2016年度東京都知事選に向けた「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」実施のお知らせ

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は7月31日(日)に行われる東京都知事選挙に向けて、出馬する候補者に情報通信政策やコンテンツに対する表現規制に対するスタンスを問う「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」を実施することをお知らせします。本アンケートの結果は各立候補予定者から回答を受領後、ウェブサイトに掲載いたします。大手メディアでは話題になりにくい論点について、各候補者のスタンスを確認することを目的としております。みなさまの投票の際の参考の一つとなれば幸いです。

候補者とアンケート送付状況(都選管発表順、敬称略、2015.7.15現在)

  1. 高橋しょうご(電子メール送付済)
    谷山ゆうじろう(電子メール送付済)
    桜井誠(FAX送付済)
    鳥越俊太郎(FAX送付済)
    増田ひろや(FAX送付済)
    マック赤坂(郵送済)
    山口敏夫(FAX送付済)
    やまなかまさあき(郵送済)
    後藤輝樹(選挙事務所不明のため送付できず)
    岸本雅吉(郵送済)
    小池ゆりこ(FAX送付済)
    上杉隆(郵送済)
    七海ひろこ(FAX送付済)
    中川ちょうぞう(郵送済)
    せきくち安弘(選挙事務所不明のため送付できず)
    立花孝志(回答しない旨電話で表明)
    宮崎正弘(FAX送付済)
    今尾貞夫(FAX送付済)
    望月義彦(選挙事務所不明のため送付できず)
    武井直子(選挙事務所不明のため送付できず)
    ないとうひさお(選挙事務所不明のため送付できず)

公開スケジュール

回答締切:7/25(月)いっぱい
回答公開:7/26(火)

※締切後に回答を受領したものは随時公開してまいります。

都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート

インターネット利用に関する施策について

  1. インターネットには、多くの有益な側面と共に有害な側面もあると考えられます。都民のインターネットの利用に対してはどういった政策を重視する必要があると思いますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 情報リテラシー教育を進めて、利用者の問題対処能力を高める。
    2. 事業者による安全・安心のための自主的取り組みを促進させる。
    3. 行政主導の安全・安心対策を促進する。
    4. 選択理由(              )
  2. 青少年が利用するインターネット端末に対する施策について
    現在携帯電話やスマートフォンだけでなく、携帯ゲーム機やテレビ、音楽プレーヤーなど、様々な機器でインターネットのアクセスが可能になっています。これらの機器を青少年が利用するにあたり、どのような施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 機器メーカーに対してフィルタリング搭載義務などの規制を加えるべきである。
    2. ネットサービス事業者が行なう自主的な取り組みを推進すべきである。
    3. 未成年者への販売に対して機器販売者に何らかの規制を加えるべきである。
    4. 学校教育の一環として、ネットリテラシーに対する教育を行うべきである。
    5. 各家庭へのネットリテラシー教育支援で対応すべきである。
    6. 選択理由(              )
  3. SNSやメッセージアプリケーションを巡るトラブルについて
    携帯電話やインターネットが普及したことで、TwitterやFacebookなどのSNSやLINEなどのメッセージングアプリケーションによるコミュニケーションサービスが新しいライフスタイルや価値を生み出している一方、青少年を中心にトラブルに巻き込まれる事例も増えています。東京都としてどのような施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 携帯電話やインターネット接続の利用そのものに、新たな制限が必要である。
    2. 幾つかのウェブサイトの利用には、新たな制限が必要である。
    3. 事業者による、新たな啓発活動が必要である。
    4. 学校による、新たな啓発活動が必要である。
    5. 家庭での取り組みを促進するために、新たな啓発活動が必要である。
    6. 選択理由(              )

ゲーム・漫画・アニメ等の規制について

  1. ゲームの規制について
    ゲームには、教育効果が期待される場面もある一方で、青少年に有害な影響を与えており、規制を強化すべきであるという意見があります。東京都としてどのように取り組むことが望ましいと思いますか。最も近いものをお選びください。
    1. 現状は適切な区分が行われているとは言えず、規制強化する必要がある。
    2. ゲームの影響を科学的に判断するために、さらなる調査が必要である。
    3. 現在の表現区分・販売規制で適切である。
    4. 選択理由(              )
  2. コンテンツに対する規制の主体について
    ゲームや漫画、アニメ等に対する内容・表現の規制は、青少年へ悪影響があるから、一定の規制が必要だという意見がある一方、販売時のゾーニングや業界団体のレーティングが機能しており、国や自治体が立ち入るべきでないという意見があります。この点についてはどうお考えでしょうか? 最も近いものをお選びください。
    1. 国レベル、法律レベルで議論し、強制力のあるしっかりした規制を導入すべきである。
    2. 自治体レベルで、地域の実情にあわせた販売規制を導入すべきである。
    3. 個々の企業や業界団体と連携し、民間の自主的な取り組みを支援するに留めるべきである。
    4. 本来、個人や家庭の問題であり、行政はあくまでこれらのサポートに徹するべきである。
    5. 選択理由(              )

