変助かります。 その際に提出した意見もいただけると、MIAUとして出すべき意見に 含められないか検討させていただきます。

11/2追記: MIAU開発プロジェクトで皆様が提出された意見の投稿を受け付けております。

みなさまのご意見が、1通でも多く、委員会に対して届けられることを 祈っています。私たちの意見が、ちゃんと政策を動かすことができる んだ、ということがわかる機会になれば、と思っております。

著作者 : 真紀奈
最終更新日 : 2007-11-02 18:51:55

ダウンロード違法化に反対するパブコメ素材

ダウンロード違法化に反対される方向けのパブコメ用素材です。
全部でも、一部のブロックでも、コピペしていただいて構いません。
これはぶつ切り状態の素材なので、文章を自分らしくつなげたり、自分の意見や具体例を入れたりしてくれると、さらに良いと思います。あくまで素材集なので、内容は個々人で適宜修正・変更してください。

なお、この素材は、パブリックコメント・ジェネレータ提供までの「中継ぎ」という位置づけです。
ダウンロード違法化以外の項目について、そしてMIAUの意見とは異なる意見についての雛型(ジェネレータ)は、後日公開となります。そちらを期待していらっしゃる方は、今しばらくお待ちください。

また、パブリックコメントの書き方や提出の仕方については「パブリックコメントへの意見提出方法」という記事をご参照ください。

報告書項目名 : 「第30条の適用範囲からの除外」(104ページ)

YouTubeやニコニコ動画は、ストリーミングで提供。
今回は、違法化の対象外であるとされている。
しかしストリーミングとダウンロードの区別は曖昧。
そしてキャッシュという形でダウンロードはしている。
専門家の間でも定義に争いがあり、裁判所が違法と判断するかもしれない。
だからダウンロードの違法化に反対。
ストリーミングとダウンロードは技術上、大差がない。
法律的に違うものとして扱うと、技術的な選択の幅を狭めてしまう。
そうすると、Webサービスの可能性を狭める。
日本のIT開発が衰退しかねない。
だからダウンロードの違法化に反対。
YouTubeは、原理上、著作権侵害ファイルも公開されている。
Winnyの開発者は、公衆送信権違反の幇助として訴えられた。
YouTubeのビデオダウンローダーを開発する行為が、民事上の共同不法行為となるかもしれない。
もし刑事罰が導入されたら、著作権侵害罪の共犯とも見なされる可能性もある。
新しい技術開発の萎縮を招いてしまう。
だからダウンロードの違法化に反対。
YouTubeのキャッシュが複製かどうか専門家の間でも争いがある。
ストリーミングは今回の議論の対象ではないとする立場は判例と矛盾するという指摘もある。
一般ネットユーザーの法的地位は不安定なものになってしまう。
合法的なダウンロード行為ですら萎縮してしまう。
だからダウンロードの違法化に反対。
いま、ニコニコ動画など、ユーザー生成コンテンツ(UGC)が伸びている。
開発者も利用者も萎縮してしまえば、UGCの成長を破壊してしまう。
だからダウンロードの違法化に反対。
省庁がどう思っていようと、裁判官の判断がどうなるか不確定。
例えば映画の保護期間延長。
文化庁が言っていたことを裁判所がひっくり返した。
法文にストリーミングは対象外と明記されない限り、違法と判断される可能性がある。
だからダウンロードの違法化に反対。
YouTubeやニコニコ動画は、キャッシュでダウンロードしている。
キャッシュの入ったファイルをハードディスクの別の場所に移動すれば、ダウンロードと判断されるかもしれない。
同じサービスでも利用態様によって、違法と合法がわかれてしまう。
だからダウンロードの違法化に反対。

報告書項目名 : 「第30条の適用範囲から除外する場合の条件」(105ページ)

