「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集について

「知的財産推進計画2007」の見直しに関する意見募集の締切が、4月3日 と目前に迫っています。今回の意見募集は、新たに盛り込むべき政策事項に ついてのものであり、来年度の計画策定の参考とされます。この「知的財産推進計画2007」には、ダウンロード違法化、著作権法の非親告罪化、保護期間延長問題などインターネットユーザーの多くが関心を寄せ、そしてMIAUが取り組むべき問題が多数盛り込まれていました。こうした論点の多くが来年度である2008年度も引き続き審議される予定です。

MIAUは本件について意見を提出する予定です。そして、できるだけ多くの方に 興味関心を持っていただき、意見を送っていただきたいと考えております。

「新たに盛り込むべき政策事項」についての意見募集とされていますが、過去に 盛り込まれていた政策事項であっても、インターネットユーザーの視座から問題を 再定義する必要性のある事項もあり、そのような意味で新しい検討課題を提案 できるのではないかと考えます。もちろん、記載のなかった事項についても 検討致します。

新しいかどうかを知るには過去の政策事項を知らなければなりません。しかし、 150ページ近くもある「知的財産推進計画2007」の全てに目を通して提案を考え、 意見を書き上げるというのは時間と労力のかかるものです。

そこで、皆様の参考となるよう、特にインターネットユーザーに関係が深いと 思われる論点を指摘したいと思います。

ダウンロード違法化について (90ページ)

③違法複製されたコンテンツの個人による複製の問題を解決する
合法的な新しいビジネスの動きを支援するため、インターネット上の違法 送信からの複製や海賊版CD・DVDからの複製を私的複製の許容範囲か ら除外することについて、個人の著作物の利用を過度に萎縮させることの ないよう留意しながら検討を進め、2007年度中に結論を得る。
(文部科学省)

ダウンロード違法化について、MIAUは 以前から反対意見を表明しております。文部科学省文化庁の私的録音録画 小委員会が提出した「中間整理」における制度設計は、弊害防止策や適用範囲に 明確でない部分があまりに多すぎ、既存の制度活用の検討が不十分で、新制度の 導入自体に問題があることを指摘しました。

私的録音録画補償金問題について (91ページ)

⑥私的録音録画補償金制度の見直しについて結論を得る
私的録音・録画について見直すとともに、補償金制度については廃止や骨 組みの見直し、他の措置の導入も含め抜本的な検討を行い、2007年度 中に結論を得る。その際、技術的保護手段の進展やコンテンツ流通の変化 等を勘案するとともに、国際条約や国際的な動向との関連やユーザーの視 点に留意する。また、技術的保護手段との関係等を踏まえた「私的複製の 範囲の明確化」、使用料と複製対価との関係整理等、著作権契約の在り方 の見直し等についての検討を進め、2007年度中に結論を得る。
(文部科学省、経済産業省)

保護期間延長問題について (94ページ)

⑥利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う国内制度を整備する
ⅲ)著作物の保護期間の延長や戦時加算の取扱いなど保護期間の在り方に ついて、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2007年度中に 一定の結論を得る。

以上の3つの問題については2007年度中の結論となっておりますが、前述の ように全て次年度に持ち越しになっているので、留意してください。 これらについては、今まで主として著作権者の側からの視点で語られてき ましたから、インターネットユーザーの視座から問題を再定義する必要性 があるでしょう。

著作権法における非親告罪化問題について (63ページ)

(5)著作権法における親告罪を見直す 海賊版の氾濫は、文化産業等の健全な発展を阻害し、犯罪組織の資金源となり得るなど、経済社会にとって深刻な問題となっている。重大かつ悪質な著作権侵害等事犯が多発していることも踏まえ、海賊版の販売行為など著作権法違反行為のうち親告罪とされているものについて、2007年度中に非親告罪の範囲拡大を含め見直しを行い、必要に応じ法改正等制度を整備する。
(警察庁、法務省、文部科学省)

コピーワンス問題について (105~106ページ)