都政におけるICT利活用について

  1. 都民の声を政策に反映させるために、パブリックコメントや都政モニター、ウェブサイトからの「都民の声」募集などといった取り組みが行われていますが、もし不足があるとしたら、どういった新しい施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. パブリックコメント制度の位置付けを明確化し、さらなる拡充を図るべきである。
    2. 審議会の委員構成を公募とする等、都民の声をこまめに政策決定過程に反映させるべきである。
    3. インターネットを使った政策募集、議論の場の提供といった、新たな制度を導入すべきである。
    4. 現行の制度で十分である。
    5. 選択理由(              )
  2. 都政においては表現に係る規制やICTの利活用に関する施策も議論されていますが、多くの場合インターネット利用者の声が反映されていない状況にあります。ICTや表現に係る施策を議論する際、その議論にインターネットユーザー代表の出席は必要だと思いますか?
    1. インターネットユーザー代表を議論に参加させるべきである 。
    2. インターネットユーザー代表に限らず、従来の消費者団体代表者の出席のみでよい 。
    3. これまでのパブリックコメント制度に代表される意見聴取で十分である 。
    4. 選択理由(              )
  3. 国会のネット中継や放送のアーカイブなど、ICTと映像を利用した生の情報発信が盛んに行われるようになってきています。東京都では今後、このような取り組みをどのような形で推進すべきだとお考えですか? 最も近いものをお選びください。
    1. ニコニコ動画やAbema TV、LINE LIVEなど民間のサービスを活用した方策を取り入れたい。
    2. 衆議院TVのような都独自のサイトを作って、生中継やアーカイブ公開を実施したい。
    3. 地上波やケーブルテレビといった既存メディアでの情報発信をより重視したい。
    4. 現状の情報発信で十分である。
    5. 選択理由(              )
  4. 近年国内外の都市で、行政の有する様々な情報をデジタル化し、積極的に公開(オープンデータ化)したうえで、防災や交通など都市が抱える難問に対応する公共情報サービス等を開発するコンテストを開き、民間のアイディアを募って新たな解決手法を探る例があります。国内では横浜市や千葉市、海外ではニューヨーク市などが先駆的な都市として知られています。このような施策を東京都でもより一層取り入れるべきだと思いますか?
    1. 積極的に行政が持つ情報を公開し、民間とのコラボレーションを推進すべきである。
    2. 公開をする前に、行政が持つ情報を自治体自身でもっと積極的に活用することを推進すべきである。
    3. 東京は民間サービスも充実しているため現状で十分であり、行政によるこれ以上積極的な情報提供は必要ない。
    4. 選択理由(              )
  5. 今回の都知事選は、舛添前都知事の政治資金、そして都の予算の使途使徒が問われたことによって行われることになりました。ついては都知事及び都の予算使用の公開について、どのように考えますか?一番近いものをお答えください。
    1. 都知事の予算使用についてはより詳細な情報を、都民やプログラムがより分析しやすい形でウェブサイトで公開すべき。
    2. 都知事の予算使用についてはより詳細な情報を記録し、情報公開請求に応じて公開すべき。
    3. 都の予算使用の透明性は十分である。
    4. 選択理由(              )
  6. 文部科学省の有識者会議「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」では、義務教育において2020年からのデジタル教科書の導入を進めることをまとめました。一方で義務教育ではない高等学校においては現在でもデジタル教科書の導入は可能です。このような状況をから、東京都としてどのような施策を推進しますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 都知事として積極的に推進し、都立の高等学校においては前倒しで導入するようリードしたい。
    2. 都知事として積極的に推進するが、都立の高等学校への導入は各高等学校に任せたい。
    3. デジタル教科書の導入については、各教育委員会に任せたい
    4. デジタル教科書の導入は推進しない
    5. 選択理由(              )
  7. IoTの発展などとともに、多くの監視カメラが街中に設置され、それらの監視カメラがインターネットに接続されるようになりました。監視カメラは防犯や犯罪捜査への活用などの利点はありますが、市民のプライバシーを毀損する短所もあります。監視カメラの設置と撮影については、どのような考えをお持ちですか? 最も近いものをお選びください。
    1. プライバシー保護のため、監視カメラの設置場所については告知が必要である。
    2. 犯罪抑止・治安維持のためには、監視カメラ設置場所の公開は望ましくない。
    3. 選択理由(              )
  8. 国は産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るため、自治体からの要請によって国家戦略特区を定めています。現在日本ではインターネットエコノミーを推進する観点から、下記のようなビジネスについて実験を行う特区が求められています。下記のうち、東京都として導入すべき特区をお選びください。また下記にないもので、特区として進めるべきものがあれば選択理由欄にお書きください。
    1. ドローン特区(宅配・撮影など)
    2. 自動運転車特区(自動運転タクシーなど)
    3. 民泊特区(Airbnbなど)
    4. ライドシェア特区(Uberなど)
    5. 選択理由(              )

東京オリンピック・パラリンピック開催について

  1. 東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、多くの国際会議場や展示施設、ホールが改装され、都内でのイベント開催が難しくなっている現状があります。またオリンピック・パラリンピックの開催期間及び準備期間にも、コミックマーケットなどの市民の創作活動イベントや、MICEの実施が難しい状況になることが予想されています。このような状況を鑑み、東京都としてどのような施策を進めていきますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 都有地や民間施設の転用などに最大限取り組む
    2. 周辺の県の施設へ協力を仰ぎ、市民活動に支障がないよう努力する
    3. 国際的イベントであることを考えれば、一時的に市民活動が抑制されるのは仕方がない
    4. 選択理由(              )
  2. 東京都には多くの外国人観光客が訪れています。総務省と観光庁が2016年1月に発表した「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」によれば、外国人観光客の46.6%が滞在中に困ったこととして「無料公衆無線LAN環境」を挙げていました。公衆無線LANには事業者が提供するものと、福岡市のように自治体が推進しているものがあります。2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、公衆無線LANについて東京都としてはどのような施策が必要だと考えていますか?最も近いものをお選びください。
    1. 東京都がリードして、都の予算での無料公衆無線LANの整備を進めたい
    2. 東京都がリードして、民間事業者が無料公衆無線LANの整備を進められるよう施策を進めたい
    3. 公衆無線LANについては民間事業者に任せるべき
    4. 特に施策は必要ない
    5. 選択理由(              )

ICT政策全般について

上記以外で、東京都として取り組むべきと考えるICTを活用した新しい施策をお考えでしたら、下記にご記載ください。またインターネットユーザーへのメッセージなどございましたら合わせてご記載ください。

(自由回答)

著作者 : MIAU
最終更新日 : 2016-07-18 20:41:23

文化庁に対し意見書『TPP批准にかかる著作権法改正についての要望』を提出しました

MIAUは、文化庁に対し意見書『TPP批准にかかる著作権法改正についての要望』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2016年2月19日

文化庁長官官房著作権課 御中

TPP批准にかかる著作権法改正についての要望

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

文化庁によってまとめられた『環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)』(以下報告書案)に対して、以下の通り意見を述べます。

著作権侵害の非親告罪化について

著作権侵害の非親告罪化については、二次創作活動を中心に、その範囲の策定の議論が進んでいます。しかし非親告罪化される範囲は、報告書案の検討結果が二次創作活動以外においてもそのまま適用されることを明確にする必要があります。これは社会貢献活動や企業内利用における軽微な複製が、別件逮捕の便利な事由として使われることを防ぐためです。

アクセスコントロール回避規制について

報告書案によれば「今回の制度整備においては、著作権者等の利益の保護及び国民の情報アクセスの自由との均衡を図る必要があることに鑑み、権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為が広く例外規定の対象となり得るような制度設計とすることが適当である」とあり、この点が盛り込まれたことは大変評価できます。

アクセスコントロール回避規制は、国民の情報へのアクセスや表現の自由の毀損につながるおそれがあります。またアクセスコントロールを回避することは支分権侵害の該当行為ではなく、また表現の自由は経済的な自由に優越します。加えて経済的自由という観点からも、近年ではいわゆる「いじる自由」(Freedom To Tinker)がイノベーションの源泉であることが様々な研究から指摘されています。アクセスコントロールはいじる自由を阻害します。またアクセスコントロール回避規制は、新しい技術を制限するようなものであってはなりません。

ゆえに例外規定の策定にあたっては、権利者に不当な不利益を及ぼさない回避行為、特に下記に列挙する回避行為については、それが当然に可能となるような例外規定を広く設けることが必要です。

  • オープンソースソフトウェアなどを用いた情報アクセスのための回避行為
    • LinuxやVLC PlayerでのDVD/Blu-ray視聴
  • 視聴を目的とした複製のための回避行為
    • DLNAなどのネットワーク経由での視聴
    • スマートフォンやタブレットでの視聴
  • 引用や批評、二次創作を目的とした回避行為
    • テレビ放送、DVDやBlu-rayのキャプチャ
  • 機器やソフトウェアの安全性チェックを目的とした回避行為
  • ユーザーが自分の機器で自由なソフトウェアを動作させるための回避行為
    • jailbreakingやrootingのような管理者権限取得行為
  • 技術の互換性や相互運用性を保つための回避行為
  • 解除技術が提供されなくなったコンテンツやソフトウェアを利用するための回避行為
  • 不正告発のための回避行為

※各項目の詳細は別紙の通り(注:先に提出した「知的財産推進計画2016」の意見書と同様)

