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プレスリリース

2008.11.09

「法制問題小委員会平成20年度・中間まとめに関する意見」に関するパブリックコメント送付のご案内

MIAUではこの度、文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会平成20年度・中間まとめ」に関する意見募集の実施を受けて、以下をパブリックコメントとして送付することといたしました。締切直前の公開となってしまい恐縮ですが、どうぞご参考下さい。

—- コメント本文 —-

5.該当ページおよび項目名:(権利制限の検討全体に対する意見)
   第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について
   第4節 研究開発における情報利用の円滑化について
   第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて
   第6節 その他の検討事項

6.意見: 以下のとおり

(第6節 その他の検討事項について)
 私たちMIAUは、法制問題小委員会で対処すべきと結論された権利制限についてはすみやかに法改正を行ない、さらに個別規定では追いつかない分野についての懸念を解消するべく、フェアユースの一般規定を導入することを求めます。

(第3節 リバース・エンジニアリングに係る法的課題について)
 法制問題小委員会におかれましては、リバース・エンジニアリングについては相互運用性・障害発見などの目的ならば「権利制限を早期に措置する必要がある」との意見で一致したとのことです(中間まとめ29ページ)。相互運用性や障害発見に限らず、単なる利用とは異なる技術上の調査全般をフェアユースの個別規定の対象とする法改正を求めます。 また、前期の同小委員会で法改正で対処すべきとの結論が出されていた検索エンジンに関する権利制限につきましても、すみやかに実行へ移す必要があります。

(第5節 機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いについて)
 これまで議論されてきた個別の権利制限規定では、著作権法改正による対応を待つため、時間がかかるという問題があります。 その一方で、MYUTAや録画ネットといった、ネットの長所を活用した新しいサービスの試みは、実質的に私的使用の範囲でユーザーの利便性を上げているだけであるにもかかわらず、形式的な理由で複製権侵害とされてしまっています。 海外と国内とのネットサービスの格差を埋めるためにも、国内で挑戦的な事業者が登場でき、足を引っ張られない環境を整備する必要があります。

「イ、立法措置に対する許容性を判断する上での留意点のb」について

機器利用時・通信過程における蓄積等に関する議論の方向性は、妥当性が高いものとして高く評価するものであります。しかしながら60ページ「イ-b」における通信の過程における蓄積等及び通信に付帯する蓄積等の行為に対して、その内容および元ソースの入手経路などを鑑みて違法性を問うというのは、前段での妥当性のある議論の方向性からは逸脱しているように思えます。
また「知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合」に関して、プロバイダ責任制限法との整合性を確保するということは、権利者がいわゆる「情を知っていたか」を証明できない限り、プロバイダはアクセスログを提供することはないという点を明確にすべきであろうと思われます。
さらに本筋の問題として、仮にこれらの蓄積行為を違法化したとしても、蓄積された情報を権利者が回収することは困難であることから、現行の公衆送信権で対応可能な一次送信者の特定と比較してどれだけ有効性のある方策であるか疑問です。また違法とされるファイルに触れただけで、万単位の消費者が一度に違反者となるようなあり方は、法的安定性を著しく欠くものであると言えます。

「イ、立法措置に対する許容性を判断する上での留意点のd」について

61ページ「イ-d」では、P2P型の通信技術を活用したファイル交換ソフトにおける中継過程は、権利者の権利が及ぶものであるとされています。しかしながらP2Pの利用者にとっては、自分で利用しようと思っていない単なるキャッシュに過ぎないデータの中身が、違法か否かを知る術がありません。単にP2Pソフトの利用者であるというだけで違法とされる可能性が否定できない点で、P2P技術の利用・発展を萎縮させることとなり、この整理には問題があると言えます。
一方その後段では、「著作物等の提供及び享受自体に関わる行為」である場合は「今回の検討対象とはしていない」としており、論旨に整合性がありません。仮に「著作物等の提供及び享受自体に関わる行為」が、著作権者自らが合法的配布のために行なった行為であるとする場合、利用者は「良いキャッシュ」が生成されれば適法だが、「悪いキャッシュ」が生成されれば違法ということになります。
これはP2Pのあり方としては大変不自然なものであり、このような規制はインターネットの新たな技術発展を阻害し得るものであります。

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2008/10/9 22:00 第5節について、詳細な検討を加えましたので、追記しました。

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