違法コンテンツなのか合法コンテンツなのか、見た目で分からないことが多い。
なぜなら、日本の著作権法は無方式主義で、権利の表示をしなくても良いから。
つまり、適法公開かどうかの識別が困難。
だから条件付きでも、現状だと反対。
ダウンロードしたファイルの内容は入手するまでは分からない。
入手時点で違法となってしまうかもしれない。
「違法コンテンツかもしれない」と思いながらダウンロードすることは、「違法かもしれないと、情を知りつつ、ダウンロードした」と判断される。
故意があるということで、訴えられたときにユーザーに不利。
法を守ろうとするユーザーにとって、リスクになる。
だから条件付きでも、現状だと反対。
権利者の許諾をもらって公開しているかわからない。
YouTubeというサイト1つをとっても、そこに公開されている動画が、合法的に公開されているかどうかは、自明ではない。
合法的なダウンロード行為が幅広く萎縮されることになる。
だから条件付きでも、現状だと反対。
技術に精通しているわけでもないため不合理な判断をしかねない。
ユーザーの感覚とは異なる判例もある。
実質的に権利侵害性の無いWebサービスでも違法とされることもある。
これでは大丈夫と思っていても、どうなるかわからない。
たとえばMYUTAや録画ネットといったサービスサイトは、裁判所によって著作権侵害を認定された。
一般ユーザーにとっては、購入済みのコンテンツをムーブしているだけという感覚。
既に対価を支払って入手している著作物の複製物を、自分の必要とする利用形態に合わせて複製するだけ。
これが違法サイトでありそこからのダウンロードが違法であるとして権利侵害を認定された。
だから条件付きでも、現状だと反対。
合法か違法か、見ただけではわからない。
本当は合法なコンテンツをダウンロードした者に対して、第三者が架空請求を行うかもしれない。
出鱈目に10000人に請求してほんの数人でも引っかかる人がいるかもしれない。
だから条件付きでも、現状だと反対。
インターネットに国境はない。
プロバイダ免責や権利制限など、法律は国によって異なっている。
コンテンツがどの国の著作権法に違反していたらアウトとなるのか、ユーザーは簡単に判断できない。
米国では合法だけれど、日本の基準に照らして違法と判断されるかもしれない。
そのようなことについて議論がされていない。
だから条件付きでも、現状だと反対。
「合法的な」ダウンロードの際に、受信者情報をどのように入手するのか?
ダウンロード者のトラッキングについて法制化をするのか?
それでは通信の秘密が侵害されてしまう。
そのことについて、検討されていない。
だから条件付きでも、現状だと反対。
調査や研究目的で「違法サイト」にアクセスする行為はどうなるのか。
違法と評価されかねない。
権利者の意向に場合によっては反するような、実態の調査研究が困難になるかもしれない。
偏りのない学問の良さが損なわれる。
そのことについて、検討されていない。
だから条件付きでも、現状だと反対。
報道や政治系のコンテンツをダウンロードする行為はどうなるのか。
報道については第四十一条に権利制限があるが、限定的。
サイト等の取材過程においてダウンロードする著作物がこの範囲に限定されるとは言えない。
ダウンロード違法化によるリスクが生じる。
そうなると、権利者の意向に場合によっては反するような、実態の報道が困難になる。
自由な報道による民主主義の実現にマイナスになる。
だから条件付きでも、現状だと反対。



なお、この素材について、MIAUは著作権を放棄します。Creative Commons の by-nd ライセンスは適用されず、パブリックドメイン扱いとします。
つまり、出所を明示しなくても、改変しても良いということです。

【10/29追記】
上記素材内に、事実と異なる記述がありました。
「Winnyの開発者は、違法ダウンロードの幇助として訴えられた。」
という記述は、公衆送信権違反の幇助の誤りです。
修正とともに、お詫びいたします。
また、ご指摘くださった方に御礼申し上げます。ありがとうございました。

著作者 : Fumiko Kudoh
最終更新日 : 2007-10-29 11:39:00

パブリックコメント案

  1. 個人/団体の別:団体
  2. 団体名:インターネット先進ユーザーの会 (MIAU) (代表者: xxx)
  3. 住所:(略)
  4. 連絡先:info@miau.jp
  5. 該当ページおよび項目名:以下小見出しに表記。全8件
  6. 意見:5に準ずる

私たちは、著作権法第30条を変更して、違法にアップロードされた著作物のダウンロードを、その適用対象を限定するという、本報告書にまとめられている案(以下「ダウンロード違法化」とも記します)に反対します。

違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードする行為を違法化すれば、著作権侵害による被害が確かに小さくなるでしょう。しかし私たちは、本報告書の示すような違法化には、いくつかの問題があるのではないかと懸念しています。

私たちが意見を述べるのは、以下の5件です。

  1. 104ページの「第30条の適用範囲からの除外」の項目
  2. 105ページの「第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目
  3. 59ページの「ファイル交換ソフトを利用した私的録音録画の現状について」 の項目
  4. 71ページの「違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状」の項目
  5. 104ページの「検討結果」の項目

以下、各項目毎に意見を述べさせていただきます。

■104ページの「第30条の適用範囲からの除外」の項目

※この項目について私たちは反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。

○ストリーミングとダウンロードの区別は曖昧になっている

YouTubeやニコニコ動画という特定のサービスは、動画がストリーミングで提供され、ダウンロードするものではありませんので、今回の報告書では、違法化の対象外であるとされています。しかし、ダウンロード形式で動画を共有するサイトにとっては今回の「違法化」は問題になりえます。ストリーミング技術を実装するRealPlayerには、その新しいバージョンで、ダウンロード再生を可能にする機能が追加されています。 このように、昨今のブロードバンド インターネット環境において、ストリーミングとダウンロードは技術的に根本的な違いがあるわけではなく、両者を法律的に大きく意味の異なるものとして扱うと、むしろ、Webサービスを支える技術的な選択の幅を、不必要に狭めることにもなります。

さらに言うならば、YouTubeやニコニコ動画も、キャッシュという形でダウンロードはされているわけで、そのようなファイルをハードディスクの別の場所に移動すれば、立派なダウンロードと見られてしまいかねません。同じサービスでも利用態様によって、異なる判断になる可能性があるわけです。