正当な著作物の利用をする消費者の利便性の向上は、ひいてはコンテンツ産業の成長に資することは間違いありません。インターネットにおける違法な著作物流通については、すでに違法アップロード行為と違法ダウンロード行為は刑事罰の対象となっており、海賊版流通対策としては、著作権侵害の非親告罪化が導入されることになっています。違法な著作物流通についてのエンフォースメントはこの数年で十分に強化されています。

コンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても、アクセスコントロールによって著作物を利用することができない状況を解決する必要があります。また、技術進歩は急速であり、自動車や家電など、従来はそう見なされていなかった機器でもコンピュータ化、ネットワーク化、ブラックボックス化が進んでいます。また技術革新に伴って、コンテンツの新たな用途や利用形態が開拓されることも想像に難くありません。これらに伴い、アクセスコントロール回避の新たな形態が求められるようになる可能性は非常に高いと考えられます。その上では例外規定を制定する上では、個別規定ではなく、包括的な一般規定を定めることが適当です。

米国では2015年10月27日に著作権法が改正され、前項で述べた正当なアクセスコントロール回避行為について、権利制限が制定されました。TPP批准のための著作権法改正においては、加盟国の法改正にも注視することが重要です。

権利制限の一般規定(フェアユース)の導入について

TPP批准にかかる著作権法改正で導入が議論されている項目は、すべて著作権の保護強化に繋がるものであり、著作物の利用とのバランスに関する議論がされていません。ついては保護と利用のバランスを取るうえでは、著作物の利用促進にかかる条項の導入が必要です。

その上では公正で市場で原著作物に与える影響の少ない利用に関する権利制限の一般規定(フェアユース)をTPP著作権条項の国内立法までに導入すべきです。またフェアユース規定の導入にあたっては、単なる産業振興策ではなく、言論の自由を担保し、教育やエンタテインメント、ユーザーによる技術検証・改善に資するものを目指すべきです。

以上
著作者 :
最終更新日 : 2016-02-24 16:29:24

4K・8K 放送における「コピー禁止」の運用にかかる意見書を提出しました

MIAUは、主婦連合会と共同で、一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)に対し意見書『4K・8K放送における「コピー禁止」の運用について』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2016年2月3日

一般社団法人次世代放送推進フォーラム
 理事長 須藤 修 様

4K・8K放送における「コピー禁止」の運用について

主婦連合会
一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

謹啓 益々御清祥のこととお慶び申し上げます。

2015年12月25日に貴フォーラムのウェブサイト上で公表された次世代放送推進フォーラム 技術仕様高度広帯域衛星デジタル放送運用規定」(TR-0004)によりますと、4K・8K放送のコンテンツ保護に関する運用規定(表4-1)として、「月極め等有料放送」及び「コンテンツ保護を伴う無料番組」の録画自体を禁止する項目において「コピー禁止」が「T.B.D」とされていることを確認いたしました。これは一般的な4K・8K番組の録画禁止が検討されていることを示しています。

本来、テレビ番組の家庭内録画は適法な行為ですが、「コピー禁止」が運用されることになれば、放送中にテレビの前にいなければ視聴できないことになってしまいます。

「コピー禁止」は、不正利用を行うごく一部の悪質なユーザー対策としても有効でないばかりか、大多数の善良な一般視聴者が巻き添えとなって不便を強いられることになり、許されるものではありません。

また、独占禁止法の専門家によれば、特定の事業者間で共同して一般視聴者の録画を禁止できるよう合意し、互いに制限等することは、独占禁止法2条6項の不当な取引制限(カルテル)に該当するおそれがあるとのことです。また、貴フォーラムのような団体内部でカルテルの合議を行うことは、同じく独占禁止法で定める事業者団体の禁止行為(独占禁止法8条1号等)にも該当するおそれがあるとのことです。

以上をふまえ、無料放送および公共放送における4K・8K放送においても、現在の地上デジタル放送等と同じように、「コピー禁止」は「運用不可」としていただくことを、強く要望します。

無料放送および公共放送における4K・8K放送は国民の資産である電波を用いて行われる公共的なサービスであり、私ども一般消費者は大きな影響を受けます。消費者の利便性に関与する技術仕様の検討については、一般消費者を代表する団体を含む適切なメンバーによる、開かれた議論が必要であることを指摘させていただきます。

謹白
著作者 :
最終更新日 : 2016-02-05 16:38:49

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2016」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2016」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2016年1月28日

「知的財産推進計画2016」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

【要旨】

国内法改正の議論の上では、TPP協定交渉にかかる交渉経緯が重要。著作権保護期間の延長はTPP協定の発効と同時とすること。著作権登録制度を導入し、登録作品のみ延長の対象とすること。非親告罪化は複製権侵害に止め、海賊版対策に限定した制度設計とすること。アクセスコントロール回避規制には情報社会に重要な影響があるため、例外規定を十分に検討すること。批准にかかる法改正と同時にフェアユース規定の導入は必須。

【本文】

2015年10月に妥結したとされるTPP協定交渉は、我が国の知的財産制度、特に消費者・インターネットユーザーの立場からみた著作権制度に大きな不都合を与える内容となっている。一連の交渉が最後まで秘密裏に実施されたことは大変遺憾であり、今後の条約交渉において同じ轍を踏まないよう求める。また交渉が妥結したにも関わらず、条文の公開は遅れ、日本語の抄訳も2015年12月末にようやく公開された。しかし未だ交渉の経緯などは全く公開されていない。文化審議会での議論においても、その交渉経緯は非常に重要な資料となる。TPP交渉には交渉各国との間にNDAが結ばれているとあるが、まずはそのNDAがどのようなものなのかを公開することが重要である。

下記にTPP協定の知的財産章の著作権制度に関わる分野のうち、懸念される点を述べる。

著作権保護期間延長

孤児作品(Orphan Works)の保存と活用に関してはすでにさまざまな審議会や報告書で問題提起されており、その解決が議論されているところである。しかしTPP協定に盛り込まれている著作権保護期間の延長は、この孤児作品を増やす最も大きな要因だ。

下記の理由から、そもそもわが国は著作権保護期間の延長をすべきでない。しかしどうしても延長が不可避であるとされる場合は、著作権の保護期間を延長するのであれば、その際の弊害として指摘される孤児著作物の問題等も解決できるように、制度を構築するべきである。例えば米国では登録制度をあわせて運用し、登録を訴訟要件とすることによって、孤児著作物の増加を防ぐことにつなげている。この制度を参考として、現行の著作権保護期間以降も保護を必要とするときは、登録を要件とすることで延長が必要な著作物が保護されつつ、孤児著作物が増加し ないようにすることができる。なお、登録や更新を忘れるような場合は、「権利の上に眠るものは保護に値せず」という法格言に則った対応で良いものと考える。

また著作権保護期間の延長の開始は、TPP協定の発効と同時に行われるべきだ。もし発効に至るまでの法改正が必須ということであれば、法文の中で、保護期間が70年となる施行日をTPP協定発効の日とすべきである。

また戦時加算解消については、現在存在するとされる各国との交換公文が単に「政府が民間に加算分返上を働きかける」という程度の内容だとすれば、実効性は極めて不十分である。各国に戦時加算を本気で解消させるためにも、保護期間延長の導入は戦時加算解消の確約後とすべきである。

