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「青少年の安全なインターネット利用環境の整備を目指して関係者に望まれる取組みについて」へのパブリックコメント

MIAUではこのたび、財団法人インターネット協会による「青少年の安全なインターネット利用環境の整備を目指して関係者に望まれる取組みについて~書き込み可能なCGMサイト増加への対応~(中間とりまとめ)」に対しパブリックコメントを提出しました。内容は以下のとおりです。

指摘点:今回のパブリックコメント募集について
内 容: インターネット協会の違法有害情報問題への取り組みの中で、一般からの意見を募集するのは初めての機会であり、これまでの長年の閉鎖的な検討からの
方向転換は率直に歓迎する。
理 由:-

指摘点:中間取りまとめ全体について
内 容:青少年の安全なインターネット利用環境の整備と、インターネット利
用者の多様な価値の尊重について、より配慮した取り組みを求める。
理 由:過去の取り組みと比較すれば改善は図られていると考えるが、いまだ
「健全」の内容を含めた、インターネット利用者の価値の多様性を十分に尊重
している内容とは言い難いと考える。より十分な配慮を求める。具体的な内容
と理由は他の指摘点で述べる。

指摘点:1ページ3段落目『しかしながら、インターネット上には性的な画像や、
暴力的な画像など、青少年にとっては不適切と考えられる、いわゆる「有害情
報」も流通している。』、3ページ2段落目『性的な情報や暴力的な情報など、
いわゆる有害な情報』および4ページ7段落目『性的な情報や暴力的な情報など、
従来から存在している「有害な情報」』について
内 容: 指摘した部分はレイティング・フィルタリングの対象としての有害情
報の定義として適切ではない。例えば1ページの指摘部分は『しかしながら、イ
ンターネット上には、青少年の発達段階に対して過度に性的な画像や暴力的な
画像など、個々の青少年にとっては不適切となる場合がある、いわゆる「有害
情報」も流通している。』といった内容にするべきであり、2ページの指摘部分
は『過度に性的な情報や暴力的な情報など、いわゆる有害な情報』、3ページの
指摘部分は『過度に性的な情報や暴力的な情報など、従来から存在している
「有害な情報」』などとするべきである。
理 由:日本の社会の中では、「性的な画像や、暴力的な画像」は、あらゆる
程度のものが青少年にとって不適切とする社会的な習慣や合意はない。青少年
の発達段階に対して過度な内容であるとみなされる場合が不適切であるとされ、
その前提で全ての青少年にとって過度であるとみなされるものが法令上での規
制の対象となったり、既存メディアでの自主規制が行われている。青少年ネッ
ト規制法においても、青少年有害情報は「青少年の健全な成長を著しく阻害す
るもの」と定義されており、例示においても犯罪誘引情報以外は「人の性行為
又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報」
「殺人、処刑、虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報」
と、「著しく」という程度を問題にしている。

自主規制においては、18歳を基準とするもの以外にも、15歳や12歳を基準とす
るものが存在する。これが意味するところは、性的・暴力的表現とは発達段階
との適合性を問うべきものであって、表現の程度を問わず問題とするものでは
ないことを示すものである。フィルタリングは個々の青少年の発達段階に応じ
て保護者が適切な選択を行うためのものであるということは、2.1節「フィルタ
リングとは」にも言及があり、整合性の観点からも、有害情報とは青少年の発
達段階によって異なりうる、相対的なものであることが明確となる定義とする
べきである。