また、YouTubeが相当数の著作権侵害ファイルを公開しているということになると、YouTubeのビデオダウンローダーを開発する行為が、Winnyの開発と同様、違法ダウンロードの幇助として民事上の共同不法行為者とされてしまうおそれもあります。今回は含まれていませんが、刑事罰が導入されたら、Winny事件のように、著作権侵害罪の共犯とも見なされる可能性もあるでしょう。

そもそも、YouTubeのような疑似ストリーミングでダウンロードされたキャッシュが複製扱いされるか否かについては、専門家の間でも争いがあり、ストリーミングは今回の議論の対象ではないとする立場は判例と矛盾するという指摘もある以上、一般ネットユーザーの法的地位は甚だ不安定なものとなり、やはり合法的なダウンロード行為が萎縮させられることになります。

先にも取り上げた裁判官の判断の問題もあります。映画の保護期間延長に関して、文化庁が言っていたことを、裁判所がひっくり返したということがありました。そのような事例を考えると、法文にストリーミングは対象外と明記されない限り、やはりストリーミングも違法と判断される可能性があるでしょう。

これでは、せっかくユーザー生成コンテンツ(UGC)が伸びてこようとしている状況を、破壊してしまうことになりかねません。

○国際的な法規制の不整合

また、国際的な法制度の整合性を考慮しなければなりません。その意味では、インターネットというものはそもそもグローバルなものであり、さらに権利制限というものは国によって異なっているものであるため、コンテンツがどの国の著作権法に違反していたらアウトとなるのか、ユーザーには容易に判断することができません。プロバイダ免責の違いも問題となります。たとえば、米国サイトがDMCA免責を満たしており米国では合法であれば良いのか、そのようなコンテンツが日本の基準に照らして違法と判断されたりしないのか、といったことがまずもって議論されていません。

○通信の秘密の侵害に繋がる

ダウンロード違法化に実効性をもたせようとすると、「合法的な」ダウンロードの際に、受信者情報をどのように確実に入手するか、という問題が生じてくることでしょう。その結果として、ダウンロード者のトラッキングについて法制化(例えば、プロバイダ責任制限法改正による受信者開示制度の創設)を求める動きにつながる可能性がありますが、それでは通信の秘密が侵害されることにもなりかねません。

○学問・研究・報道が制限される

日本にはフェアユース規定が存在せず、列挙されている権利制限も多くないた め、調査研究目的で「違法サイト」にアクセスする行為すらも、違法と評価さ れる可能性があります。ここでで問題にしているのは、商業的コンテンツ調査 研究の入手手段として正規手段によらず違法サイト上の侵害コンテンツを用い るような場合ではなく、権利侵害を伴う二次著作物の調査研究や、あるいは 「違法サイト」それ自体を調査研究の対象としている場合です。

そもそも、このような目的でアクセスするさいに付随する複製は従来から私的 使用のための複製ではないと評価されうる領域です。しかし、従来はダウンロー ドによる私的複製が広く権利制限されてきたことから大きな問題となっていま せんでした。これが、ダウンロード違法化に伴いリーガルリスクが現実のもの となります。

そうなると、権利者の意向に場合によっては反するような、実態の調査研究が 困難になり、ひいては不偏不党であるべき学問の発展が損なわれることにもな ります。

また、報道についても同様の問題が起こります。報道については第四十一条に おける権利制限がありますが、第四十一条の権利制限は「時事の事件を報道す る場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しく は聞かれる著作物」を複製する場合に限定されており、サイト等の取材過程に おいてダウンロードする著作物がこの範囲に限定されうるとは必ずしもいえな いと考えられ、やはり、ダウンロード違法化によるリーガルリスクが生じます。

そうなると、権利者の意向に場合によっては反するような、実態の報道が困難 になり、自由な報道による民主主義の実現にマイナスになります。

○送信可能化権で十分であるはず

後に詳しく述べる通り、ダウンロード違法化は一般ユーザーに無用な負担をかけるものです。しかし、一般ユーザーに売り手が負担をかけるのは、本当に最後の手段であり、そのためには他の方法による対策では不可能である、という、疑いの余地のない綿密な議論が示されなければならない、と私たちは考えます。

ダウンロード違法化の議論には、その前提として、違法にアップロードされたコンテンツというものが存在しているはずですが、日本の著作権法には、まさにこのような問題に対処するために創設された送信可能化権というものがあります。著作者の利益を大きく損なっていると言えるのは、個々のダウンロード行為ではなくアップロード行為であり、それは既にこの送信可能化権によって規制されているはずです。権利者はこれまで違法アップローダーに対して十分な法的対策を取ってきたと言えるでしょうか。私たちは懐疑的に考えています。

著作権法に求められているのは、一部の権利者が権利侵害を便利に主張できることよりも、一般ネットユーザーが著作物を変なかたちで妨げられることなく便利に利用できることであると、私たちは考えます。

