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プレスリリース

2014.05.16

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2014」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2014年5月16日

「知的財産推進計画2014」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

アーカイブに関するタスクフォース報告書に関して

【要旨】

本報告書においては下記を求める。

現状の課題

  • 著作権の切れた出版物のネット上での速やかな公開
  • 放送番組の権利処理にオプトアウトの導入
  • 政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開
  • 国が主導する著作権の切れた映像コンテンツのネット公開

利活用促進のために

  • TPPへの慎重な対応
  • フェアユース規定の導入
  • クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備
  • 使いやすい行政の持つデータのライセンス採用

【全文】

II. アーカイブの現状と課題

1. アーカイブの分野別の状況

(2) 出版物など

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開を

アメリカ議会図書館は、パブリックドメインとなった書籍・映画・音楽等のアーカイブ・オンラインでのデータ配信に熱心である。700万点以上のデジタルデータが用意され、図書のみならず、映画、広告、ラジオ音声など幅広い 資源が用意されている。著作権が切れパブリックドメインとなった著作物は、速やかに全国民が利用しやすい形態で提供し、わが国の文化の向上に資するのが、文化を担う行政機関の責務である。

ひるがえってわが国では著作権の切れた『大正新脩大蔵経』『南伝大蔵経』について、著作権を持たない一般社団法人日本出版者協議会及び大蔵出版株式会社の申し出によって国立国会図書館ウェブサイト上での提供が一時凍結され、『南伝大蔵経』については未だ提供されないままとなっている。『南伝大蔵経』についてもすみやかに国立国会図書館ウェブサイト上での公開を行い、また今後このような不必要な配慮を行わないよう知的財産推進計画に明記することを求める。

(3)放送番組

アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を

放送番組のアーカイブ化およびその一般利用は、2003年のNHKアーカイブス設立をきっかけに本格的にスタートした。当時から実践されてきた権利処理のモデルは非常に厳格なものであるが、これが後々他の事業者の権利処理のモデルとなった。だがNHK基準の厳格な権利処理にかかるコストでは民間事業は成り立たず、事実上の参入障壁となっている。

権利処理のうち、膨大な人件費がかかっているのは肖像権の処理であり、特にタレントなど契約によって出演契約が行なわれた者ではない、映像に収められた一般市民の権利許諾が大きな負担となっている。

わが国においては、肖像権は明文化された権利ではなく、判例によって一部パブリシティ権などが認められた例があるに過ぎないが、一般市民の間では過剰に権利を拡大して解釈する傾向が強まっているのも事実である。

このようなバランスを考慮し、収蔵された放送番組の利活用においては、研究および教育利用に限定した上で、オプトアウトで始めたらどうか。その課程で人物の特定および権利処理の手がかりが掴める可能性もあり、事業者の権利処理の負担が軽減できる。アーカイブは、蓄積しても利用されなければただの死蔵であり、利用開始が長引けばそれだけ資産価値を減少させ続ける結果となる。放送番組のアーカイブ利活用については、最終的には国民の直接視聴に繋がることを睨みつつも、資料としての価値を優先する形で、現実的な手段を検討すべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開を

インターネットを利用した選挙活動が解禁された今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるよう、政見放送をインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

(4) 映画

国が主導する著作権の切れた映像コンテンツのネット公開を

「ネットを通じた映画の提供については、民間の映像コンテンツの配信サイトから行われている」とあるが、これでは不十分である。わが国には著作権が消尽し、文化的意義が大きいにも関わらず、鑑賞・閲覧の困難な戦前の映像作品が多数存在する。市場性が薄くなり著作権も切れた作品については国が主導して保存・公開する必要性が高いにも関わらず、こうした点についての現状認識・問題意識が乏しいのは大変遺憾である。こうした映像作品について、国家が主導してアーカイブを作成しネット上で公開していくという、アメリカ議会図書館が行っているAmerican Memoryプロジェクトに倣った行動を早急に実践していく必要があろう。