指摘点:2.2節(1)「フィルタリングの重要性の高まりと SafetyOnline の検討」
および3章のうちSafetyOnline 3.1について内 容:SafetyOnline 3.1 の検討・
修正は不十分であり、根本的見直しとして4月に検討が発表された
SafetyOnline 4に期待する。
理 由:サイト管理者がセルフレイティングを行う際の利便性を考慮して「キー
ワード」を項目として切り出したことは利便性の向上に資するものの、逆にキー
ワードに抵触すれば程度にかかわらずレイティングの対象となり、評価ラベル
によって18歳未満の閲覧に適さないとされることは、サイト管理者がセルフレ
イティングを行うインセンティブを大きく削ぐと考えられる。サイト管理者の
インセンティブを確保するためには、FOSIによるICRA (2005年版、2008 年版ド
ラフト)のように、個々のカテゴリについて複数の段階を想定したものが望まし
いと考える。ICRAでは、カテゴリ内のラベリングについて、複数の段階を設け
ることと客観性を担保することとの両立を考慮した内容となっている。
また、評価ラベルの年齢区分の根拠のひとつとなった保護者へのアンケート調
査は、フィルタリングが十分に普及する前の段階のものである。この時点では、
カテゴリによるフィルタリングの弊害として、有用な情報・サイトへの閲覧が
制限される場合が少なくないという認識が、青少年や保護者の間でなされてい
ない。再度アンケートを行うなど、年齢区分の見直しの必要が必要である。
このような観点から、SafetyOnline3とその整理に留まったSafetyOnline3では、
青少年の発達程度に応じたレイティング・フィルタリングはなお難しいと考え
られる。

指摘点:3章のうちCGMサイトに関する部分について
内 容:文章については、リスク回避的な内容に偏っているので、リスク管理
的な内容に改めるべき。表については、「教育・普及啓発を行う人々」は、危
険性の教育だけではなく、「サイト上で明らかにする個人情報の安全な範囲を
サイトの属性や自身の発信する個人情報以外の情報などから総合的に考えるこ
とが出来るようになる教育」や「知らない他人とやり取りをする安全な範囲を
判断する教育」や「ネット上の知らない他人といかに信頼関係を築き、あるい
は信頼できない人物とのやりとりを断つためことができるようになるリテラシー
教育」が求められる。

「サイト運営者」に対する要求は、個別サイトの内容や属性をあまり考えずに
具体化しすぎており、リスク回避の利益とサイトの有用性との釣り合いがとれ
ない場合があると考えられる。本文中で「網羅的なものではない一方で、全て
の取り組みが必要であるという趣旨のものではなく」としていることは重要
であると考える。

理 由:CGMサイトのリスクと有用性は表裏一体のものであり、単にリスク回避
的な対応を全ての関係者に求めたり、リスク回避的な教育を青少年に行うだけ
では、「青少年の健全な育成や次世代を担う者の IT リテラシー向上等に資す
る」ことにならない。関係者は、リスクのある機能の有用性を維持しつつリス
クを低減する方法について検討するべきであるし、教育にあたっても、いかに
リスクある機能を安全に利用していくかという方向性で内容を検討するべきで
ある。

指摘点:4章「おわりに」の「将来的に成人し独立する青少年自身の、インター
ネット上の有害情報から身を守る能力、いわば耐性を高める取り組み、及びイ
ンターネットのプラスの面を最大限活用する能力を高める取り組みが必要不可
欠である」について
内 容:指摘点からの検討について、中間とりまとめの中では行われていない。
今後に期待する。なお、「インターネット上の有害情報から身を守る能力」は、
「インターネット上のリスクから身を守る能力」に改められるべきである。
理 由:指摘点の趣旨にはおおいに賛同するところであるところであるが、中
間とりまとめでは検討が行われておらず、結果として、レイティング・フィル
タリングについて発達段階に応じた年齢区分の緩和といった見直しがされてお
らず、また、CGMサイトのリスクについてもリスク回避的過ぎる内容となってい
る。今後の検討に期待するところである。

「インターネット上の有害情報から身を守る能力」とある部分については、
「有害情報」が本取り組みにある「青少年にとっては不適切と考えられる」情
報であるならば、成人に達した段階においてまでも閲覧が不適切であるとはい
えない。一方で本中間とりまとめでは2.3節「CGMサイトの利用に伴う主なリス
ク」について「なお、これらのケースは、対象者が青少年でなくとも問題とな
りうる事例であるが」としているように、CGMサイトのリスクについては成人に
も存在しうるリスクとして挙げるのが適切であり、CGMサイトのリスクは有害情
報リスクとは別個のものとして言及されているものである。さらに本検討の範
囲外にも、違法情報に関するリスクや、その他のさまざまなインターネット上
のリスクが考えられる。青少年が成人し独立するにあたっては、それら多面的
なリスクへの総合的な耐性が高められていることを目標とするべきであろう。
従って、指摘点の表現は「インターネット上のリスクから身を守る能力」とす
るべきである。