■105ページの「第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目

※この項目について私たちは反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。

○適法公開の識別が困難である

今回の「ダウンロード違法化」が審議会に持ち込まれた経緯としては、「YouTube」や「ニコニコ動画」といった動画投稿サイト、いわゆる「着うた」の「違法」公開サイトなどのWebサービスサイトに、著作権(送信可能化権)を侵害するかたちで著作物が公開される場合があるため、と私たちは理解しています。

しかし、わが国の著作権法は無方式主義であり、必ずしも外観上権利表示を伴うわけではないのですから、外形上は権利侵害コンテンツなのか合法的な公開コンテンツなのか、分からない場合があります。また、ダウンロードしたファイルの内容は結局のところ入手するまでは分かりませんが、入手時点で違法となってしまうおそれがあります。 この状況において、「権利侵害コンテンツでありうるという情を知りつつ、そうであるとしてもそれを容認してダウンロードする」行為には、違法性の意識の可能性があるとして故意があると判断されうることになるでしょう。これは合法的に振る舞おうとする一般ユーザーにとって、合法的なダウンロード行為を幅広く萎縮するに足るリーガル・リスクになってしまいます。

また、権利者の許諾を伴う公開であるかどうかという問題も、ほぼ同様に考えられます。YouTubeというサイト1つをとっても、そこに公開されている動画が、合法的に公開されているかどうかは、ストリーミングで閲覧したりVideoDownloaderなどを使用してダウンロードしたりする一般ネットユーザーにとっては、自明ではありません。「違法アップロードであるかもしれないという情を知りつつ、そうであるとしてもそれを容認してダウンロードする」行為には、故意があると判断されうることになり、やはり合法的なダウンロード行為が幅広く萎縮されることにも繋がります。

○違法性判断に疑問のある裁判例が少なくない

また、私たちは、インターネットの仕組みや実際の利用態様を必ずしも適切に把握してしない裁判所・裁判官の判決等も少なくないと言わざるを得ません。実質的に権利侵害性の無いWebサービスに対しても、実態にそぐわない拡張的な解釈に基づいて権利侵害を認める判決が見受けられます。 たとえばMYUTAや録画ネットといったサービスサイトは、裁判所によって著作権侵害を認定されましたが、一般ユーザーにとっては、既に対価を支払って入手している著作物の複製物を、自分の必要とする利用形態に合わせて複製するだけのものであり、これが違法サイトでありそこからのダウンロードが違法であるとして権利侵害を認定されるというのは、著しく納得できないものであろうと思います。

○架空請求の踏み台にされるおそれがある

さらにおそろしいのは、ダウンロード違法化は、さまざまな手法で架空請求に用いられる可能性が高いという事です。たとえば、著作権者本人が同意して公開しているがその旨明示していないため、客観的には著作権侵害であるようなコンテンツをダウンロードした者に対して、第三者が(パケットスニッフィング等によって同者がダウンロードした事実を把握したうえで)違法ダウンロードであり対価を請求する、といった例が考えられます。また、そこまでしなくても、通常の振り込め詐欺同様、10000人に請求してほんの数人でも引っかかる人がいれば、それだけでも重大な問題です。

○「合法マーク」は不適切な対応である

「合法ダウンロードマーク」を付ければ識別できるという主張もあります。これは、同マークを売り込もうとする生野委員率いる日本レコード協会にとっては都合の良い議論であるものの、以下に示すとおり、数多くの問題点があります。

消費者およびコンテンツ提供者にとっては、ダウンロード時に本来不必要である確認を強いられたり、費用をかけて対応する(さらに同マークが同協会から「有償にて」提供されるものではないと信じたいところです)といったことが要求されます。このような、著作権法の制度趣旨にも合致しない、本来的に不必要な負担を強制できる正当な理由は、何もないはずです。

この合法マークというものが、コンテンツではなくサイトごとに設定されるということを前提としているのであれば、そもそも原理的にマークが設定できないサービスが多々存在します。YouTube、Wikipedia、各種ブログサービスといった、一般ユーザー投稿型のサービスは、この「合法マーク」市場から閉め出されることになります。これは事実上の排他的な取引慣行であり、独占禁止法やWTO各種条約に牴触するおそれがあります。 そもそも、国際的な法の整合性という観点で、この「合法マーク」は海外サイトには当然適用されるはずもなく、実質的に意味のないマークになるか、WTO各種条約に牴触するかのどちらかになることでしょう。

「合法マーク」は、法制化されないのであれば、「勝手合法マーク」を規制する事が許されませんから、いかなる違法サイトも「勝手合法マーク」を設置する事により、実質的に利用者が違法ダウンロードの故意が認められないことになり、意味のない法改正ということになります。