III. アーカイブの利活用の促進のために

1. アーカイブの利活用の促進に係る取り組み

(2) 利用者の活動をしやすくすること

[1] TPP(環太平洋経済連携協定)の知的財産分野への慎重な対応を

現在協議が進んでいるTPPの知的財産分野はわが国の知的財産戦略を考える上ではTPP交渉は大きなかなめであり、結果によっては本報告書で提言されている積極的な取り組みもTPPによって実現不可能となる可能性が十分にある。このような国際協定が国民、しいては国会議員ですらアクセスできない秘密下で議論されていることは大変遺憾である。知財戦略としてTPP交渉の公開、及びこれまでの交渉の情報公開を求めるよう報告書に明記し、開かれた知財戦略の議論を進めるべき。

TPPの知的財産分野で議論されているとされる論点のうち、特にアーカイブの利活用という観点からは特に下記の論点が懸念される。ただしTPPの知的財産分野で懸念される論点は下記のみではない。必要であれば当協会がTPP政府対策本部に提出した意見書(http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/dantaiiken/001.pdf)を参照されたい。

・著作権保護期間延長

孤児作品(Orphan Works)の保存と活用に関しては本報告書内でも問題として提起されている。著作権保護期間の延長はこの孤児作品を増やす最も大きな要因である。

著作権の保護期間が早く終われば、その著作物を用いて二次的著作物を制作したり、その作品を上演したりする際の許諾や著作権使用料が不要となるため、二次的著作物の制作や作品の上演が大きく加速される。結果として近代や現代の作品を演奏・上演する楽団や劇団などが増加し、著作物の漫画化やノベライズ、パロディといった新たな創作物の出現が活性化される。

現代の著作物においては非常の多くの人がその制作に関わっており、制作に関わった関係者にも著作隣接権が付与される。その著作物を保存・活用しようとした場合、著作隣接権者を含めたすべての著作者に許諾を取る必要があるが、数年前に制作された著作物であっても著作者が不明という理由で許諾を取ることが不可能なケースも発生している。より高い創作性をもった環境を維持するためには、むしろ著作権保護期間は短縮すべきであり、さらには著作権を放棄し、パブリックドメイン化する仕組みも必要である。

さらに著作権が切れた著作物を利用することで、新たなビジネスが生まれている。例えば著作権が切れた書籍のデジタル化を進めている「青空文庫」のデータは数多くの電子書籍端末などに収録されており、日本における電子書籍の普及に役立っている。しかし著作権保護期間の延長によって、このような創造のサイクルが大きな打撃を受け、新たなビジネスチャンスを失うことになる。

・著作権侵害に対する職権による刑事手続(著作権侵害の非親告罪化)

わが国の著作権法においては、著作権侵害における刑事手続は権利者からの申し立てによるもの(親告罪)であるが、TPP交渉においてはこれを職権によって刑事手続を行うことができる(非親告罪)ようにする要求が米国などから提出されているようである。しかしわが国は著作権侵害を非親告罪とすべきではない。

わが国には二次的著作物やパロディに関する法制度が存在せず、司法では二次的著作物やパロディは著作権侵害と判断される。しかし現実には二次的著作物やパロディによる作品が数多く存在しており、今やそれらは日本の文化の一翼を担っている。そしてこのわが国独自の個性豊かな文化は世界に向け発信され、世界の共感を得ている。このような文化が熟成されたのは二次的著作物やパロディについて、その制作者と原著作者との間に信頼関係があり、著作者が黙認していたことに由来する。しかし著作権侵害が非親告罪となれば、このような信頼関係に関わらずあらゆる二次的著作物やパロディが刑事告訴の対象となり、パロディ法制などのないわが国においては「クール・ジャパン」の源泉となる文化が萎縮する結果となり、国益を害する。

また著作権侵害が非親告罪となることで相対的に捜査機関の権力が増大し、これまで見逃されていたような軽微な著作権侵害について著作権侵害を理由に捜査機関が逮捕することができるようになる。またインターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できないという根本的な問題もあり、これは別件逮捕などの違法な捜査を助長するおそれがある。

