2007.10.18
設立趣意書
ネットワークの自由には価値がある。
ネットワークの自由は古い制度に縛られている。 ネットワークの自由を主張し擁護する組織的主体がない。 だから作ることにした。 それがMIAUだ。 |
設立趣意書
「進歩」という言葉が輝きを失って長く経った。しかし、万物と同様に私たち自身も、私たちの社会も、また常に変化しつづける。ならば、その変化をより私たちの幸福に結び付けるよう努力すべきだろう。その努力が「変化」を「進歩」へと変えるのだ。
今、私たちは、情報技術の一般化という段階に至っている。かつて、そうした情報技術を様々に応用して実現されるだろう、たくさんの夢が語られた。現在、それらの夢のいくつかは実現し、いくつかは夢のままに終わろうとしている。一方、語られた夢を苦々しく思い、社会の変化を好まない種類の人たちがいることも事実だ。ある人にとって現在がすでに幸福なら、変化は不安をもたらす不吉な兆しにすぎない。
私たちは、生まれながらにして自由を求める。それは自らの足で立ち上がり、母親の差し出す掌を求め、歩みだす瞬間からはじまる。自由は、誰にとっても善いことであり望ましいことだ。だから、私たちの先人は、思想家として科学者として、社会制度から工業技術に至るまでの「自由のための道具」を作り出し、私たちの生活の中の不便を取り除き、私たちの自由を拡大してきた。
しかし、そうした技術がもたらした自由が、私たちの古くからの社会のあり方を支えてきた環境条件や、法や制度と矛盾し、さまざまな害や不安を私たちにもたらすようになった。20世紀に入って以来、「進歩」という言葉が輝きを失い、私たちの自由の拡大に対して、さまざまな疑問が投げかけられるようになった。
そうした広い意味での「自由」のなかでも、ここで私たちが語ろうとしているのは、私たちをとりまく情報環境の自由の問題だ。いうまでもなく、民主主義政体も自由市場経済も、情報の自由流通を基礎として正統性を持ちうる。そして、これまで情報の自由について、私たちは、技術のもたらす自由の果実を疑うことがなかった。しかし、近年の著しい情報技術の一般化によって、ついに情報の自由に疑問が投げけられるようになった。
技術や道具のみならず、法や制度もまた道具にすぎない。それらは、私たちの先人が、自らの自由を守り広めるために生み出し、育て、社会を形成する基本的な枠組みとして設定されたものだ。しかし、そうした法や制度が生み出されたとき、私たちの先人は、現在の私たちが応用しようとしている情報技術について、知る由もなかった。したがって、古い法や制度は、情報技術を基礎とする社会のあり方について、何も語っていないのだ。ただ、法や制度を解釈して適用すると主張する人々の、それぞれの思惑があるにすぎない。
現在幸福であり、古い法や制度に依拠している人たちは、私たちの情報技術を、これまでの社会のあり方の枠の中にとどめようと試みる。たとえそれがどんなに不合理な結果をもたらすものであったとしても。もし、情報技術が彼らの幸福を脅かすものであるなら、彼らはその技術を禁じさえするだろう。これまでの歴史を振り返れば、ある種の技術や制度が為政者によって禁じられ、その技術の進歩が抑制され停止された例は、いくらでもある。
誰かの古い自由のために、私たちは自らの自由の可能性を放棄せねばならないのだろうか? すでに一般化した技術のもつ可能性を、制度的に抑制することは可能かもしれない。しかし、それは長く続く持続性のある安定した社会状況をもたらすだろうか? 現在の小さな不都合は、将来の大きな災厄とならないだろうか? 私たちは、自由のための道具を用いて、新しい自由に向かって進みたい。
私たちは、情報技術を日常的に用い、その自由を享受する者として、古い法や制度に依拠する人たちに、新しい自由がもたらす利益と幸福について説明しようと思う。一方、私たちは、古い法や制度が現在まで続く私たちの自由と幸福を支えてきた、理論と実践に学びたいと思っている。万物が変化する中では、万物の均衡と調和のみが、なんらかの永続するものを支えることを私たちは知っている。「新しい技術がすべてを解決する」などと思っているわけではない。しかし、「新しい技術が何をもたらすかわからない」などと不安がってばかりいるのも愚かなことだ。私たちは、すでに歩き始めているのだから。
私たちは、新しい組織をつくることにした。情報技術の知識と、法や制度に関する知識を総合して、次の時代のあるべき姿を考え、社会に訴える組織だ。
既得権をもち、既存の社会のあり方に依拠する人たちは、数多く、そして組織化されている。もとより、現在の社会の主導的な勢力の人たちは、既存の法や制度を基礎として社会的優位を得ているのだから当然だ。一方、情報技術の可能性について気がつき実践している人たちは、その数が多いとしても、まだ組織化されていない。現在の社会体制において、組織化されていない声は存在しないものとして扱われる。だから私たちは、「情報技術を応用することで、現在よりも自由で幸福な社会をつくることができる」と考える人たちの集う組織を作る必要があると考えた。
私たちは、ネットワーク利用者が直面しているさまざまな問題について、現在の社会において力をもつ人々にも理解できるように、調査し整理し報告しようと思う。ネットワーク利用者が、政府や産業界や官僚に訴えたいと考えていることを、説得的に代弁しようと思う。ネットワーク利用者の自由が、制限されたり、抑圧されたりするとき、自由を回復するための援助をしようと思う。
私たちの組織に参加してほしい。私たちが信じる新しい自由と幸福が実現できるよう協力してほしい。あなたが参加してくれれば、私たちの組織は動き出す。あなたが参加してくれれば、より多くの仲間たちに一つの力が加わる。
情報技術のもたらす自由と幸福について気がついているなら、ネットワークの自由を抑制するようにみえる政策や制度に反発心や憤りを感じているのなら、私たちの組織に参加してほしい。私たちは、私たちの望むように、社会のあり方を進歩させることができるはずなのだから。
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