○むしろ虚偽の著作権表示を違法化すべき

また、合法アップロードを明確化させることで、今回の違法化に対する上記の懸念を払い去ることができるとは思えません。著作権を主張する人や団体の中には、たとえば著作権が切れているはずの鳥獣戯画のような古典作品について、保有してもいない著作権を主張することで、私たち一般ネットユーザーの自由な利用を萎縮させようとする人たちも存在しています。

合法ダウンロードマークを明示するよりもむしろ、著作権を主張するコンテンツの提供者に対して、合法な利用行為に関する必要十分な提示を義務付け、合法的であるはずの利用が禁止されているかのような権利表示を違法化するという法改正こそ必要ではないかと考えます(実務的な観点から、改正法運用当初は、そのような「違法行為」について、刑事罰までは定めなくても良いと考えます)。

■59ページの「ファイル交換ソフトを利用した私的録音録画の現状について」の項目(疑問)

※この項目について私たちは疑問をおぼえます。理由は下記の通りです。

○不透明な「ダウンロードによる被害」

違法アップロードによる被害とされるものが、本当に実態を反映していると言えるのか、疑問を持たざるを得ない部分があります。違法サイトによる被害額とはどんなものであるか、十分な根拠をもって示し、それによって初めて議論の俎上に乗せることができるものであると、私たちは考えます。

統計データも、どちらかと言えば印象操作のために作られているものがあるように思います。たとえば、ファイル交換ソフトを「過去に利用していた」ユーザーの数は、「若い頃にロック音楽を好んで聴いていた」音楽愛好家と同様に逓増し、いずれは現役のネットユーザー総数に対して200%、300%といった数字になることでしょう。

そもそも、ファイル交換ソフトの利用に関しては、そもそもユーザー自身が発信者になるわけですから、既に公衆送信権を侵害しているもので、ダウンロード違法化の根拠とする合理的な理由にはなりません。

■71ページの「違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状」の項目

※この項目について私たちは反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。

○不透明な「違法サイト」の範囲

こちらも統計上の疑問ですが、ネット上でも批判の多いMYUTA事件判決のことを考えると、一般ネットユーザーの理解から乖離した「違法サイト」判断が、本報告書でまとめられているアンケートで行われているかもしれません。私たちが権利者団体であれば、MYUTAや録画ネットのようなサイトも「違法着うたサイト」「違法動画配信サイト」としてアンケート結果をまとめ、一般ネットユーザーは法規範意識に欠けると印象づけようとするでしょう。しかし、それでは本当の一般ネットユーザーの法規範意識を反映しているとは言えません。

■104ページの「検討結果」の項目

※この項目について私たちは反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。

○潜在的な違法ユーザーという危険性

以上で議論してきたように、ダウンロード違法化は、一般ユーザーを潜在的に違法ユーザーとするものであり、これは国民の法規範意識にも合致するものでは言えず、法治国家として非常に好ましくない事態となります。これは、たとえば警察組織にとって優先度の高い一般ネットユーザーを、恣意的に簡単に逮捕できる便利な材料として機能することでしょう。それでは、公正な法運用に支障を来します。

潜在的違法ユーザーを大量に生み出すことになれば、その「違法ダウンロードを行ったかもしれない」という一般ユーザーの意識につけ込んで、偽の権利侵害を主張する詐欺や恐喝をする者が現われることになるでしょう。米国では既に現実化しています。ダウンロード違法化というのは、善人である一般ユーザーを詐欺師の餌食にするとっかかりにする、悪人に資する法改正となる可能性が低くありません。

○著作権者がインターネットで流通させていないのが一因

そもそもコンテンツの違法なアップロードは、著作権者がそのコンテンツを死蔵し、あるいはコンテンツホルダーの都合での市場分割によって、日本でのみ適法コンテンツが流れないといった、日本人の利益に適わない事態があるためである、という例も多いように思います。たとえばApple iTunes Store for Franceで販売されている楽曲が、iTunes Store for Japanでは販売されていない、といった事例が報告されています。このような問題が生じるのは、ロングテール、超流通といった経済的に合理的なモデルに移行できない一部コンテンツホルダーが、前世紀型コンテンツ販売モデルに依存しているためではないでしょうか。

○「一億総クリエイター」「一億総ユーザー」の理念と矛盾

そもそも著作権法がその目的とする創作性の拡大は、過去の著作物に多かれ少なかれ影響を受けるかたちで行われるものです。文化庁でもそのことを意識して「一億総クリエイター」「一億総ユーザー」といった理念を打ち出して、政策を立ててきたのではなかったでしょうか。

過去の著作物へのアクセスを狭めるという発想は、これらの高尚な理念に基づく従来の方針とは相反するものであるように、私たちには思えます。過去の作品に依拠した創作は、公表され私的使用の範囲をこえた時点で、いずれにしろその依拠への相当対価を支払うことになるのです。場合によっては原作品以上に市場に浸透し、原作者の利益にも資するような派生作品の誕生の可能性を、あえて潰してしまうような法制度は、日本の国益に適うものと言えるのか、私たちは懐疑的です。