・アクセスコントロール回避規制

2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避することが違法となった。無条件のアクセスコントロール回避規制は、ユーザーによるコンテンツのアーカイブを不可能とし、国民の正当なコンテンツ利活用を妨げる。特にコンテンツの視聴のためであってもオープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要である。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。

またアクセスコントロール回避規制はわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なっており、それに対する手当は一切なされていない。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきである。

・電磁的な一時的複製の規制

著作物を一時的に電磁的なかたちで記憶装置に複製する行為についても複製権の対象とし、許諾なく電磁的な一時的複製を行った場合も著作権侵害とするような枠組みの策定が議論されている。しかしわが国は電磁的な一時的複製を著作権侵害とする要求を受けいれるべきではない。また国際的な経済連携協定に電磁的な一時的複製を規制する条項が入ること自体に強硬に反対すべきである。

現代のコンピュータはプログラムとそのプログラムが処理するファイルの一時的な複製をメモリーに自動的に作り続けることで動作する。またインターネットの利用においては、ネットワークから受け取ったデータを先読みしてメモリーにバッファしておくことで大容量のストリーミングコンテンツを快適に利用することができる。また一度見たウェブサイトのデータをハードディスクに一時的に保存しておくことで、高速なウェブサイトのブラウズが可能となり、またトラフィックの軽減につながるため、ネットワーク資源を有効に活用することができる。このように電磁的な一時的複製はコンピューティングを支える基幹の技術であり、電磁的な一時的複製を規制することはIT技術の実際と大きくかけ離れており、全く現実的ではない。

[2] フェアユース規定の導入を

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入されたが、これは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。よって知的財産計画2014において、再度権利制限の一般規定の導入の方針を示し、ユーザーのアーカイブされたコンテンツの利用の利便性の向上及び国内産業の活性化を目指すべきである。

[3] クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備を

クラウドコンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、メディア変換やフォーマット変換などの公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

[4] 行政の持つデータのライセンスを利用しやすいものに

また政府や自治体の持っている各種データもアーカイブとして捉え、行政の持つデータの利活用についても知財戦略に盛り込み、知財戦略としてもオープンガバメントを推進していくべきである。例えば、過去に行政機関が発刊した白書や報告書といった、税金で作成され極めて公共性の高い文書にまで著作権の制限がかかり、全文のネット上での公開に支障が発生するような事態は、極めて非民主主義的であり悪しき官僚主義的な矛盾に満ちていると評さざるをえない。「オープンガバメント」の推進に不可欠なオープンデータを進めていくためには、行政の持つビッグデータを国民が利用しやすいライセンスと形式で公開することが重要である。経済産業省や文化庁が進めているような、行政のデータをパブリックドメインないしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて公開する取り組みを、国全体として進めていくべきである。

音楽産業の国際展開に関するタスクフォース報告書に関して

【要旨】

本報告書においては下記を求める。

  • サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態を受け入れる環境整備
  • 著作権に関する国際協定の交渉にもマルチステークホルダーの導入
  • 補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築
  • ミュージシャン自身が利用できる柔軟なミュージックファンド

【全文】

第2章 わが国の音楽産業を取り巻く環境

サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態を受け入れる環境整備

消費者の音楽の聴取形態として、従来のCDやネット配信によるコンテンツの購入に加えて、サブスクリプションサービスを用いるものが増えてきている。日本においてもレコチョクBestやKKBox、Music Unlimitedなどがサービスインしたが、未だ海外の作品を中心とした配信で、日本初の音楽はまだまだカタログが少ない。また世界的にサービスを開始しているSportifyやPandoraは日本では現在利用できない。さらに先日日本でサービスインしたiTunes Matchはサービス開始の発表から2年半遅れのスタートであるし、Google Musicは未だ日本では利用できない。このような新たな音楽の聴取形態に合わせたサービスで日本の音楽を利用できるようにすることは、日本の消費者の利便性を高めるにとどまらず、日本の音楽を世界に広めるための重要な施策のひとつである。海外の消費者が違法ダウンロードに頼ることなくわが国のコンテンツを楽しめるよう、サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態に速やかに対応することを知的財産推進計画に明記することを求める。

