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文化庁文化審議会「法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集」に意見を提出しました

MIAUは、文化庁文化審議会の「法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集」に、下記の意見書を2017年3月29日に提出いたしました。

内容は以下の通りです。

法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集 提出意見

一般社団法人インターネットユーザー協会

第1章 新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等について

「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方」の検討については、従来から著作権法制の議論に関わるステークホルダーからだけでなく、広くニーズを募集し、それらを整理するところから議論が始まったこと、そしてそのニーズ一覧が報告書に掲載されたことはこれまでになかった取り組みであり、評価されるべきである。今後は知的財産推進本部による年一回の意見募集に限らず、文化庁におけるその他の著作権に議論についても、利用者の意見を吸い上げる形での議論が必要である。

本中間まとめでは、一般的な権利制限規定の創設は見送られているが、当協会は米国型の4要件のような、公正性を規範とする一般的な権利制限規定の創設を引き続き求める。「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方」の検討に際して行われた「著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する調査研究」(以下調査研究とする)では、当協会にヒアリングの機会が設けられた。当協会の柔軟な権利制限規定の導入に関する意見は、そのヒアリングメモとして公表されるものから変わらない。

本中間まとめでは、権利制限規定として優先的に検討するニーズとして、「所在検索サービス」「情報分析サービス」「システムのバックエンドにおける複製」「翻訳サービス」「リバース・エンジニアリング」「その他CPSサービス」を取り上げられているが、これらについて早急に権利制限規定の導入を求める。そしてこれらの権利制限規定を導入する際は、必要以上の範囲限定を設けない、一般的な条項とすることが求められる。特に「翻訳サービス」のための権利制限規定の導入に対しては、対象著作物の範囲が少なくとも公衆に無償で提供又は提示されている著作物に限定することが前提とされているならば、権利者の利益を不当に害する範囲も限定的であると考えられる。したがって過剰に権利者保護を優先し、権利制限の範囲がせまくならないよう慎重に検討されるべきである。機械学習を用いた翻訳技術の恩恵を、外国語話者だけでなく、日本語話者も受けられる制度にすべきだ。また「リバース・エンジニアリング」については、事業者だけでなく、利用者が自身で使うハードウェアやソフトウェアを解析したり、その上で自由なソフトウェアを動かしたり、自身で修理したりすることができる「いじる自由(Freedom of Tinker)」を阻害しない制度設計が求められる。

本中間まとめでは、『「柔軟性のある権利制限規定」の導入により実際に「公正な利用」が促進される効果があるか否かを考える上で、過去に柔軟性のある権利制限規定がなかったために「公正な利用」が阻害された事実があるか否かや、具体的にどのような影響があったのかを分析することも有益である』として、国産の検索エンジンの事例をあげている。ここにウェブサイトのアーカイビングサービスの検討を加えることを要望する。我が国には国立国会書図書館が進める「インターネット資料収集保存事業(WARP)」があるが、WARPにおいては民間のサイトはオプトイン型でアーカイブされている。対して米国の非営利法人「Internet Archive」が運営する「Wayback Machine」は民間のサイトについてもオプトアウト型で運営されている。国立国会図書館はWayback Machineが大規模にウェブアーカイブを構築できる理由として、米国のフェアユース規定を根拠として紹介している。調査研究の中でも国産検索エンジン「千里眼」についての調査は「Wayback Machine」が収集したアーカイブを用いて行われている事実もある(調査研究159ページ、脚注188参照)。我が国のウェブコンテンツのアーカイブを米国の非営利団体に任せざるを得ない現状は、フェアユースの有無が問われている重要な事例である。Internet Archiveは「デジタル形式で保存された歴史資料を、研究者や歴史学者ひいては全世界の人々が将来にわたって利用できるようインターネット上に図書館を作る」(国立国会図書館「Internet Archive“Wayback Machine” | 世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」 より引用)という公正な目的のために運営されている。我が国のコンテンツを我が国で保存・活用し、後世に伝えていくためにも、日本版Wayback Machineが必要と考えるが、それを実現するためには何らかの権利制限が必要とされる。そして今後保存すべきコンテンツやその利用のされ方は現時点では予測できないものも生まれる可能性があるから、そのためにも個別の権利制限規定ではなく、将来のニーズを見据えた一般的な権利制限の創設が望まれる。