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※10/29改訂: 103ページおよび108ページを対象としていたコメントの対象となる項目(およびページ番号)が、適法サイトからのダウンロードではなく違法サイトからのダウンロードに関する部分となるのではないか、というご指摘をいただきましたので、その部分を初回版から訂正し、既に存在していた104ページ/105ページに対するコメントに統合しました。ご指摘ありがとうございました。

※11/1改訂: さらに108ページ「検討結果」を対象としていた項目について、対象を104ページに訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。

※11/2改訂: 虚偽の著作権表示の違法化について、「著作権者や権利団体が」鳥獣戯画の著作権を主張しているというのは正しくないのではないかという含意のご指摘がありました。確かに著作権は既に消滅しているので、著作権者は存在しないため、より正確に「著作権を主張する人や団体」と記述を改めました。ご指摘ありがとうございました。

著作者 : Atsushi Enomoto
最終更新日 : 2007-11-02 04:22:47

MIAU設立発表会アーカイブ (2007年10月18日)

2007年10月18日、映画専門大学院大学にて、Movements for Internet Active Usersの設立発表会を開催いたしました。
  その会合に関する資料、及び、映像について、下記の通り公開いたします。

MIAU設立発表会概要

名称
Movements for Internet Active Users 設立発表会

日時
2007年10月18日(木) 11:00~12:00

場所
映画専門大学院大学 201教室

参加人数
メディア・一般あわせて45名


講演資料

  • 組織概要及び活動方針説明 [PDF]
    Movements for Internet Active Users 発起人 津田大介(IT・音楽ジャーナリスト)
  • 講演:「インターネット時代の政治参加について 」[HTML]
    Movements for Internet Active Users 発起人 白田秀彰(法政大学准教授)
  • 講演:「ネットユーザーとデジタルコンテンツ、未来への課題」[ PDF] [HTML]
    Movements for Internet Active Users 発起人 小寺信良(AV機器評論家、コラムニスト)
  • 閉会のあいさつ [HTML]
    Movements for Internet Active Users 発起人 中川譲(映画専門大学院大学助教)


映像資料

YouTube内、「MIAUオフィシャルチャンネル」にて公開しています。
  ニコニコ動画内でも、「MIAU設立記者発表会」にて公開しています。


その他資料

  • 設立趣意書 [PDF]
  • 発起人一覧 [HTML]
  • 講演者プロフィール [PDF]

著作者 : 中川 譲
最終更新日 : 2007-11-23 20:18:19

メールマガジン登録開始のお知らせ

登録の開始が遅くなりまして、誠に申し訳ありませんでした。
  下記の通り、本日より、MIAUの活動第一弾として、メールマガジン購読者の募集を開始いたします。

本メールマガジンの内容としては、下記のようなことについて、随時お送りすることを予定しております。

  • MIAUのウェブサイトの更新や、活動状況に関する報告
  • パブリックコメントに関するコラム
  • MIAUの企画するイベント等
  • MIAUで検討した方がよいかもしれないニュース等の紹介

購読の登録方法ですが、下記のフォームでメールアドレスの登録をお願いいたします。
 そのアドレスを登録させていただき、23日(火)に、第1号をお送りする予定です。



なお、今後MIAUでは、MIAUの活動をさまざまな面でお手伝いいただける方を対象に、別途会員登録のシステムを用意し、ご登録をお願いすることを予定しております。こちらも、公開の際には是非よろしくお願いいたします。

今後ともMIAUの活動のご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

著作者 : 真紀奈
最終更新日 : 2007-10-21 17:24:52

メールマガジン募集の延期について

本日よりメールマガジン購読者の募集を行う予定でしたが、準備に時間がかかっているため、登録用フォーム公開は、明日に延期することになりました。

皆様にご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありません。

準備が出来次第再び告知を行わせていただきます。

著作者 : Fumiko Kudoh
最終更新日 : 2007-10-20 23:42:17

翻訳プロジェクト協力のお願い

当団体の発起人でもあります八田真行が中心となって、MIAUと海外組織との連携を深めるべく、MIAU英語版コンテンツ作成プロジェクトが発足いたしましたので、お知らせいたします。

詳細はOpen Tech Press「MIAU会見来場御礼、協力者募集 - mhatta のジャーナル」をご覧いただきたいと思いますが、以下にその趣旨を抜粋いたします。

今後は積極的にMIAU から海外にも情報を発信し、EFF等との海外組織との連携も図っていきたい。日本の状況が海外メディアに大きく取り上げられれば、ある種の外圧としても機能するのではないかと思うのだ。日本語コンテンツだけだと私の英語ブログからリンクを張ったり、DiggやRedditやもちろんSlashdotに投稿したり、ストールマンにチクったりができないのも困る。まあ最後のはどうでもいいが、いずれにせよ海外の人というのは(積極的に情報を得ようというほどではないにしろ)びっくりするほど日本に関心があって、かつびっくりするほど日本のことを知らない。だから、こちらから歩み寄る努力は最大限すべきだろう。