【参考:著作権保護期間延長に反対する理由】

著作権の保護期間が早く終われば、その著作物を用いて二次的著作物を制作したり、その作品を上演したりする際の許諾や著作権使用料が不要となるため、二次的著作物の制作や作品の上演が大きく加速される。結果として近代や現代の作品を演奏・上演する楽団や劇団などが増加し、著作物の漫画化やノベライズ、パロディといった新たな創作物の出現が活性化される。

現代の著作物においては非常の多くの人がその制作に関わっており、制作に関わった関係者にも著作隣接権が付与される。その著作物を保存・活用しようとした場合、著作隣接権者を含めたすべての著作者に許諾を取る必要があるが、数年前に制作された著作物であっても著作者が不明という理由で許諾を取ることが不可能なケースも発生している。より高い創作性をもった環境を維持するためには、むしろ著作権保護期間は短縮すべきであり、さらには著作権を放棄し、パブリックドメイン化する仕組みも必要である。

さらに著作権が切れた著作物を利用することで、新たなビジネスが生まれている。例えば著作権が切れた書籍のデジタル化を進めている「青空文庫」のデータは数多くの電子書籍端末などに収録されており、日本における電子書籍の普及に役立っている。しかし著作権保護期間の延長によって、このような創造のサイクルが大きな打撃を受け、新たなビジネスチャンスを失うことになる。

著作権侵害の一部非親告罪化

下記の理由から、そもそもわが国は著作権侵害を非親告罪とすべきではない。しかしどうしても変更が不可避であるとされる場合は、悪質な海賊版の取り締まりに限定した効力になるような制度設計とすべきである。具体的には出版権同様に「原作のまま」複製する行為のみ、つまり複製権侵害に限定し、さらに原作の市場収益を重大に害する、大規模かつ商業目的の海賊版取り締まりにのみ効力を認めるものとすべきだ。その際、著作物の登録制度を活用することによって、この対象を明確にすることも可能だ。また著作権侵害を当局が取り締まる際は、その原作の著作者にその作品が原作のまま複製されているかどうかを必ず確認する手続きを制度に盛り込むべきだ。

【参考:著作権侵害の非親告罪化に反対する理由】

わが国には二次的著作物やパロディに関する法制度が存在せず、司法では二次的著作物やパロディは著作権侵害と判断される。しかし現実には二次的著作物やパロディによる作品が数多く存在しており、今やそれらは日本の文化の一翼を担っている。そしてこのわが国独自の個性豊かな文化は世界に向け発信され、世界から共感を得ている。これは知的財産戦略本部が策定した「知的財産戦略2013」の中にも盛り込まれている「クール・ジャパン」の源泉となっている。このような文化が熟成されたのは二次的著作物やパロディについて、その制作者と原著作者との間に信頼関係があり、著作者が黙認していたことに由来する。著作権侵害が非親告罪となれば、このような信頼関係に関わらずあらゆる二次的著作物やパロディが刑事告訴の対象となり、パロディ法制などのないわが国においては「クール・ジャパン」の源泉となる文化が崩壊する結果となり、国益を害する。

また著作権侵害が非親告罪となることで相対的に捜査機関の権力が増大し、これまで社会的に容認されていたような軽微な著作権侵害においても、著作権侵害を理由に捜査機関が逮捕することができるようになる。そもそもインターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは、技術的・外形的に判断できないという根本的な問題もあり、これは別件逮捕などの違法な捜査を助長するおそれがある。

アクセスコントロール回避規制

わが国では2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避しての複製行為が違法となった。これに対してTPP協定にはアクセスコントロールを回避する行為自体を規制する条文が導入されている。しかし無条件のアクセスコントロール回避規制は、ユーザーによるコンテンツのアーカイブを不可能とし、国民の正当なコンテンツ利活用を妨げる。またアクセスコントロール回避規制はわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なっており、それに対する手当は一切なされていない。その具体例を下記に挙げる。

1. 引用や批評を可能とするため

引用や批評を正しく行える環境は、言論の自由を担保する上で非常に重要だ。またリミックスやパロディについても同様で、各国の著作権法制ではそのような利用を可能とする権利制限規定が導入されている。しかし現状では、アクセスコントロールがかかったテレビ番組やDVD/Blu-rayなどを使い、そのような行為を行うことができない。テレビで放送された内容を引用し、評論する行為がおこなわれなければ、放送内容の正当性などについて、広い知見で検証することは不可能だ。

書籍や新聞、論文といった文字情報については、引用の有用性は広く理解され、これによる論考の深まりは、国民の重要な利益となる。現在インターネット上に流通する多くの情報が、文字から映像へとシフトしつつある現状を踏まえると、映像情報についても、引用の有用性を拡張すべき時期に来たと考える。

2. 機器やソフトウェアの安全性のチェックのため

DRMやセキュリティの確保を理由に、利用者にとって不利益となる悪質なソフトウェアが事業者より提供されるケースが散見される。

DRMについてはソニーBMG製のCDにrootkitと呼ばれる、ユーザーに知られることなくコンピュータに侵入できるマルウェアが意図的に組み込まれたことがある。

例)ソニーが音楽CDに組み込んだ“Rootkit”とは何者か? - @IT
http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/insiderseye/20051109rootkit/rootkit_01.html

またスマートフォンのファームウェアやプレインストールアプリケーションにバックドアやスパイウェアが仕込まれている事件も近年繰り返し話題になっている。

例) 人気のSamsungデバイスにバックドアが? ー Kaspersky Lab Daily
https://blog.kaspersky.co.jp/popular-samsung-devices-allegedly-contain-backdoor/2989/

例) 中国製スマホにスパイウェアがプリインストールされていることが発見される - Gigazine
http://gigazine.net/news/20140618-star-n9500-peinstall-spyware/

例) 公式Androidファームウェアに潜む危険なトロイの木馬 - 株式会社Doctor Web Pacific
http://news.drweb.co.jp/show/?i=921&lng=ja&c=2

また、広く用いられているアプリケーション開発キット(SDK)を通じて多数の複数の開発元のアプリケーションにバックドアが仕込まれた事件も最近大きく話題となっている。

例)トレンドマイクロ、BaiduのSDK「Moplus」の脆弱性について注意喚起 - MdN Design Interactive - デザインとグラフィックの総合情報サイト
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/43061/

また機械の動作を偽って、性能以上のものに見せかける企業の実態も明らかとなった。

例)フォルクスワーゲンのエンジニア、二酸化炭素排出量に関する不正行為を認める | Autoblog日本版
http://www.huffingtonpost.jp/autoblog-japan/vw-scandal_b_8548986.html

例)サムスンGalaxy S4、特定ベンチマークだけ最高性能を出す「最適化」が発覚 - Engadget Japanese
http://japanese.engadget.com/2013/07/30/galaxy-s4/

このような事例の多くは、情報セキュリティ企業だけでなく、市井のエンジニアたちが検証し、インターネット上でその事実を報告したことで明るみに出るケースがほとんどである。このような検証には、ソフトウェアにかけられた暗号や難読化を解析して、実際にどのような動作が行われているかを細かくチェックすることが必要となる。

ユーザーが正当に手に入れた機器で、どのようなプログラムがどのように動いているかを把握することは、ユーザーの権利である。

コピーコントロールやアクセスコントロールを解くこと自体が違法となった場合、このような検証を行うことができなくなり、ユーザーが自身で安全を保つことができない。米国諜報機関による大規模な通信傍受が明るみに出た今、このような回避行為は公正であり、法的にも十分認められるべきものだ。

