MIAU 一般社団法人インターネットユーザー協会

MIAUをサポートする

Project

プレスリリース

2015.03.27

『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました

MIAUは、主婦連合会と共同で、文化庁に対し『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2015年3月27日

文化庁 長官 青柳 正規 様
 文化庁 著作権課 課長 森 孝之 様

「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)
主婦連合会

2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(以下本小委員会)における議論の成果として、2015年2月に「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」(以下本報告書)がとりまとめられました。本報告書の「おわりに」では、残された課題として「クリエイターへの適切な対価還元に係る課題」を挙げ、今後、本小委員会で引き続き検討を深めるとしています。

クリエイターへの適切な対価還元に係る課題の議論は大変重要な課題だと認識しておりますが、進化を続けるクラウドなどIT技術を駆使したサービスと著作権の問題について、本小委員会で議論が十分に尽くされたとは言いがたい状況にあると私たちは認識しています。

そもそも本小委員会は、コンテンツの利用環境が刻々と変化する中、「我が国の著作権法における私的使用目的の複製の範囲とクラウドサービスとの関係が不明確であるため、事業者がサービス展開を萎縮しており、当該関係を整理し、事業者が積極的にサービス展開できるように所要の措置を講じてほしい」という事業者からの要望や、知的財産政策ビジョン(平成25年6月知的財産戦略本部決定)の中で「著作物の公正な利用と著作物の適切な保護を調和させ、新しい産業と文化の発展を続けるため、クラウドサービスやメディア変換サービスといった新たな産業の創出や拡大を促進する全体的な法的環境の整備を図るため、著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築などの制度の在り方について検討を行い、必要な措置を講じる」とされていることなどをうけて設置されたものです。

しかしながら、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみでした。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考えます。

以上の状況認識に立ち、本報告書、および本小委員会の今後の検討事項に関して、消費者、そしてインターネットユーザーの立場から、下記の通り意見を述べます。

1. 著作権の権利制限規定の見直しについて

情報技術の進化によって、新しく魅力的なサービスの可能性が広がる中で、著作権の権利制限規定の見直しについて、新たな時代に対応できる柔軟な規定についての検討を含め、未来志向の議論が展開されることを要望します。

2. 著作権法第三十条第一項第一号について

本小委員会ではクラウドサーバーが著作権法第三十条第一項第一号(以下本条文)に該当するかどうかが議論され、小委員会の中ではいくつかの個別事例について該当しないことが確認されました。しかし本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっています。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望します。

3. クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要があります。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからです。来期に予定される対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを要望します。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考えます。特に私的録画に関しては、ダビング10との関係という視点を避けて通ることはできません。公共性のある地上波のテレビ放送に、メディアシフトが事実上不可能なDRMがかけられている現状について、その見直しも視野に入れて議論を進めることを要望します。

その際には総務省 [1] はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考えます。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからです。

以上

[1] 本小委員会の議論の中でも引用された総務省情報通信審議会の『「デジタル・コンテンツ流通の促進等」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に関する答申』では、対価還元の検討の際は「コピー制御方式などコンテンツ保護のあり方に加え、コンテンツの流通の促進、製作力の強化によるコンテンツ市場の拡大等、より幅広い観点」の議論も求められています。

Tags: