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プレスリリース

2009.09.05

「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見

MIAUではこのたび総務省情報通信審議会情報通信政策部会内「デジタル・コンテンツの流通の促進に関する検討委員会」の中間答申に関する意見として、以下を提出いたしました。今後の情報通信政策およびデジタル・コンテンツ流通促進への一助となれば幸いです。

(以下コメント内容)

意見1.

該当箇所

5ページ 基幹放送である地上無料放送等に係わるエンフォースメントのあり方

意見内容

コピー制御に関するエンフォースメントについては、録画を行なったコンテンツの所有権・財産権的見地から、世代間コピーによるメリットについても議論を行なうべきである。

理由

録画したテレビ番組の所有者は誰なのか、という問題に対しては、未だ明確な答えが出ていない。また、消費者が保存する映像は、市場一般とは違った、本人のみの財産的価値を持つものであることも、委員会の中では検討されていない。

現状の議論の方向としては、放送の録画に係わる取り扱いを不自由にすることで、放送外収入への誘導を行なおうとしているように見受けられる。これには一定の意義および経済効果は認めるところではあるが、実際には放送外収入としてアウトプットされるコンテンツは、視聴者に選択権があるわけではなく、マスマーケットに注視した選択がなされるのみである。

これは文化的な面では、放送外収入として出てこない、いわゆるニッチなコンテンツを好む者が、世代間コピーによってコンテンツを長期保存することができないというデメリットを押しつけられることになり、不公平である。またマスマーケットに受けるコンテンツのみ入手の利便性が高まるだけでは、人間の嗜好の多様性を阻害し、文化的に偏った社会となる可能性がある。

さらに個人がアーカイブし、長期保存した番組コンテンツは、すでにNHKアーカイブスなどを始めとする放送事業者のアーカイブ事業では必要不可欠な映像入手ルートとなっており、放送文化的にも無視できるものではないと考える。

 

意見2.

該当箇所

18ページ 第3節 エンフォースメントの改善のあり方に関する検討

意見内容

技術的エンフォースメントに関する検討は、その開発および導入に対する費用対効果を算出すべきであり、技術的エンフォースメントそのものが無駄である可能性を視野に入れるべきである。

理由

現在の技術的エンフォースメントであるB-CASシステムは、台湾のベンチャーによって設計・製造されたFriioによって無効化されている。

また一般的に市販されている一部のPC向け地上派デジタル受信装置であっても、簡単な改造プログラムを用いることでB-CASシステムを無効化できることが確認されており、現行のB-CASシステムはもはや根本的にその意味を持たないと言っても過言ではない。

DRM技術は、無視したいというニーズが存在する限り、必ず破られるものであり、かつて例外は存在しない。単に時間がかかるか、かからないかの問題だけである。したがって技術的エンフォースメントの存在には意味がなく、結果としては何も変わらないという可能性を指摘しておきたい。

我々はFriioの開発者へヒアリングを行なったが、日本からは経済産業省からコンタクトがあったのみで、総務省を始め権利者などからは、これまで接触は一切なかったという。利害関係者自身がFriioの開発者へ接触するという試みが行なわれるわけでもなく、単に技術が破られたからまた新しい技術へ逃げるだけの消極的な対応を、莫大な国費を投じて行なおうとしている点は、看過できない。

Friioは日本へはすでに5万台以上が出荷されており、市場で流通している改造可能な地上派デジタル受信装置も含めれば、その台数は膨大なものになる。これらがデジタル放送の違法アップロード件数に与えた影響を調査すべきである。影響が軽微なのであれば、技術的エンフォースメントが実質的に機能しておらず、その存在に意味がないという証明となると考える。

また早急に技術的エンフォースメントの実施にかかる総費用と、それによって保護される実質的な(「架空の」ではない)被害総額の調査を行なうべきである。その費用対効果の検討もなく、実効性も疑わしい新たな技術的エンフォースメントを策定することは、国費の無駄遣いである。

 

意見3

該当箇所

54ページ (イ)番組制作者等の間で疲弊が著しい「コンテンツ製作力」の再生・強化

意見内容

現在の疲弊状況の最大の原因は、著作権者枠には含まれないコンテンツ製作に必要な人材、すなわち演出、制作進行、技術に係わる人間の人件費を徹底的に叩いたからである。早急な賃金体系の見直しと、搾取構造の解体が必要である。

理由

コンテンツ製作現場は、その過酷な労働条件に対して得られる金銭的インセンティブのバランスが取れておらず、才能ある人材が物作りから逃げ出している。それだけでなく、そもそも求人しても人が集まらない事態となっている。

現実には現場のスタッフが組合運動もままならない状況化にあり、労使間交渉自体が存在しないため、その技量および労働時間に応じた賃金が支払われていない。この搾取構造の解体には、放送局を送信設備運営とコンテンツ制作へ二分し、圧倒的な富と権力の集中を排除するのが効果的であると考える。

また制作会社の下請け、孫請け、ひ孫請けといった構造は、労働条件の悪化に留まらず、安易な責任転嫁の温床となっており、粗悪なコンテンツ製作へ繋がっている。これらの構造改革無しに、コンテンツ製作力の再生・強化はあり得ない。

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