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総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会 中間とりまとめ(案)」に関する意見募集に、意見書を提出しました

MIAUは総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会 中間とりまとめ(案)」に関する意見募集に意見を提出しました。

内容は以下の通りです。

総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会 中間とりまとめ(案)」に関する意見

検討の背景に記されているように、現在のプロバイダ責任制限法をベースとした発信者情報開示のしくみが制度化された当時と比較すると、インターネットの使われ方や提供されるサービスが多様化したことは確かであり、また社会に対するインターネット上で行われるコミュニケーションの影響は日々増し続けている。

発信者情報開示は憲法や法令で定められた保護法益を守るための手段である。情報技術の進歩やインターネットの有り様が変化するなかにおいては、人権など種々の権利の保護がこれまでの発信者情報開示制度で対応できない、あるいはその被害の救済に時間を要してしまっている現状を反映した制度設計が検討されることに異論はない。

対してこれも検討の背景に記されているように、発信者情報開示制度を悪用し、個人の論評や告発を妨害するような事例も見受けられる。発信者情報開示制度の新たな検討には表現の自由の妨害、通信の秘密やプライバシーの毀損のおそれがあることも改めて指摘しておきたい。

上記を踏まえて、またこの中間とりまとめ(案)に記された論点や意見をベースとした議論が今後深められていくことを前提に意見を述べる。

「2. 新たな裁判手続の創設について」について

本章では、非訟手続等として被害者からの申立てにより裁判所が発信者情報の開示の適否を判断・決定する仕組みを新たな裁判手続きとして創設することが検討されていることが示されており、その論点やそれに対する構成員の意見が整理されている。

その中で訴訟手続に代えて非訟手続とした場合の課題として、適法な情報発信を行う発信者の保護が図られなくなるおそれや、手続の濫用の可能性が指摘されている。今後の議論はこの懸念をベースに発信者の権利利益の確保に十分配慮した制度設計の議論を深めていただきたい。

もし非訟手続の議論をすすめる場合になった場合は、手続のプロセスをすべて記録し、広く閲覧を可能とすることは条件の一つになるだろう。

「ウ その他(手続の濫用の防止等)」では非訟手続の悪用や濫用の防止についての指摘が示されている。文中にある通り、現行のプロバイダ責任制限法第4条第3項においては発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない旨が定められており、これをより実効性のあるものとする議論が求められる。特に電話番号を新たに開示対象とし、その番号を使って発信者に直接連絡するために用いることは、目的から必ずしも大きく逸脱した用い方であるとはいえないという整理を行うのであれば、裁判外での発信者への嫌がらせなどを防止するために必要な措置である。申立ての取下げの要件の検討も同様に、目的から逸脱した形で手続が悪用されないような実効的な措置が必ず求められる。

また事前にコンテンツプロバイダがどのような情報を持っているかについて開示させる方策については、その範囲が広すぎ、コンテンツプロバイダに大きな負担を与えるおそれがあるため反対する。コンテンツプロバイダにも様々な規模があり、個人やスタートアップ企業などの小さなチームによるサービスの存在を無視はできない。またどのような情報を持っているかはサービスの仕様変更などによって変化する。本検討の目的は円滑な被害者の権利回復であるので、開示対象となる情報を持っているかを問い合わせることで目的は達せられるはずだ。

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