本中間まとめでは、個人利用者の著作権法に対する馴染みや理解の低さが指摘されているが、一般的に法律に関する理解は大学などで専門教育を受けない限り難しく、これは著作権法に特出した事象ではないと考える。理解の低さの例として「公衆送信」と「演奏」の混同が指摘されているが、著作権法における「演奏」の意味は一般的な辞書的な意味からは想起されにくい行為も含んでおり、積極的に学ばなければその区別は難しい。また著作権法第47条の一連の条文に代表されるような、複雑な権利制限規定の条文が著作権法の理解を難しくしている要因の一つとも言える。つまり著作権法に対する無理解や誤解は現状でも生じている問題であり、それは一般的な権利制限規定の導入を妨げる理由の一つにはなりえない。加えていえば、個別具体的な権利制限規定を増やし続けるのではなく、現状の権利制限規定を整理し、その上で今後の情報環境を見据えた一般的な権利制限規定を設ける方が著作権法に対する理解度の向上に資する可能性もある。

本中間まとめがまとめられるまでの間に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)をめぐる一連の動向は大きく変化した。ニーズ募集に寄せられた意見の中にあるように、著作権保護期間の延長や著作権侵害の非親告罪化、法定賠償金制度の導入など、TPPによって著作権の強化を進める条項が我が国の著作権法に取り込まれる可能性は未だ消えていない。またRCEP(東アジア包括的経済連携)やTiSA(新サービス貿易協定)などの現在交渉中の国際通商協定においても著作権の強化について議論がなされているようだ。当協会は国際通商協定における著作権の強化に反対の立場であるが、政府は米国を除いた11ヶ国での「TPP11」での発効を目指している。これらの国際通商協定の交渉は非公開であり、どのような形で今後議論が進むか不透明であるが、そのような外的要因による著作権の強化に対して、保護と利用のバランスをとる意味で、セーフハーバーとしての一般的な権利制限導入の議論も必要であると考える。

本中間まとめで「優先的に検討することとしたニーズ以外のニーズ」として分類された分野についても、早急に検討が必要なものが多い。特に「パロディ・二次創作としての著作物利用」については関心が高く、表現の自由とも関わる重要な論点である。また「メディア変換サービス」については技術的に可能となっている著作物の利用態様が著作権による制限で不可能となっている典型的な例だ。これらについては今後の検討に委ねられることになっているが、その際は個別の権利制限規定ではなく、一般的な権利制限規定として整備されることを強く望む。

第2章 教育の情報化の推進等について

現時点でデジタル教科書が紙の教科書と同一内容で、かつ補助教材相当としている主たる原因は、デジタル教科書版の教科書検定制度を確立できなかったという点が大きいと思われる。2020年の全面導入を目指すには、まとめの通りの導入方法が妥当かと思われるが、デジタルコンテンツは改訂が容易である、年度に関わりなく逐次改訂が可能であるといったメリットもある。よりデジタル教科書のメリットを活かすためにも、デジタル教科書版の検定制度や、紙の教科書との併用ではなく独立した教科書化への検討も引き続き行なうべきである。

デジタル教科書に含まれる著作物の利用に関して、著作権法第33条内で処理するという方向性については、妥当である。まとめにもあるように、複製権、譲渡権、公衆送信権などの手当てもあわせて必要かと思われる。

著作権法第33条2項に関わる補償金請求権については、現時点ではデジタル教科書は紙の教科書に対して完全に同一であることが求められており、単にメディアの形が変わっただけという見方もでできる。現時点でも補償金の額は、教科書の出版部数と関わりなく一定であることから、デジタル教科書掲載分が増えるからといって、補償金額も増えるという理屈にはなり得ない。著作者と出版社との契約の中で、紙とデジタルの包括契約という形でまとめる事も可能であり、特段にデジタル教科書掲載分の補償金請求権を設定する必要はないと考えられる。このあたりはすでに一般の書籍では電子出版契約として先例があるところでもあり、民間同士の契約に委ねるべきと考える。

第3章 障害者の情報アクセス機会の充実について

「おわりに」の章にある通り、本中間まとめでは、著作権法第37条第3項における受益者の範囲について、身体障害等により読字に支障がある者を加えることや、同項により認められる著作物の利用行為にメール送信等を含めること、ボランティアグループ等が同項に基づき複製等を行うことができる主体となり得るようにすることとすることが提言されており、これらについて早急に権利制限規定の拡充が求められる。

第4章 著作物等のアーカイブの利活用促進について

「おわりに」の章にある通り、本中間まとめでは、国立国会図書館による絶版等資料の送信サービスについて,送信先の施設に外国の図書館等を追加するための制度改正を行うことが必要である。また、美術の著作物又は写真の著作物を原作品により展示する者が,電子機器を用いて観覧者にこれら著作物の解説又は紹介を行うことや,サムネイル画像を用いて展示作品に係る情報を一般公衆に提供することを,権利制限規定の対象とすることが提言されており、これらについて早急に権利制限規定の拡充が求められる。

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