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プレスリリース

2013.03.22

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2013」及び「知的財産政策ビジョン」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2013」及び「知的財産政策ビジョン」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2013年3月22日

「知的財産推進計画2013」「知的財産政策ビジョン」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

【要旨】

直接侵害が過度に拡張された著作権法の現状は打開すべき。クリエーターへの対価還元に私的録音録画補償金制度を使うことは誤り。電子書籍の促進のためと称して出版社へ著作隣接権を付与することには反対。ビッグデータの取り扱いの際には個人情報保護に関する取り組みも同時に行うべき。ACTAの推進は時代錯誤である。先の著作権法改正は再検討すべき。知財戦略の議論にはコンテンツの利活用に明るい利用者の代表を加えるべき。

【全文】

1.デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備

(1)基本的な視点

当協会が「知的財産推進計画2011」の策定に向けた意見募集に際して提出した下記の意見を2013年度においても引き続き求める。

著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。 なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

(2)施策の方向性

①「コンテンツ」産業を巡る生態系変化への対応

「関連制度の見直しの検討」について

クラウド・コンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

③コンテンツ産業の市場拡大に向けた環境整備

「クリエーターへの適切な対価還元に向けた制度構築」について

本項においてはその制度構築について、主に私的録音録画補償金制度についての記述で占められている。私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

「電子書籍の普及促進」について

現在「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」において、電子書籍の利用や流通の促進を目的に、出版社に著作隣接権を新たに付与する検討が行われている。しかし当協会は出版社への著作隣接権付与には反対である。

出版社への著作隣接権の付与の検討は、主に海賊版対策を目的に検討されているが、これが効果的な海賊版対策となるとは考えられない。また新たな権利を策定することで、電子書籍化にあたって新たな権利処理が必要となり、むしろ電子書籍の利用や流通の阻害要因ともなり得る。また出版社が著作隣接権を持つことによって、著作者自身の意思で自らの著作物を広げていくことが不可能となり、著作物が塩漬けにされてしまうなど、コンテンツの円滑な流通を阻害し得る。

またこのような新たな権利付与についての議論が、出版社や著作権者の団体でほぼ構成され、電子書籍を利用するユーザーの声が反映されない私的な勉強会で行われていることも問題である。新たな権利付与という重大な問題については文化審議会などの開かれた場で議論されるべきである。

「ビッグデータビジネスの振興」について

論点整理によって示された今後の検討の方向性には賛同する。ただし「動画や音声といったマルチメディアデータ、購入履歴といったウェブサイトデータ等のビッグデータを知財と捉え」「個人を特定されない情報の利用を促進するための環境整備や契約促進を図るなど、ビッグデータの利活用について検討すべきではないか」とあるが、個人情報に関わるビッグデータの活用はプライバシー保護の問題と背中合わせである。購入履歴や閲覧・貸出履歴などの行動履歴は厳重に扱われるべきであり、オプトインによる利用に限定するなど、個人情報保護に関する法制度やガイドラインを消費者保護の視点から再度検討すべきである。特に現状の個人情報保護法における「共同利用」がポイントカードビジネスなどにおいて濫用されている現状を認識し、知財戦略として個人情報の保護を掲げることが必須である。ビッグデータを知財と捉える方針を出すなら、グローバル化に備えてEUのデータ保護指令に準じた個人情報の定義を明確に策定し、情報コミッショナー制度や個人情報の利用全般に関わる第三者機関の設立を知財計画として打ち出すべきである。

また政府や自治体の持っている各種データもビッグデータとして捉え、行政の持つビッグデータの利活用についても知財戦略に盛り込み、知財戦略としてもオープンガバメントを推進していくべきである。特にオープンガバメントの推進に不可欠なオープンデータを進めていくためには、行政の持つビッグデータを国民が利用しやすいライセンスと形式で公開することが重要である。経済産業省や文化庁が進めているような、行政のデータをパブリックドメインないしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて公開する取り組みを、国全体として進めていくべきである。

2.クールジャパンの戦略的展開

(2)施策の方向性

「ACTAの推進」について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

その他論点整理に掲載されていないものについて

改正著作権法関連

違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

アクセスコントロール技術回避規制について

2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避することが違法となった。無条件のアクセスコントロール回避規制は、国民の正当なコンテンツ利活用およびわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なうことは明白であり、それに対する手当は一切なされていない。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきである。特にコンテンツの視聴のためであってもオープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要である。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。

権利制限の一般規定について

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入されたが、これは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。よって知的財産計画2013において、再度権利制限の一般規定の導入の方針を示し、ユーザーのコンテンツの利用の利便性の向上及び国内産業の活性化を目指すべきである。

リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

テレビ放送について

テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツについて

インターネットを利用した選挙活動が解禁される見通しがたった今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるように、政見放送や国会審議などをインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について

本意見募集に対して「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」(thinkTPPIP)が提出した意見に当協会は全面的に賛成する。知財戦略が国際条約の中で議論をされるようになった現代においては、日本政府として確固たる戦略を持ち、知財を他の分野のバーターとすることのないように交渉を進めるべきである。

政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。

一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

以上
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