(3)バランスのとれたプロテクションシステムを採用する
コンテンツの流通を促進するに当たり、技術革新のメリット・利便性を国 民が最大限に享受できるようにするとの観点も踏まえ、視聴者利便の確保 と著作権の適切な保護を図り、あわせてコンテンツビジネスが拡大するよ う、バランスのとれたプロテクションシステムの策定・採用を促進するた め、以下の取組を進める。
a)地上デジタル放送に関わる、いわゆる「コピーワンス」ルールの見直し に代表されるように、一定の枠組みにおける電波利用方式の設定・実施、 放送関連機器・システムの規格・運用に関わるプロテクションシステムの 設定は、事実上利用に当たっての制約になる可能性がある。したがって、 こうしたプロテクションシステムの設定について、行政としても引き続き 、視聴者、メーカー、関係事業者等幅広い関係者の参加を得て、その検討 プロセスを公開し、その透明化を図ることによりシステム間の競争を促進 するとともに、あわせて、その透明、競争的かつ継続的な見直しプロセス の在り方についても検討し、これまでの成果を踏まえ2007年度中の早 期に結論を得る。
b)民間事業者において動画配信サービス等のプロテクションシステムを検 討する場合は、権利者が安心してコンテンツを提供できる環境を作るとと もに過去の失敗例に学び、ユーザーの使いやすさに配慮したルールの採用 を奨励する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

ダビング10やB-CAS問題について、どう扱うべきなのか意見を是非お書きく ださい。その際、MIAUが今年1月に主催した「ダビング10について考える」 シンポジウムの発表者資料・関 連記事や資料映像などを参考としてくだされば幸いです。

「ネット権」問題について

下部調査会のコンテンツ・日本ブランド専門調査会でまとめられた「デジタル時代におけるコンテンツ振興のた めの総合的な方策について」(概要はこちらのPDFを参照のこと)も、その記 載が知財本部に盛り込まれる可能性が高いので、合わせて指摘しておきま す。「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策につい て」の6ページには、

① 通信と放送の垣根を越えた新たなサービスへの対応
IPTVや携帯端末向けマルチメディア放送など、通信と放送の垣根を越 えたサービスの展開が本格化しつつある。しかし、現行の著作権法では通 信と放送の区分により権利関係が異なるため、利用者から見ればほぼ同一 のサービスであっても事業者によって権利処理に要する手続き等が異なる 場合がある。
このような状況を踏まえ、サービス事業者の社会的影響力や新たなコンテ ンツの創作への寄与等を考慮しつつ、利用者からみたサービスの形態に応 じて、権利関係の規定の見直しや著作隣接権の在り方を検討する。また、 現在進められている通信・放送の法体系の見直しにおいては、コンテンツ の生産・流通・消費を最大化する方向で検討を進める。

と書かれており、通信放送の融合において著作隣接権に言及しています。 通信放送の融合と著作隣接権については、流通を促進できる方向が望まし いですが、隣接権を拡大することが最適解なのかはまた別問題であり、別途 考えていく必要があると思います。

フィルタリングについて

「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」 の16ページには、

② 青少年の健全な創作活動の場の確保
コンテンツ産業の継続的な発展のためには、教育の場において将来のコン テンツ創作の担い手たる青少年の表現力、創造力の向上を図るとともに創 作・発表の場を広く確保することが重要である。
最近では、子どもがデジタル技術を用いてコンテンツを制作、編集、発信 する取組が各地で行われているほか、ケータイ小説など、青少年を中心に ユーザー間のコミュニケーションを活用して創作される世界に類を見ない 新しいコンテンツが生まれている。
特に、ネット上のコミュニティサイトの中には青少年が表現能力を高めた り、才能を早くから開花させたりする重要な場になっているものもある。 しかし、一方でネット上には、過剰な性表現や暴力表現があるコンテンツ を含んだサイトやいわゆる出会い系サイトなど、青少年の健全な育成にと ってアクセスすることが好ましくないようなサイトも存在している。
このため、有害な情報の排除など青少年を健全に育成する観点から適正な 体制を整えているサイトを明らかにするなど、適切なフィルタリングを進 めるための関係事業者による仕組みづくりを促進する。