ご協力いただける方がいましたら、ぜひ八田にご連絡くださいますようお願い致します。

なお、詳しい参加方法などにつきましては、MIAU プロジェクト Wikiをご参照ください。

著作者 : Fumiko Kudoh
最終更新日 : 2007-10-20 01:08:59

メールマガジン発行のお知らせ

先日の設立発表会には、多くのメディア、ブロガーの方にご来場いただきまして、 誠にありがとうございました。 多くのメディアで記事も公開していただき、 また、当団体の活動を支持してくださるという意見も多くいただいており、 励みになっております。

さて、MIAUの活動第一弾として、本日よりメールマガジン購読者の募集を行います。 昨日、担当者の手違いで間違って登録用のメールアドレスを公開してしまいましたが、 それはテスト用の物で、登録ができないものとなっておりました。 誠に申し訳ありませんでした。心よりお詫びいたします。

実際の募集については、本日の夜に登録用フォームを公開させていただき、 そちらに入力していただければ、自動で登録が行えるように調整しております。 なお、メールマガジンの第1号は、火曜日の発送を予定しております。

メールマガジンの内容としては、MIAUのウェブサイトの更新情報や、 今回のパブリックコメントに関するコラム、 MIAUの企画するイベント等について、 随時情報をお送りいたします。 また同時に、皆様に関心をもっていただきたい インターネットに関わるニュース/アジェンダについても取り上げてお送りしていきます。

今回のパブリックコメント終了後、ここでとりあげられるニュース等について検討が行われ、 新たなテーマとしてとりあげていくことになるようなイメージと考えております。

登録フォームの公開まで、今しばらくお待ちいただければと存じます。 色々と対応が遅れており誠に申し訳ありませんが、 どうぞよろしくお願い申し上げます。

著作者 : Atsushi Enomoto
最終更新日 : 2007-10-20 01:26:01

設立発表会の報道・報告リンク

本日はお忙しい中、多数の方が当団体の設立発表会にお越しくださいました。また、Ustream.TV上での中継を見ていただいた方たちもたくさんいらっしゃったようです。
  設立発表会に参加された皆様に、厚く御礼申し上げます。

さて、参加していただいた皆さんの記事を、以下で紹介させていただきたいと思います。
  まずはメディア関連の記事になります。(随時追加いたします)

次に、参加していただいたブロガーの方々の記事になります。(随時追加いたします)

当団体をご紹介いただき、誠にありがとうございます。
  今後も節目ごとにこうしたご報告会を行わせていただく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

著作者 : 真紀奈
最終更新日 : 2007-10-19 01:17:09

MIAU 設立発表会講演録(1)

設立記者発表会講演「インターネット時代の政治参加について」

Movements for Internet Active Users 発起人 白田秀彰(法政大学准教授)


ミャウの理論的防波堤の白田です。みなさんでこの組織を「みゃっうみゃうに」盛り上げていただければ大変嬉しく思います。

インターネットには、古くから「言い出しっぺの法則」という慣習がありました。私は、昨年出版していただいた『インターネットの法と慣習』という本のなかで、「ネットワーク利用者の政治的組織が必要」だとか、「名前を持って責任主体として活動する人々が必要」だとか、訴えていたわけですが、まさに「言い出しっぺのお前がやれ」というようなことになりました。

ネタ組織であるロージナ茶会の総統として余生をマッタリと送りたかったのですが、若い衆が突っ走ってしまったようです。

私の著書でも指摘したところですが、ネットワークには、名前や顔を出すことを極端に恐れる雰囲気があります。もちろん、個人が特定されることが大変危険であるという現実も理解しております。とはいえ、その匿名性に固執する雰囲気が、ネットワーク利用者がネット上で仲間を募り、責任ある主体として社会に働きかけていくことを困難にしていると思っています。私は、ネットワークで名前や顔を出しても普通に生きてきました。

私はミャウに発起人として参加することで、さらに「ネットワークに名前晒し顔出しで政治的活動に関与しても普通に生きていける」ことを、身をもって示したいと思っています。そうすれば、続いて名前や顔を出しながら活動する人が増えていくのではないでしょうか。よくよく考えてみれば、民主主義の前提とはそういうものだったはずなのです。人々が安心して政治参加できないような環境で、民主主義が機能するはずがありません。

もちろん、ミャウを支えてくださる皆さんが匿名で活動されても全くかまいません。むしろ、そうした「名無しさん」たちの意見を、内容について責任を負担し、リアル社会に向けて伝える、名前と顔を持った代弁者として機能するつもりです。

仮に、私が名前や顔を出したことで、ネット上の皆さんから徹底的に叩かれて再起不能になるのであれば、それは、自分が信じて自分の存在を賭けた「ネットワーク上の善意」「民主主義の可能性」が幻想であったことを意味するのですから、それは、それでよいのだと思います。そうであるならば、もっと実効性のある他のアプローチについて考えなければならない、という貴重な教訓を得ることができるでしょう。