3. ユーザーが自分の機器で自由なソフトウェアを動作させるため

スマートフォンを例として考えると、現在市販されているスマートフォンのほとんどは、AppleのiOSかGoogleのAndroidがインストール済の状態で販売されている。ただしこのようなOSは幾つかの理由から、一部のソフトウェアを動作させないように管理者権限(root)をユーザーに開放していない。そこで世界中のエンジニアたちがそのような制限を外すためにソフトウェアを分析し、Jailbreak(脱獄)など、管理者権限を取得するソフトウェアを開発し、配布している。またiOSやAndroid以外のFirefox OSやUbuntu touchなどのOSを機器にインストールするためにも、そのような管理者権限の取得が必要となる。

ユーザーが正当な手段で手に入れた機器で、自身の動かしたいソフトウェアを動かすことはユーザーの権利だ。またスマートOSを開発する技術を学ぶうえでも、実機で動作チェックをすることは重要だ。

現状ではこのような管理者権限の取得行為は違法ではないが、今後このような技術にアクセスコントロールがかかった場合、それが違法行為となる。スマートフォンに限らず、あらゆる電子機器(自動車なども含む)の上で、知識のあるユーザーが自己の責任において自由にソフトウェアを動かすことを妨げないように、アクセスコントロール回避行為は認められるべきだ。またソフトウェア開発を萎縮させないように、法改正にあたっては管理者権限の入手行為(Jailbreakやroot化)が違法ではないことを確認し、発表すべきである。

4. 技術の解説や批評、教育に資するため

技術はエンジニアだけのものではなく、それをユーザーに使ってもらうことに意味がある。そのためには、技術的動作を記録し、公表できることが重要だ。またその動作をコンピュータ上で拡大してみたり、止めてみたりして検証する必要がある。

しかし現状、特に映像機器において、映像コンテンツに課せられたアクセスコントロールが理由で、動作画面をコンピュータ上に記録することができない。これによって映像機器や映像作品の画質の比較や、ユーザーへの取り扱い情報の提供、ユーザーインターフェースの批評活動が実質不可能になっている現状がある。

技術の進歩には、正しい技術批評や教育が必要である。そのような行為を目的として行われるアクセスコントロール回避は、規制に当たらないような権利制限が必要だ。

5. 技術の互換性や相互運用性を保つため

米国において、プリンタの互換インク等に関し、著作権法のアクセスコントロール回避規制に基づく訴訟が提起された事例がある(Lexmark International, Inc. v. Static Control Components, Inc., 387 F. 3d 522 (2004))。アクセスコントロール回避規制は、このように技術の互換性や相互運用性を損なうかたちで利用される可能性が否めず、たとえば、今後3Dプリンタのフィードストック(樹脂インク)でも同様の問題が発生する可能性が考えられる。よって、技術の互換性や相互運用性が確保されることを何らかの形で明確にする必要がある。

6. すでに解除技術が提供されなくなったコンテンツやソフトウェアを利用するため

コピーコントロールCD(CCCD)を例に考えると、現在はその技術を用いた新たなコンテンツの配信は実施されておらず、またその解除を可能とするソフトウェアが公式に提供されているわけではない。つまり正当に手に入れたコンテンツを、合法に利用する手段がないことになる。またハードウェアドングルを必要とするソフトウェアで、そのドングルが最新の環境に対応していない場合、正当に入手したソフトウェアであっても実行が不可能である。

このような事情にもかかわらず、アクセスコントロールを回避することが違法とされることは、正規にコンテンツを入手した消費者の正当な権利を害している。すでにサポートが終了したアクセスコントロールについては、その解除もしくは除去が正当なものであると認めるべきだ。

7. 視聴目的の複製のため

DVDやBlu-rayの専用プレーヤーが家庭内において必須ではなくなった現状では、DVD/Blu-rayに収録されているコンテンツをディスクのまま視聴する環境は、非常に限られている。特にスマートフォンやタブレット端末については、その機器の特性上、視聴のための機器の他にディスクドライブを用意して視聴することは、その利便性を大きく害する。仮にDLNAなどを用いてコンテンツをネットワーク経由で視聴するには、そのコンテンツが汎用データとしてネットワーク上に存在することが必要だ。

くわえて現状Linuxでは、合法的にDVD/Blu-rayを視聴する環境がない。これはアクセスコントロールが理由でフリーなソフトウェアの開発が不可能なこと、さらに利用者が少ないために、有償のソフトウェアであっても開発コストが回収できる見込みが少ないためだ。Linuxのような自由かつ無償のOSの上でDVDの視聴を可能とすることは、情報デバイドを解消する上で非常に重要な施策である。

正当に入手したコンテンツを視聴することは、その手段を問わず、権利者の権利を害するものではない。また技術的に可能な視聴を著作権を理由に縛ることは、消費者の権利を不当に制限している。合法に入手したコンテンツをその視聴のために複製することは、フォーマット変換を含めて権利制限とすべきだ。

8. 不正告発を可能とするため

TPPは加盟国にTRIPS協定および知的財産権に関する新たな規制を求め、企業の貿易秘密の漏洩阻止を図っている。今回加えられた条項 (TPP協定 暫定仮訳 知的財産章 第18・78条 2-(a)および(c))は、コンピュータシステムにおける権限の与えられていない、かつ意図的な貿易秘密へのアクセスおよび開示に対する懲罰を可能にしており、しかもこれら情報へのアクセスや開示を保護する条文は存在しない。この条文は貿易秘密保護という目的を濫用する可能性があり、公的な利益のために働く不正告発者やジャーナリストを萎縮させてしまう。

健全な民主政治の運営には不正告発を可能にするエコシステムが必要不可欠であり、必要以上の制限は政治腐敗を引き起こす。アクセスコントロールを回避する目的のひとつには政治の不正告発や情報開示といったものがある。そのうえで、TPPには「知財保護」を銘打ちながら、こうした不正告発に懲罰を与えることが可能な条文があることに留意し、不正告発者やジャーナリストが萎縮しないような仕組みづくりをする必要がある。

近年の技術進歩は急速であり、今後自動車や家電など、従来はそう見なされていなかった機器でもコンピュータ化、ネットワーク化、ブラックボックス化が進む可能性がある。また技術革新に伴って、コンテンツの新たな用途や利用形態が開拓されることもある。これらに伴い、アクセスコントロール回避の新たな形態が求められるようになる可能性は非常に高いと考えられる。

特にコンテンツの視聴のためであっても、オープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要だ。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきであり、よって、柔軟かつ定期的に適用除外規定を追加できるような仕組みを考慮すべきである。

さらにアクセスコントロール回避行為自体を違法とすることは、上記で述べてきた行為を現状行っている人全てを違法状態に置くこととなり、実効性がない。TPPによる著作権法の改正は、違法な商業目的の海賊版の取り締まりに限定したものであるべきだ。

権利制限の一般規定(フェアユース)の導入を

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入された。しかしこれは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。

