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プレスリリース

2016.02.23

文化庁に対し意見書『TPP批准にかかる著作権法改正についての要望』を提出しました

MIAUは、文化庁に対し意見書『TPP批准にかかる著作権法改正についての要望』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2016年2月19日

文化庁長官官房著作権課 御中

TPP批准にかかる著作権法改正についての要望

 
一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

文化庁によってまとめられた『環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)』(以下報告書案)に対して、以下の通り意見を述べます。

著作権侵害の非親告罪化について

著作権侵害の非親告罪化については、二次創作活動を中心に、その範囲の策定の議論が進んでいます。しかし非親告罪化される範囲は、報告書案の検討結果が二次創作活動以外においてもそのまま適用されることを明確にする必要があります。これは社会貢献活動や企業内利用における軽微な複製が、別件逮捕の便利な事由として使われることを防ぐためです。

アクセスコントロール回避規制について

報告書案によれば「今回の制度整備においては、著作権者等の利益の保護及び国民の情報アクセスの自由との均衡を図る必要があることに鑑み、権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為が広く例外規定の対象となり得るような制度設計とすることが適当である」とあり、この点が盛り込まれたことは大変評価できます。

アクセスコントロール回避規制は、国民の情報へのアクセスや表現の自由の毀損につながるおそれがあります。またアクセスコントロールを回避することは支分権侵害の該当行為ではなく、また表現の自由は経済的な自由に優越します。加えて経済的自由という観点からも、近年ではいわゆる「いじる自由」(Freedom To Tinker)がイノベーションの源泉であることが様々な研究から指摘されています。アクセスコントロールはいじる自由を阻害します。またアクセスコントロール回避規制は、新しい技術を制限するようなものであってはなりません。

ゆえに例外規定の策定にあたっては、権利者に不当な不利益を及ぼさない回避行為、特に下記に列挙する回避行為については、それが当然に可能となるような例外規定を広く設けることが必要です。

  • オープンソースソフトウェアなどを用いた情報アクセスのための回避行為
    • LinuxやVLC PlayerでのDVD/Blu-ray視聴
  • 視聴を目的とした複製のための回避行為
    • DLNAなどのネットワーク経由での視聴
    • スマートフォンやタブレットでの視聴
  • 引用や批評、二次創作を目的とした回避行為
    • テレビ放送、DVDやBlu-rayのキャプチャ
  • 機器やソフトウェアの安全性チェックを目的とした回避行為
  • ユーザーが自分の機器で自由なソフトウェアを動作させるための回避行為
    • jailbreakingやrootingのような管理者権限取得行為
  • 技術の互換性や相互運用性を保つための回避行為
  • 解除技術が提供されなくなったコンテンツやソフトウェアを利用するための回避行為
  • 不正告発のための回避行為

※各項目の詳細は別紙の通り(注:先に提出した「知的財産推進計画2016」の意見書と同様)

正当な著作物の利用をする消費者の利便性の向上は、ひいてはコンテンツ産業の成長に資することは間違いありません。インターネットにおける違法な著作物流通については、すでに違法アップロード行為と違法ダウンロード行為は刑事罰の対象となっており、海賊版流通対策としては、著作権侵害の非親告罪化が導入されることになっています。違法な著作物流通についてのエンフォースメントはこの数年で十分に強化されています。

コンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても、アクセスコントロールによって著作物を利用することができない状況を解決する必要があります。また、技術進歩は急速であり、自動車や家電など、従来はそう見なされていなかった機器でもコンピュータ化、ネットワーク化、ブラックボックス化が進んでいます。また技術革新に伴って、コンテンツの新たな用途や利用形態が開拓されることも想像に難くありません。これらに伴い、アクセスコントロール回避の新たな形態が求められるようになる可能性は非常に高いと考えられます。その上では例外規定を制定する上では、個別規定ではなく、包括的な一般規定を定めることが適当です。

米国では2015年10月27日に著作権法が改正され、前項で述べた正当なアクセスコントロール回避行為について、権利制限が制定されました。TPP批准のための著作権法改正においては、加盟国の法改正にも注視することが重要です。

権利制限の一般規定(フェアユース)の導入について

TPP批准にかかる著作権法改正で導入が議論されている項目は、すべて著作権の保護強化に繋がるものであり、著作物の利用とのバランスに関する議論がされていません。ついては保護と利用のバランスを取るうえでは、著作物の利用促進にかかる条項の導入が必要です。

その上では公正で市場で原著作物に与える影響の少ない利用に関する権利制限の一般規定(フェアユース)をTPP著作権条項の国内立法までに導入すべきです。またフェアユース規定の導入にあたっては、単なる産業振興策ではなく、言論の自由を担保し、教育やエンタテインメント、ユーザーによる技術検証・改善に資するものを目指すべきです。

以上
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