指摘点:SafetyOnline3.1「差別的表現・悪口表現」カテゴリについて
内 容:本カテゴリは「差別的表現」「悪口表現」の2つに分割するべきである。
また、「差別的表現」の説明から「放送禁止用語」を削除するべきである。
理 由:フィルタリングカテゴリを青少年の発達段階に応じてカスタマイズす
る観点からは、両者が同一カテゴリにまとめられているのは適切ではない。ま
た、放送禁止用語は日本では放送局による自主規制であり公開された形でその
内容が明確になっているわけではないこと、差別的表現を越えたはるかに広い
内容であること、自主規制としての放送禁止用語は不特定多数への一斉情報
伝達であることからくる社会的責任として自主規制しているものであって、
放送ではないインターネット上のコンテンツにそのまま適用するのは問題が
あることから、削除するべきと考える。

指摘点:SafetyOnline3.1「ギャンブル」カテゴリについて
内 容:キーワード「パチンコ、パチスロ、競馬、競艇、競輪」は不適切であ
る。キーワード「パチンコ、パチスロ」「競馬、競艇、競輪」に分け、前者は
ギャンブルカテゴリのままでよいが、後者は「公営競技」カテゴリを設けそこ
に入れるべきである。さらに、公営競技カテゴリでは、投票券購入サイトや投
票券予想サイトなどは18歳未満閲覧制限対象としつつ、競技そのものの情報や
主催団体の情報サイトについては閲覧制限を設けない、あるいは12歳未満制限
程度に緩和することを検討するべきである。一方、「ギャンブル」カテゴリの
キーワードとして「スポーツ振興くじ(toto)」を追加するべきである。
理 由:パチンコ、パチスロは風適法のいわゆる第7号営業という規制業種で
18歳未満の入場が規制されており、娯楽として楽しむ側にせよ、就職先とする
にせよ、いずれにせよ18歳未満が関与するものではない。しかし、公営競技は
個別法で規制され、未成年は投票券購入・譲り受けを禁止されているが、競技
の観覧自体は禁止されておらず、また競技の内容は地上波テレビで放送される
場合も多い。さらに、選手になるなどの形で就職先とする場合、JRA競馬学校、
地方競馬教養センター、やまと競艇学校の入学資格が中学校卒業以上、日本競
輪学校が17歳以上(それぞれの上限は省略)であり、いずれも18歳未満の段階
で志望可能であり、実際に各施設に18歳未満で入学する青少年が少なからずい
る。公営競技の選手となることを志望することは青少年の進路のひとつであり、
そのような可能性のある青少年が自身の将来の志望先の情報をインターネット
上で入手することを制限することには問題がある。コンテキストラベル「スポー
ツ」や「教育」の活用も考えられるが、主催者団体サイトはスポーツ情報と投
票券の情報が混在しているのが実際のところであり、コンテキストラベルを用
いるよりカテゴリ定義で工夫するほうがうまくいくのではないかと考えられる。
「スポーツ振興くじ(toto)」については、未成年が購入できない年齢制限つき
のくじであり、制限対象として例示するのが妥当と考えられる。スポーツ振興
くじについては、対象スポーツであるサッカーJリーグとは分離されたブランド・
運営となっているので、公営競技について述べたような競技志望者に関する問
題はない。

指摘点:SafetyOnline3.1カテゴリに対する評価ラベルについて
内 容:「法令の規定」に基づく部分と「保護者へのアンケート結果」に基づ
く部分を区別するべきである。また、カテゴリを全体として細分化したり、カ
テゴリに対して段階的なラベリングを可能とすることで、年齢制限を緩和する
べきである。
理 由:現状は広範な内容をカバーするカテゴリに対して年齢区分が18歳未満
利用制限に高止まりしていて、保護者が「参考例」から緩和する方向にカスタ
マイズを検討するにも参考にすべき情報が存在せず、青少年のインターネット
利用の利便性を損なう内容となっている。法令の規定により保護者への努力義
務などの形で課せられている閲覧制限と、その他のものは区別できる必要があ
る。また、SafetyOnline3の検討過程の資料をみると、カテゴリにおいても評価
ラベルにおいても、少しでも問題が起こる可能性があるものは制限する方向に
あったと判断でき、SafetyOnline3.1では修正がすすんでいないと思われる。今
後、なるべく青少年のインターネット利用の利便性を損なわないよう改善を求
めるものである。

指摘点: SafetyOnline3.1「参加サイト」コンテンツ形式について
内 容: 今後の検討として、掲示板、ブログ、SNSなどを区別することを検討
するべきである
理 由: それぞれの形式でメディアとしての特性に差があり、また、保護者と
してのフィルタリングカスタマイズの観点からも、区別されていたほうが有用
性が高いと考えられる。

指摘点: SafetyOnline3.1「ショッピングサイト」コンテンツ形式について
内 容: 今後の検討として、オンラインコンテンツ販売サイトと、有体物の販
売サイトを区別することを検討するべきである
理 由: オンラインコンテンツは購入したものに形がないため、有体物の購入
とは体験として大きな差がある。その一方、オンラインコンテンツの購入はサ
イトで完結するが、有体物の購入では住所等を販売元に教える必要があるなど、
個人情報管理上の問題が生ずる可能性がある。そのようなことから、保護者と
して、とくに若年層の青少年については対応に差をつけたい可能性があるので、
区別の必要性についてアンケートを実施するなどの調査の上で、需要が見込め
れば区別するべきであろう。

指摘点:SafetyOnline3.1「コンテキストラベル」について
内 容:「文学」「歴史の記述」「歴史的文書」をコンテキストラベルとして
追加するべきである。
理 由:コンテンツレイティングにおけるコンテキストラベルの先行例はICRA
だが、ICRAに比べて SafetyOnline 3.1 では広範なカテゴリを対象としたレイ
ティング基準となっているので、救済すべきコンテンツの幅も広くなっている
と考えられる。また、日本の文化や習慣なども考慮してコンテキストラベルの
幅を広げることは有意義である。

「文学」については、日本語の語感として「芸術」に文学を含めない場合が多
いので、別途設けるべきである。ここで述べる文学は、英語でいう artistic
なものを対象とすることを意図しており、古典文学や近代文学や現代の純文学
を含めるが、エンターテイメント要素の強い文学は含めない程度となる(広げ
すぎると文章表現に対するレイティング・フィルタリングの意味がなくなる)。
古典文学を含めることで、たとえば源氏物語が性愛表現や性暴力の制限対象か
ら外れ、近代文学を含めることで、日本の近代私小説の多くが性愛表現の制限
から外れ、プロレタリア文学が暴力表現、その他禁止行為の制限から外れる。
現代の純文学作品においても、芥川賞作家やノーベル文学賞受賞者の代表的作
品が、コンテキストラベルによる救済なしには閲覧制限となる可能性があると
考えられる。こうした文学作品には、教科書掲載のものや入学試験問題となる
ものも少なからずあり、また、すでに戦前のものを中心として、著作権が切れ
てネット上でフリーで閲覧できるものが少なくないことも考慮すべきである。
「歴史の記述」については、人間の歴史の多くには戦争をはじめとした暴力に
ついての記述が多いことから、救済措置が必要だと考えるものである。例えば、
ナチスドイツのホロコーストに関する記述や、日中戦争に関する記述などが具
体例として考えられる。

これとは別に、市民革命やプロレタリア革命の時代には、革命に関係した文書
として、「暴力表現」や「その他禁止行為」に抵触するものが少なからずある
と考えられ、こうしたものには哲学史上や社会思想史上著名な人物によるもの
もあり、青少年にとって有用なものも少なくないため、「歴史的文書」として
救済が必要である。

なお、追加するそれぞれのコンテキストラベルの年齢区分については別途検討
が必要である。

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