またTPPにおける知的財産制度の改正は、権利者を一方的に保護するものであり、消費者やインターネットユーザーの表現の自由や情報機器の利便性を一方的に損ねるものである。著作権の保護と利用のバランスを取る上では、TPP著作権条項の国内立法までに、公正で市場で原著作物に与える影響の少ない利用に関する権利制限の一般規定(フェアユース)を導入すべきだ。その際、フェアユース規定は単なる産業振興策ではなく、言論の自由を担保し、教育やエンタテインメント、ユーザーによる技術検証・改善に資するものであるべきだ。

また、米国では2015年10月27日に著作権法が改正され、前項で述べた正当なアクセスコントロール回避行為について、権利制限が制定された。TPPによる著作権法改正を考える上で、TPPがルールを共通化するものであるならば、加盟国の法改正を注視することが重要である。

Federal Register | Exemption to Prohibition on Circumvention of Copyright Protection Systems for Access Control Technologies
https://www.federalregister.gov/articles/2015/10/28/2015-27212/exemption-to-prohibition-on-circumvention-of-copyright-protection-systems-for-access-control

クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

【要旨】

ユーザーの私的複製の自由とクリエイターへの対価の還元は密接に関係するため、常にユーザー側のコピー制限(DRMやダビング10など)との関係で論じる必要がある。4K放送の録画禁止の検討は視聴者の利便性を全く考慮しない議論だ。クリエイターへの適切な対価の還元の議論にはコンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にない。

【本文】

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要がある。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからだ。現在文化審議会で行われているクリエイターへの適切な対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを、昨年に引き続き要望する。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考える。

私的録画に関しては、ダビング10との関係という視点を避けて通ることはできない。また、一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が2015年12月25日に公開した「高度広帯域衛星デジタル放送運用規定」によれば、4K放送について、その放送の録画を禁止する技術仕様の盛り込みが検討されていることが読み取れる内容となっている。これは視聴者の利便性を全く考慮しない議論がなされていることを示している。

クリエイターへの適切な対価の還元の議論には放送を管轄する総務省はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考える。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからだ。

その他知的財産制度全般に関して

【要旨】

本項については下記を求める。

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開
アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を導入
政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開
災害時の放送のインターネットサイマルを可能とする法整備
クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備
補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築
インターネットサーバを公衆用設置自動複製機器とする著作権法第三十条第一項第一号の改正

またACTAの推進は時代錯誤であり、違法ダウンロード刑事罰化、リーチサイト規制、電磁的な一時的複製の規制には反対。

【本文】

以上に加え、「知的財産計画2015」にかかる意見募集で提出した意見について、以下を引き続き求める。

著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開を

アメリカ議会図書館や欧州委員会のEuropeanaは、パブリックドメインとなった書籍・映画・音楽等のアーカイブ・オンラインでのデータ配信に熱心である。著作権が切れパブリックドメインとなった著作物は、速やかに全国民が利用しやすい形態で提供し、我が国の文化の向上に資するのが、文化を担う行政機関の責務である。

我が国には著作権が消尽し、文化的意義が大きいにも関わらず、鑑賞・閲覧の困難な戦前の作品が多数存在する。市場性が薄くなり著作権も切れた作品については国が主導して保存・公開する必要性が高いにも関わらず、こうした点についての現状認識・問題意識が乏しいのは大変遺憾である。

また我が国では著作権の切れた書籍について、権利を持たない者の申し出によって国立国会図書館ウェブサイト上での提供が一時凍結されたことがある。今後このような不必要な配慮を行わないよう知的財産推進計画に明記することを求める。

アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を

放送番組のアーカイブ化およびその一般利用は、2003年のNHKアーカイブス設立をきっかけに本格的にスタートした。当時から実践されてきた権利処理のモデルは非常に厳格なものであるが、これが後々他の事業者の権利処理のモデルとなった。だがNHK基準の厳格な権利処理にかかるコストでは民間事業は成り立たず、事実上の参入障壁となっている。

権利処理のうち、膨大な人件費がかかっているのは肖像権の処理であり、特にタレントなど契約によって出演契約が行なわれた者ではない、映像に収められた一般市民の権利許諾が大きな負担となっている。

我が国においては、肖像権は明文化された権利ではなく、判例によって一部パブリシティ権などが認められた例があるに過ぎないが、一般市民の間では過剰に権利を拡大して解釈する傾向が強まっているのも事実である。

このようなバランスを考慮し、収蔵された放送番組の利活用においては、研究および教育利用に限定した上で、オプトアウトで始めたらどうか。その課程で人物の特定および権利処理の手がかりが掴める可能性もあり、事業者の権利処理の負担が軽減できる。アーカイブは、蓄積しても利用されなければただの死蔵であり、利用開始が長引けばそれだけ資産価値を減少させ続ける結果となる。放送番組のアーカイブ利活用については、最終的には国民の直接視聴に繋がることを睨みつつも、資料としての価値を優先する形で、現実的な手段を検討すべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開を

インターネットを利用した選挙活動が解禁された今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるよう、政見放送をインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

クラウドサービスに対応した著作権制度の整備

クラウド・コンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、メディア変換やフォーマット変換などの公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築を

そもそも私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

また2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会での議論は、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみであった。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考える。以上の認識から主婦連合会と共同で2015年3月27日に文化庁に対して意見書を提出した(http://miau.jp/1427440922.phtml)。本意見書の内容を知的財産推進計画2016にも同様に盛り込むよう求める。

著作権法第三十条第一項第一号について

本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっている。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望する。

違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については、全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

電磁的な一時的複製の規制

著作物を一時的に電磁的なかたちで記憶装置に複製する行為についても複製権の対象とし、許諾なく電磁的な一時的複製を行った場合も著作権侵害とするような枠組みの策定が議論されている。しかしわが国は電磁的な一時的複製を著作権侵害とする要求を受けいれるべきではない。また国際的な経済連携協定に電磁的な一時的複製を規制する条項が入ること自体に強硬に反対すべきである。

現代のコンピュータはプログラムとそのプログラムが処理するファイルの一時的な複製をメモリーに自動的に作り続けることで動作する。またインターネットの利用においては、ネットワークから受け取ったデータを先読みしてメモリーにバッファしておくことで大容量のストリーミングコンテンツを快適に利用することができる。また一度見たウェブサイトのデータをハードディスクに一時的に保存しておくことで、高速なウェブサイトのブラウズが可能となり、またトラフィックの軽減につながるため、ネットワーク資源を有効に活用することができる。このように電磁的な一時的複製はコンピューティングを支える基幹の技術であり、電磁的な一時的複製を規制することはIT技術の実際と大きくかけ離れており、全く現実的ではない。

以上
著作者 :
最終更新日 : 2016-01-28 15:37:43

TPP知財条項について議論される「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第6回)」に意見書を提出しました

MIAUは、TPP知財条項について議論される「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第6回)」に、下記の意見書を提出いたしました。また当日は下記意見書にそって事務局長の香月が意見を述べます。

内容は以下の通りです。

2015年11月4日

TPP批准にかかる著作権法改正について

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

TPP交渉が大筋合意と公表されてまもなく1ヶ月が経過しようとしているが、いまだ条文が公開されておらず、政府や文化庁から発表されているのはその概要にすぎない。このような情報が乏しい状況で議論をはじめることに憤りを感じる。合理的な議論を進めるためにも、TPPの条文、そしてその付随文書をすみやかに公開することを強く求める。政府は「TPPはパッケージである」と説明している。そうであるならば知的財産条項だけでなく、その全てをすみやかに公開するべきだ。

