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プレスリリース

2011.05.31

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」について慎重審議を求める声明

政府が本年3月11日に閣議決定し、4月1日に国会に上程した「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」について、一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)の意見は以下のとおりです。

不正指令電磁的記録作成等の罪、いわゆるコンピューターウィルス作成罪の新設について、平成23年5月27日の衆議院法務委員会における法務大臣答弁により、コンピューターソフトウェアの重大なバグ(瑕疵)の放置が提供罪に該当する事態があるとの法務省見解が示されました。

ソフトウェアにおいて、データの損壊や不正アクセスにつながるような重大なバグは、しばしばあるというのが現実です。もちろん、このような重大なバグは発見され次第直ちに修正されることが望ましいですが、サポート期間の終了、企業の倒産、個人開発者の余暇時間の減少など、さまざまな理由で開発が終了し、いずれ対応が行われなくなるのが一般的です。世界的にもフリーソフトウェアは大学や研究機関での研究成果から生まれてきたものが多く、こうしたものは研究期間が終了すると最初の開発元での管理は不可能になります。

今回の法務省見解は、自由なソフトウェア開発と自由な流通を促す立場からは極めて遺憾なものです。重大なバグの放置自体が罪に問われうるということは、非営利機関や個人にとっては非常に重い負荷となるため、また、国際的にもそのような慣行がないため、わが国のソフトウェア技術の発展や国外との技術交流を妨げる可能性があります。今日のインターネット利用においては、一利用者の作成した、小規模なスクリプトやプログラムが広く有用性を認められて利用されることも多く、萎縮効果はこうした裾野の層にまで広がる懸念があります。

我々は、所要の条文修正又は法務省の見解の精緻化ないしは修正を今後の国会審議の中で行い、例えば改修義務が発生する要件又は改修義務が発生しない要件を明らかにするなどして、こうした萎縮効果への懸念が払拭される必要があると考えています。

法案には、他にも「記録命令付差押えや電磁的記録に係る記録媒体の差押え」「通信履歴の保全要請」など、これまでにない新しい捜査手法の新設もあり、こうしたものの効果等については、さらなる国会審議を通して明確にされる必要があります。

以上のとおり、この法案の審議に当たっては、インターネット利用者の利益を侵害することがないように、また恣意的な運用がなされることがないように、慎重な審議がなされるよう求めます。

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