第3章 音楽産業の国際展開の現状と課題

(6)海外での権利保護システムの改善と海賊版対策

著作権に関する国際協定の交渉にもマルチステークホルダーの導入を

「相手国政府との二国間協議などを通じて、著作権保護の枠組作りを進めていくことが求められる」とあるが、このような国際交渉は公開とし、また権利者だけでなく、ユーザーもステークホルダーとして交渉の場に臨む形を目指すべきである。このようなマルチステークホルダーの考え方はインターネットガバナンスを考える上で主流の考え方となってきている。

(7)「面」を「立体」にー日本ブランド構築によって関連産業の輸出拡大へ

補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築を

「わが国製造・サービス業などが自発的にコンテンツの国際展開へ向けた資金的支援に乗り出していくことが望まれる」とあるが、これがクリエイターへの対価還元としての新たな補償金制度の創設を求めるものとならないようにすべきである。

そもそも私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

第4章 音楽産業の国際展開に向けて政府・業界が取り組むべき課題

ミュージシャン自身が利用できる柔軟なミュージックファンドを

本報告書31ページの参考資料内に英国のクリエイティブ産業支援策が紹介されているが、ここに記載のないものとして英国のMusic Fundがある。これはミュージシャンに対して海外ツアーやプロモーション、そして世界最大級の音楽見本市 SXSW(http://sxsw.com/)やMidem(http://www.midem.com/)などへの出展の費用を一定の審査のもとで総額の70%まで補助するものである。業界団体や法人だけではなく、ミュージシャン自身が自らのコンテンツを海外でアピールできるようなミュージックファンドの創設を政府のクリエイティブ産業支援策として求める。

「知的財産推進計画2014」全体に関して

【要旨】

安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境作りを推進すべき。TPPには慎重に対応せよ。ACTAの推進は時代錯誤。著作権を報酬請求権化すべき。著作権がイノベーションを阻害しないような環境整備を求める。知財戦略の議論にはコンテンツの利活用に明るい利用者の代表を加えるべき。違法ダウンロード刑事罰化、リーチサイト規制には反対。災害時の放送のインターネットサイマルを可能とする法整備を求める。

【全文】

安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境作りについて

電子書籍に関する環境整備は出版社については進んだが、消費者の保護に関する取り組みは進んでいない。特に電子書籍の再ダウンロード権が5年に制限されていたり、またエルパカBOOKSやJMangaなどのように、事業者の撤退によって購入した電子書籍が読めなくなってしまったりという事態が一度ならず発生している。これでは消費者は安心して電子書籍を購入できない。消費者が安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境の整備が求められる。もっとも消費者の利益が高い状態はDRMの排除であるが、Amazon MP3など既に実現し軌道に乗っているサービスがあることを鑑みれば、DRM無しの事業化も不可能とは考えられない。業界のビジネスモデルの稚拙さや経営の失態を消費者に尻拭いさせることがないような施策を知的財産本部としても進めてほしい。

また当協会が「知的財産推進計画2013」の策定に向けた意見募集に際して提出した下記の意見を2014年度においても引き続き求める。

知的財産に関する国際条約・協定について

■TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について

本意見募集に対して「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」(thinkTPPIP)が提出した意見に当協会は全面的に賛成する。知財戦略が国際条約の中で議論をされるようになった現代においては、日本政府として確固たる戦略を持ち、知的財産を他の分野のバーターとすることのないように交渉を進めるべきである。またその交渉については十分な情報公開を各国に提案するとともに、充実した交渉のためにも国民との課題共有を進めるように求める。

■ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

知的財産に関する基本的な視点

■著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。 なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

■「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

■政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

その他タスクフォースで議論されていない論点について

■違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

■リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

■テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

以上
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