私は、ネットワークに集う皆さんや私たちが、民主主義を新しい形態で先に進めることができると信じています。現実世界の偉い人たちが言うように、ネットが「危険で」「犯罪の巣窟で」「悪意に満ちた場」であるなら、ミャウの活動は、ただちに敗北するでしょう。しかし、それは擁護すべきでないものを支えようとした愚かさの代償だと、私は覚悟します。

もし君たちが、自分自身の自由のために戦うこともできないというのなら ...君たちはその自由に値しない。── というのは、スタンフォード大学教授ローレンス・レッシグ先生の演説の一節です。

レッシグ先生は、我々にうったえ、我々を鼓舞し、我々を動かそうとし ...そして今、身を引いています。レッシグ先生ほどの人物であっても、EFFほど知られた組織であっても、やはり世の中を動かすことは難しかった。だから、私は、このミャウでなにか変化が起こせるか...については楽観していません。ただ、私は、この組織で、今の若い世代に、続く世代に、「ああ、こういうことをしてもいいんだ」という姿を見せたい。そして、彼らが、私の屍の上を越えていければいいのだと思っています。

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そうそう。ニコニコ動画やニコンドライフに関連して、ひろゆきさんが「圧力にはほほえみで」とか「線がはっきりわかって誰もニコニコしていないのと、線はおぼろげで見えないけどみんながニコニコしているのとどちらがよいか」というような、ニコニコ的アプローチを唱えていました。マジな対立を、サラリとかわしながら凌いでいくというあり方です。私もこのあり方については、とても共感するところがあります。

でも、とても悲しい現実なのですが、私たちを縛ろうとする権力や法や制度は、曖昧にしていると、私たちがほほえんでいるだけだと、どんどん私たちの側に入ってきて、私たちの自由を削り取っていくのです。ここに集っている皆さんなら、そのあたりの事情をよくご理解していると思います。確かにミャウのアプローチは、泥臭く見えるし、なんだかマジでかっこ悪いと思います。でも、私たちがニコニコするために、誰かがやらなければいけない汚れ仕事なんだと思います。

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私たちネットワーカーは、私たちの声を政治の場に届ける方法をもたなかったために、著作権問題のみならず、コンテンツ規制、通信放送政策等において、声の大きな人たちに、いつも譲歩させられてきました。これは、すでに私たちが敗北していることを意味しているのでしょうか?

違います。これから私たちの活動は始まるのです!

声の大きな人たちに比べて、私たちネットワーカーの意見や要望など、草むらを飛び交う蚊の羽音くらいのものでした。それにもかかわらず、私たちネットワーカーが、さまざまな新しい価値を生み出してこれたのは何故でしょう? それは、私たちの夢や希望が、テクノロジーの発展、とりわけインターネットが可能にした新しい情報流通のあり方に沿ったものだったからです。これは、私たちネットワーカーにとっては、明らかなことです。

でも、そうしたテクノロジーが可能にした新しい表現手法は、ときとして既存の法律に抵触しました。それゆえ、ネットワーク文化は、主にサブ・カルチャー、アンダーグラウンド・カルチャーとして発達してきたのです。こうしたネットワーク文化は、少なくとも私の見方では、正統文化と同等の価値をもつものですが、それを「表」の文化として取り扱おうとするとき、しばしば正統文化の側からの法律や道徳を理由とした非難をうけたのです。でも、ネットワーカーが生み出してきた表現や文化が差別される理由はありません。

私はこうした主張を長年してきたのですが、相手にされてきませんでした。何故でしょう?

新しい環境において、社会を主導するのは、その環境をよく理解する人たちであることは歴史の示すとおりです。そうであるならば、ネットワークに関する統治の問題に、ネットワーカーが関与できないことは奇妙なことです。私たちネットワーカーは、電話線を使って文字が送れるというだけの時代から、さまざまに創意工夫し、徹夜し、絶食し、感電し、半田ごてで火傷し、今日の豊かなネットワーク文化を築きあげてきたのです。

かつて、多くの先人が、ネットワークが私たちの社会を変革すると夢見ました。しかし、現実世界で声の大きい人たちは、ネットワークが現実社会の一部分として、これまでの規範に従属すべきであると主張します。そうしてネットワーク文化を、現実社会の法や道徳の観点から「悪いもの」として扱ってきたのです。法律が理由となって消えていった、いくつかのアプリケーションやサービスを思い出してみてください。それらのアプリケーションやサービスを作り出し、利用してきた人々の夢や希望は、もとより存在してはならなかったのでしょうか? 無駄だったのでょうか?

ネットワーカーのみなさん、声を挙げましょう!

もはや、私たちネットワーカーは、ばらばらの少数者ではありません。ネットワークを頼りにし、大事に思う私たちの意見こそが、ネットワークに関する法制度を導く必要があると思うのです。

著作者 : 白田 秀彰
最終更新日 : 2007-10-18 21:52:31
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