政府から与えられた限られた情報、およびリーク文書から得られた情報を鑑みるに、TPP批准にかかる著作権法の改正について、MIAUは反対する。著作権の強化のみが図られ、ユーザーの創作や言論を萎縮させ、著作物の正当な利用を害する条項の導入には反対する。ただしTPPの批准が避けられないということであれば、著作権保護期間の延長、著作権侵害の非親告罪化、法定賠償制度の導入について、thinkTPPIP(TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム)が提出した意見に同意する。加えてMIAUからは下記の2点を提案する。

立法時期・施行時期等について

一部の国内メディアによれば、国内法制定は来年通常国会ともされているが、現在の海外での報道を見るかぎり、その時点ではTPP自体の発効はおろか、発効が確実であるとの見通しさえ立たない可能性が高い。しかし、著作権制度の情報立国・コンテンツ立国にとっての重要性を踏まえれば、これは極めて不利な選択だ。最終的な条約の発効を踏まえ、それまでの国内外の議論の蓄積やビジネス状況を十分に反映した柔軟な国内立法を目指すことが当然であり、前のめりに国内立法を済ませる理由は全くない。「TPPはパッケージである」ならば、国内法の改正も、同様にTPPとパッケージであるべきである。

なお、仮にどうしても前倒し導入が防げない場合には、附則で国内法の発効時期をTPP発効の翌年と定める必要がある。施行さえも前のめりになれば、政府自身が「屈辱的」と評する戦時加算によって追加保護中の海外コンテンツをみずから延命させるのみとなる。

この点において、保護期間延長については特に、施行時点で保護期間が満了している作品は復活保護しないことは当然だ。

また、前記の戦時加算解消については、現在存在するとされる各国との交換公文 [1] が単に「米豪など政府が民間に加算分返上を働きかける」という程度の内容だとすれば、実効性は極めて不十分だ。各国に戦時加算を本気で解消させるために も、保護期間延長の導入は戦時加算解消の確約後とすべきである。

活動自粛を防ぎ、流通促進をはかるセーフガードの導入を

保護期間延長、非親告罪化、法定賠償金の導入、そしてアクセスコントロール回避規制の強化などについては、それ自体の国内立法過程において、登録作品のみを対象とする、また悪質な海賊版ビジネスのみを対象として注力するなどの十分なセーフガードを組み込むべきだ。それに加えて、わが国の社会・経済の活力を維持し、豊かな文化を育むため、次のような制度の導入を提案する。

(1) フェアユース規定の本格導入を

遅くともTPP著作権条項の国内立法までに、公正で市場で原著作物に与える影響の少ない利用に関するフェアユース規定(権利制限の一般規定)を導入すべきである。TPPがこうしたフェアユース規定の導入を制約していないことは、米国自身がフェアユース規定によって二次創作や新規ビジネスなど社会の活力を維 持してきたことが物語っている。韓国も米韓FTAで米国の著作権要求を受け入れる際、フェアユース規定を導入している [2] 。加えて米国ではコピーコントロール・アクセスコントロール回避規制に関する新たな例外ルールを成立させた [3] 。フェアユース規定は単なる産業振興策ではなく、言論の自由を担保し、教育やエンタテインメント、ユーザーによる技術検証・改善に資するものであるべき だ。またこれは政府や文化庁から示されていないTPPの条文の中にも示されている [4] 。権利の強化に関する条項だけでなく、このような条文についても十分に国内法で手当てされるべきだ。

(2) ECL(拡大集中管理)や制限規定化をはじめとする著作物の利用制度を

国内外の各種調査で過去の全作品の50%以上とも言われる権利者不明の孤児著作物の問題は、保護期間の延長や、非親告罪化・法定賠償制度の導入にともなう自粛の広がりによって、より深刻化する可能性が高い。現在の長官裁定制度の存在意義は認めつつ、更に充実した著作物の利用制度を導入すべきだ。

(3) 作品登録制度の導入など、権利情報データベースの大幅な充実を

同じく、権利許諾を得やすくする制度構築が望まれる。現在の実名登録や創作年月日登録制度を改正して全ての著作物を著作権登録の対象とし、JASRAC(日本音楽著作権協会)など既存の権利情報データベースと連動・ネットワーク化させるなど、著作権・著作隣接権の孤児化を防ぎ、権利許諾を得やすくする施策を更に進展させるべきだ。

(4) クリエイティブ・コモンズなどパブリックライセンスの、政府での本格導入と本格普及を

文化庁では2012年、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の普及をはかる旨表明しているが [5] 、その他のパブリックライセンス制度と共に、なお国内での認知度・普及度は低く、CCライセンスを公式採用するウィキペディア・YouTube・ Flickrなどの米国プラットフォーム勢や欧州ユーロピアーナに大きく水をあけられた状態だ。作品の広い流通をのぞむ権利者に選択肢を与え、作品を孤児 化から守り、権利処理コストを社会全体で低下させるためにも、今後は大幅にその支援・促進を進めるべきだ。例えば、各省庁が発行する定期刊行物や審議会資 料などといった公共性の高い著作物全てに適用するためのロードマップや数値目標など、具体的な普及の取り組みを示すべきである。

[1]「TPP交渉参加国との交換文書一覧」(TPP政府対策本部)参照。
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_koukan.pdf

[2] As Korea Implements Fair Use, Two Cases Offer Precedent for Flexible Copyright Exceptions and Limitations(infojustice.org、2013年2月18日)
http://infojustice.org/archives/28561

[3] Exemption to Prohibition on Circumvention of Copyright Protection Systems for Access Control Technologies(米国立公文書記録管理局、2015年10月28日
https://www.federalregister.gov/articles/2015/10/28/2015-27212/exemption-to-prohibition-on-circumvention-of-copyright-protection-systems-for-access-control

[4] Wikileaks 2015年10月9日リーク条文 QQ.G.17項に「Appropriate Balance in Copyright and Related Rights Systems」として、批評や論評、ニュース報道、教育、学問、研究やそれらに類するものを制限してはならないと明記されている。
https://www.wikileaks.org/tpp-ip3/WikiLeaks-TPP-IP-Chapter/page-32.html

[5] 文化庁、CCライセンスを支援へ 独自ライセンス構築は断念(ITmediaニュース、2013年3月27日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1303/27/news105.html

以上

著作者 :
最終更新日 : 2015-11-04 14:02:15

「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に意見書を提出しました。

MIAUは、文化庁の「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2015年7月27日

「著作物等の利用円滑化のためのニーズ」意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

(1) どのような種類の著作物等をどのような場面、方法で利用するにあたり課題がありますか。現在又は将来想定される課題について具体的に御記入ください。また、そのような利用ができないために、既にビジネスに支障が生じている、又は支障が生じうることが考えられる場合は、それについても具体的に記載をお願いします。

1. いわゆる自炊代行など、ユーザーが合法的に入手した著作物のデジタル化・アーカイブを、有償無償問わず第三者に依頼することができない。

デジタル化やアーカイブ化はユーザーにとっても重要な視点である。書籍を例に取ると、自身が合法的に所有する書籍をデジタル化しようとした場合、現状では所有者自身がスキャンせねばならないことになっている。しかし高齢者や蔵書が大量にある人にとって、それは敷居が高く、また時間もかかる。その点を解消するためにいわゆる自炊代行業が存在するが、現在権利者が自炊代行業者に対して訴訟を起こし、その利用や発展が止まってしまっている。