とありますが、現在の総務省主導のフィルタリングの議論のことを参考に しつつ、意見を提出すると良いと思われます。

ネットにおけるプライバシーについて

「デジタル時代におけるコンテンツ振興のための総合的な方策について」 の7ページに、

② 新たなサービスにおけるプライバシー保護の在り方の検討
ネット利用者の行動履歴情報や属性情報等を活用し、利用者に合わせた商 品・サービス・情報を提供するサービスが始まっている。
しかし、これらのサービスの展開に当たっては、利用者に関する情報の取 扱いにおけるプライバシー保護に関する問題が懸念されている。
このため、利用者のプライバシーを保護しつつ利用者に関する情報を安心 ・安全に収集・蓄積・活用するための方策について検討する。

とあります。この問題については、インターネットの自由を過度に制限さ れないよう配慮が必要であり、皆様のなかに様々な意見があると思います。

図書館におけるデータ蓄積・公開と著作権の問題などについて

「オープン・イノベーションに対応した知財戦略の在り方について」(概要はこちらのPDF、参考資料はこちらのPDF)には 、ネット時代の著作物の公正利用の問題が取り上げられています。10ペー ジに

①図書館に存在する学術情報等へのアクセスの改善
国立国会図書館を始めとする図書館の蔵書には膨大な学術情報等が存在し ており、オープン・イノベーションを支える基盤として、これらの情報に インターネット等を通じて国民が容易にアクセスできる環境を整備するこ とが重要である。
しかしながら、蔵書のデジタル化にかかる経費などの問題のほか、現時点 では法律的にも次のような課題がある。
・ 蔵書をデジタル化すること自体、元の著作物の「複製」に該当する ため、著作権者の承諾なしにこれを行うことは、著作権法上例外的にしか 認められていない。
・ 蔵書中の情報をデジタル化しても、これを図書館間や利用者との間 でインターネット等を通じてやり取りすることは、原著作権者の公衆送信 権を侵害することになるため、個別に権利処理をしなければ行うことがで きない。
このため、著作権者や出版者に及ぼす影響にも配慮しつつ、図書館が権利 者の許諾なしに蔵書のデジタル化を行えるようにする方策や、図書館間で のデータのやり取りや利用者への情報提供の在り方について検討を行うべ きである。

また、11~12ページには、

①研究のための映像・テキスト情報の利用の円滑化
高度情報化社会の下、取り扱われる情報量が爆発的に増大する中、自ら望 む情報を容易に取り出す等のため、映像・画像解析、テキスト解析等の基 盤的技術が重要となっている。これらの技術に係る研究を行うためには、 映像、テキスト等に関する膨大な情報を蓄積し、研究目的で利用すること が必要となる。
このような研究のために放送番組に係る情報やウェブ情報を複製・改変す ることは、著作物の本来の利用とは異なるものであり著作権者の正当な利 益を害するおそれは少ないと考えられるにもかかわらず、事前にすべての 著作権者から許諾を得ることは事実上困難であるため、実際の研究活動に 相当程度萎縮効果が働いていると指摘されている。
このため、著作権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、映像・画像解析、テキ スト解析等に係る研究のために映像情報やウェブ情報の利用を円滑化する ための方策の在り方について検討を行うべきである。
②ネット環境の安全性確保等のためのソフトウェア解析の円滑化 インターネット環境の安全性を確保するためには、ウィルス対策ソフトウ ェアの研究開発や暗号ソフトウェアの研究開発を行うことが不可欠である 。その際、ウィルスの及ぼす作用の分析等を行うため、既存ソフトウェア の解析(逆コンパイル等)を行うことが必要となる。
しかしながら、著作権法上、ソフトウェア解析の位置付けが明確でないた め、これらの研究開発に萎縮効果が働いているおそれがある。
このため、ネット環境の安全性確保やソフトウェアに係る研究開発の促進 を図るため、著作権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、ソフトウェア解析を 円滑に行うことができる方策の在り方について検討を行うべきである。

とあり、研究目的でのデータ収集・プログラム解析と著作権の問題が書か れています。いずれも著作権者の正当な利益を害するおそれの少ない公正 利用ですが、この他にも新たに登場した公正利用の様態はあるでしょう。 この機会に他の公正利用についても是非提案してみてください。

その他の問題

以上で紹介したことだけでなく、商標や特許など知的財産政策全般につい て様々な意見をお持ちだと思います。「新たに盛り込むべき政策事項」に ついて、皆様からより多くの意見が提出されることを祈念しております。



【3/28追記】
「著作権法における非親告罪化問題について」の項目を追加しました。

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2008-03-28 23:30:14