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プレスリリース

2009.12.11

知財戦略推進事務局「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」へ意見書を提出しました

MIAUは本日、内閣官房 知的財産戦略推進事務局が行っていた意見募集「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」に対して意見書を提出いたしました。内容は下記の通りです。

意見

(1)侵害コンテンツの迅速な削除を容易にする方策について

一般に権利侵害コンテンツとひとくくりにされるWeb上のコンテンツは、実際には、著作者が他の著作権者に無許諾で公開したり、著作権者が自らの利益になるまたは余計な権利許諾手続コストの発生を望まない等の理由で黙認したり、あるいは権利侵害として対応したりと、様々な状況下にあることが考えられる。そのような現状において、「侵害コンテンツ」の削除が社会的に認められるのは、権利者が明示的に無許諾の権利侵害を認めないとしている場合のみである。

権利侵害の迅速な救済を認めるための手段として、商用または非商用コンテンツの著作権に関する「二階建て」制度案や、各種の「デジタルコンテンツ流通促進法制」案が、これまでの知財本部や文化庁宛のパブリックコメントにおいて提案されている。これらは、単に権利者の都合に合わせて均衡を欠いたような案ではなく、公正な著作権制度の実現を目的とした深い考察に基づくものである。これらの法制度案によってこそ、権利侵害の迅速かつ公正な救済を実現すべきであると、わたしたちは考える。

さらに権利者と称するものが削除要請を行なったとしても、サービス運営者にはそれが本当にコンテンツの権利を所有する者なのかを確認する術がなく、安易な削除が逆に公開を容認するという意志を持った著作者の権利を侵害することにもなりかねない懸念もある。権利者と一口に言っても、著作者以外にも複製権を持つ著作隣接権者、著作権管理団体などがあり、それらの間で明確な意思統一が行なわれていないケースもある。

また、現行法の下でも、権利情報の誤信に基づいて、一般ネットユーザーの公開した著作物が正当な理由なくコンテンツプロバイダに削除される事件が発生し社会問題となっていることを考えれば、むしろコンテンツの安易な削除が行われないような制度こそが求められているのではないか。

(2)権利侵害者の特定を容易にするための方策(発信者情報の開示)について

発信者情報開示というものは、「個人情報保護」「プライバシー保護」「通信の秘密」の観点から、安易に認められるべきものではない。そのため、権利侵害等への対応を可能にしつつ、衝突する法益とのバランスを考え、プロバイダ責任制限法が既に規定されている。

現行同法の下ですらプロバイダやサービス事業者にとってのリスクが大きく、責任制限の要件に対応できない事業者は、発信者情報開示へ安易に応じがちである。要件がさらに厳しくなりリスクが増大すれば、事業の円滑な遂行に支障をきたし、新規参入や公正な市場競争を難しくするばかりか、イノベーションの大きな阻害要因となりかねない。結果的に一般消費者の権利の侵害や負担増をもたらすことに繋がり、一方で著作権者を利するのみである。現行法の規定を遵守し、個人の権利を維持することが重要である。

著作権制度に法的安定性をもたらし、わが国の知財・産業を発展させるためには、わが国の著作権法にも、米国デジタルミレニアム著作権法(DMCA)における免責事項に類する規定を導入すべきであると、わたしたちは考える。

(3)アクセスコントロールの不正な回避(注)を防止するための方策について

論点として「アクセスコントロールの不正な回避」が挙げられているが、そもそもこの文言の意味するところが明らかではない。著作権法においては、アクセスコントロールは技術的保護手段とは異なり、何ら意味のある概念ではなく、その回避にも不正なものは存在しない。アクセスコントロールを排斥する行為を違法とみなすことが常識に反する例として、DVDの再生開始画面をスキップできないという制限を解除する行為が挙げられる。

ゲームソフトウェアの複製機器について、著作権法の文脈で語るのであれば、著作権制度が公正なものであるためには、ROMに焼き込まれたソフトウェアであるか否かを問わず、リバースエンジニアリング等の公正利用を妨害しないようにする必要がある。リバースエンジニアリングのための複製を違法であると主張する学者はいないだろう。電子商取引及び情報財取引等に関する準則においては、これを制限しようとする契約の無効性についても言及されている。

