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プレスリリース

2010.06.06

「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案についての意見書

現在東京都議会に再提出され、審議中の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案(以下、「条例案」という。)について、以下、当協会の意見を述べます。

当協会は、保護者等の求めに応じた青少年保護育成活動への都の取り組みを否定するつもりはありませんが、条例案は明らかにそれを越えるものであり、ここに反対を表明します。

1.インターネット利用の肯定的側面を蔑ろにしている

条例案では、「都は、青少年がインターネットの利用に伴う危険性及び過度の利用による弊害について適切に理解し、これらの除去に必要な知識を確実に習得できるようにするため、青少年に対して行われるインターネット利用に関する啓発についての指針を定めるものとする」としています。ここには、インターネットを青少年の健全育成に活かすという観点が欠落しています。また、インターネットがこれから伸びる新しいメディアであるという視点も欠けています。このような条文のもとに定められるインターネットの利用啓発の指針は、実際には、インターネット利用それ自体に否定的なものとならざるをえません。都のこれまでの動きでは、例えばSNSなどに代表される双方向コミュニケーションメディアとしてのインターネット利用は「危険性」のみが強調されており、このような指針の上では青少年が適切な情報リテラシーを学ぶ機会を失うことが憂慮されます。当協会では、インターネットの肯定的側面を無視する条例案に反対します。

2.官主導のフィルタリングを行うものである

青少年インターネット環境整備法は、フィルタリングに関しては民間主導の環境整備を行政が支援するものです。一方、条例案では、行政主導の内容と言わざるをえません。

条例案では、携帯電話における青少年のフィルタリングサービスの解除にあたっては、保護者に携帯電話事業者の提供する履歴閲覧サービスを利用した利用状況の監督を行うなどの「正当な理由」に限定された解除理由の書面での提出を求めています。当協会では、保護者の選択の自由を認めない原則義務化は、青少年インターネット環境整備法の趣旨に反するものであると考え、これに反対します。そもそも閲覧履歴サービスを提供する事業者は一部に限られ、それ以外の事業者を利用する家庭に対しては解除を認めない事実上の強制です。

情報リテラシー教育の観点からも、現行の履歴閲覧サービスは、利用者自身の確認を目的として利用者自身にパスワードなどを発行するものであり、条例案は反教育的です。パスワードなどの認証情報は自身で管理し、たとえ保護者などの監督者に対してといえども他人には教えないということは、ごく基本的な教育内容です。

3.家庭における教育への行政の不当な介入である

条例案では、「都は、青少年がインターネットを利用して違法な行為をし、又は自己若しくは他人に対し有害な行為をした場合におけるその保護者に対し、必要に応じ、再発防止に資する情報の提供その他の支援を行うように努めるものとする。」としています。まず、対象となる青少年の行為が曖昧かつ広汎です。支援の内容も情報提供に留まりません。また必要性の判断は保護者ではなく都に委ねられています。このような規定は、家庭の教育に対する行政の不当な介入となるおそれがあります。「都」の「必要に応じ」ではなく、「都」は「個々の保護者の要望に応じて」支援を行うべきです。

条例案では、例えば、高校生が保護者の監督のもとで、自他の安全に配慮してプロフィールサイトやTwitter等を用いてコミュニケーションをすること自体を、前述の「指針」に基づいて、行政が「再発防止」の対象とするおそれさえあります。また、保護者が明示的にフィルタリングソフトのフィルタリング対象から外したサイトや、携帯電話フィルタリングを解除したことでアクセスできるようにしたサイトに青少年がアクセスしたことをもって、具体的な問題が起きていなくても「再発防止」の対象とされるおそれもあります。

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