また、これらの機器の「物の用法に従った利用」が「複製すること」であると考えれば、その所有について法が何らかの形で干渉することは、これらの機器の財産権の侵害に該当すると考えられる。前述の通り、これらの複製機器は専ら違法な目的で使用されるのではない。したがって、法規制により財産権を侵害する正当な理由があるとは考えられない。

これらの機器の製造・販売行為には、(地裁判決でしかないが)既に不正競争防止法の解釈論により違法であるとされている。権利者には、産業法の範囲内で最大限の保護が与えられており、これを越えて消費者の権利を害することは適切ではないと考える。

(4)損害賠償額の算定を容易にするための方策について

現在、著作物の実質的な対価を度外視した、名目価格のみによる損害額の推定規定が存在しており、これは一般不法行為法に比べると、著作権者が格段に有利となる規定である。これ以上、一方的に原告側・著作権者が有利な制度変更は、公正な法制度の均衡を大きく崩すものであり、加えられるべきではない。
また、証拠法としても、一般不法行為法においてバランスを考慮した規定が存在している。著作権侵害事件であるからといって、損害賠償額の算定を容易にするために、民法の一般原則を曲げて、証拠調を被告側・権利侵害者に不利にするような法改正を行うべきとする正当な理由は無い。

(5)侵害コンテンツへ誘導するリンクサイトについて

権利侵害コンテンツの位置づけが曖昧であることをしっかりと考慮せず、十把一絡げに「侵害コンテンツ」を語ることは不適切であると言わざるを得ない。「侵害コンテンツへ誘導するリンクサイト」の実態がどうか、まず明らかにする必要があるが、何らかの実態調査を行ってその結果を検証可能なかたちで公開する必要があるのではないか。

どのような表現行為も、表現者の意思を無視して語られることはない。「侵害コンテンツ」へのリンクも例外ではない。リンクというものは、単なる検索エンジンのクエリ結果や、学術研究・社会批評の目的なども含め、幅広く存在している。これに何らかの法規制をかけるということは、表現の自由を正面から規制することに他ならない。よって、それは二重の基準論に基づき、必要かつ最小限の制限でなければならない。米国法であれば表現の自由が堅持されるのは明らかである。より制限的でない他の方法としても、「侵害コンテンツ」の公開を差し止めるという方法が、直ちに挙げられる。

リンクをはるという行為を、送信可能化権侵害を物理的・心理的に容易にする幇助的な行為として問うことができる唯一の可能性として、「ネットワーク上にアクセスコントロールなしでアップロードされているが、外部のいずれからもリンクされていないようなコンテンツ」へのリンクを公開する行為が挙げられる。このような行為のみが送信可能化権の侵害となる場合もあるということを、著作権者団体の活動を通じて周知することが、対策として有効であると思われる。

また、単なる権利侵害コンテンツへのリンクを公開することと、「著作権侵害を積極的にそそのかし、推奨すること」を目的とするリンクは、後者を規制しようと考えるものであれば、明確性の原則に基づいて区別しなければならないと考える。

(6)効果的な啓発活動について

ただ著作権の存在さえ主張すれば事足りた20世紀とは、現代の著作権教育に求められている情報の質が異なるのではないか。現在行われている「啓発活動」は、時代の要請に合っていないとわたしたちは考える。

既に既存の著作権者団体が、(本来であれば著作権者に分配されるべき著作権料のうちの少なくない割合を割いて)権利侵害防止を目的としているとする広告活動を行っているにもかかわらず、その主張が受け入れられていない。これは、量的なプレゼンスが足りないからではなく、徒に著作権の保護を要求するためだけのものになっていて質的に受け入れられていないためではないかと思われる。

著作物やインターネットのユーザー・消費者の視点をふまえた教育の普及こそが、もっとも効果的なのではないか。「啓発」といった国民を受け身に置いた施策ではなく、むしろネットを通じた国民の積極的参加を促すようなプラットフォームの確立が望ましいと考えられる。

(7)その他

本件パブリックコメント募集には、具体的な政策提案内容を論点整理が添付されていない以上、「調査の内容」として例示されている各項目の具体的な策定に結びつくものでは全くなく、改めてパブリックコメントの募集が行われなければならないものであるとわたしたちは理解している。その際には、文化庁をはじめ各省庁で行われているパブリックコメント募集にならい、国民にしっかり論点が伝わるような整理資料を添付することが望ましい。

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