またVHSテープやレコードなどのアナログメディアも、その再生機器が今後は入手困難になることが予想される。そのためにもメディアチェンジを代行する事業者を認める必要がある。

2. ユーザーが合法的に入手、あるいは自身が作成したソフトウェアが携帯電話やタブレット端末などのOSによって実行させることができない場合、その制限を解除(いわゆるJailbreakやRoot化)して、それらのソフトウェアを実行させることができない。

現状iOSなどのスマートデバイス向けOSでは、そのソフトウェアの実行や配布に対して、OSを提供するベンダーとの有償契約が必要となっている。またそのベンダーが不適切だと判断したソフトウェアは、アプリストアに並べることもできない。またその判断理由が明らかにされないことも多い。

しかし任意の端末の上で動作するソフトウェアを記述し、それを実行することは、プログラマおよびその端末を購入したユーザーの自由である。教育の現場では、教員が開発した教材を生徒のタブレット上で動作させられないなどの弊害も出てきている。

3. 教育や批評、セキュリティ検証、公正に入手したコンテンツの視聴やアーカイブ目的などの公正かつ必要な複製を行うために、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避する行為ができない。

教育や批評を行う場合、手法として対象の引用は必要不可欠である。しかしDVDやBru-layなどの映像媒体やテレビ番組には、コピーコントロールないしアクセスコントロールがかけられており、現状ではその解除は目的を問わず違法とされている。

現在そのアクセスコントロールが事由により、ユーザーが合法的に入手したコンテンツにもかかわらず、オープンソースプラットフォームでは視聴することができない。あるいはそのコンテンツをバックアップする目的で私的複製する際も同様である。SACDやDVD Audio、DTS Music Discなど、今後プレイヤーの普及が望めないソフトについても、ユーザー自身でのリッピングによるデータ取り出しやバックアップを認めるべきである。

一方でソニーBMG製CD XCP問題のように、コピーコントロールのソフトウェアにセキュリティ上の問題があることがユーザー自身の検証によって初めて明るみに出るなど、ユーザーによるセキュリティ検証が重要な役割を果たすことがある。この事例を考えれば、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避することを一律に違法とすることは、消費者の財産やプライバシー保護の観点で大きな問題がある。

4. 読み上げ機能や点字変換機能を利用するため、電子書籍のDRMを解除する行為ができない。

我が国においても電子書籍市場は拡大し、一般的なものになりつつある。電子書籍の利点として、紙の本では難しかった自動読み上げや点字ディスプレイへの対応が容易であることが挙げられる。

しかし現実として、電子書籍にはDRMがかけられており、そのような利点を活かすことができない状況がある。これは障害者への情報アクセスを不当に害している。

5. ハードウェアドングルが実行に必要なソフトウェアにおいて、そのソフトウェアのサポート切れやハードウェアインターフェイスの進化によって、そのハードウェアドングルが物理的に利用できなくなった場合、そのソフトウェアにドングルを回避するような改変を加えることができない。

6. 情報公開請求によって開示された行政文書や、行政が公開しているデータを、ユーザーがウェブサイト上で公開したり、利用したりすることができない。

情報開示請求に応えるための行政文書の複製は権利制限されているが、それを広く知らしめ、批評のためにウェブサイトなどにアップロードすることが、時に複製権や公衆送信権、あるいは送信可能化権によって問題となったケースがある。これは市民の知る権利や、ジャーナリズムを害することがある。またこれは政府の進めるオープンデータおよびオープンガバメント推進政策を阻害する。

7. 批評やオンラインショップやネットオークション等で販売するため、その商品の写真(書影やジャケット等)を撮影し、それをウェブサイト上に掲載することができない。

Eコマースの普及により、現在は事業者同士、あるいは事業者消費者間の取引だけでなく、インターネットオークションやフリーマーケットアプリなどを用いた消費者同士での取引が実施されるようになってきている。この際はその商品の状態を示すために商品の写真を掲載することが重要であるが、現状ではそのような商品イメージをウェブサイトに掲載することに許諾が必要である。しかしこれは権利者の権利処理コストをあげるのみで、かつ迅速な流通を害するのみである。

8. 会議資料や取材資料作成など業務のために、著作物を複製し、利用することができない。

9. Podcastや動画作成、DJミックスなどCGMコンテンツ作成の際に、音楽をBGMとして用いたくても、現状の包括契約モデルでは著作隣接権をクリアする手続きが煩雑で、利用料金の目安もない。

(2) (1)で挙げる利用は、現在の著作権法のどの規定(権利に関する規定・権利制限規定)との関係で課題がありますか。

  • 1. 著作権法第30条
  • 2. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 3. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 4. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 5. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 6. 著作権法第30条
  • 7. 著作権法第30条
  • 8. 著作権法第30条
  • 9. 著作権法第21条・第23条・第30条

(3) (1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ①権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、具体的にどのような制度を望みますか。また、そのような制度設計が望ましいと思われる理由を述べてください。

当該の行為が実施できるような権利制限規定、特に個別規定でなく、包括的な権利制限規定を創設すべきである。その際には米国のフェアユース規定を範とし、さらに現代の情報通信環境に即し、言論の自由を担保する、先進的な「日本型フェアユース」の導入を目指すべきである。

(1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ②権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、(1)に挙げた利用が著作権者等の利益を不当に害さない(著作権者等の正規のビジネスとの競合、衝突の有無や度合いを含む。)と判断する理由は何ですか。

1. あくまでも正規に入手した著作物のメディアチェンジにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。

2. 自身のデバイスの上で動かすソフトウェアに関わるものにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。ソフトウェアの違法コピーとは論点が異なる。

3. 公正かつ必要な複製であるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

4. 障害者の情報アクセスを担保するためであるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

5. 正規に購入したソフトウェアを実行するためにすぎないから、著作権者等の利益を不当に害さない。

6. 市民の知る権利やジャーナリズムを担保するため、著作権者等の利益を不当に害さない。

7. 目的とする著作物そのものをやりとりするものではなく、その流通に資するものであるため、著作権者等の利益を不当に害さない。店頭に陳列されている状態と変わらない。

8. 現実問題としてこのような軽微な利用は広く行われており、多くの人が違法状態にある状況は打開すべき。また現在議論されているTPPの知的財産条項に著作権侵害の非親告罪化が導入されるという議論もあり、その際のセーフガードとしても議論すべき。

9. BGMなどの軽微な利用は、著作物そのものを単独で利用するわけではなく、音源配信とはバッティングしない。よって著作権者等の利益を不当に害さない。

③著作権の集中管理の促進など、ライセンシング体制の充実によって解決すべきとお考えの場合は、具体的にどのような環境整備を望みますか。

特になし。

④その他の解決方法について御提案があれば、理由とともに具体的に御記入ください。

拡大集中許諾制度(Extended Collective Licensing; ECL)の導入なども検討し、利用したいユーザーが自由に正しく利用しやすい環境整備を進めることが、最適なクリエーターへの適切な対価還元につながる。

以上
著作者 :
最終更新日 : 2015-07-31 23:24:26

文化庁 文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会で意見発表をしました

平成27年度文化庁文化審議会著作権分科会「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」の委員として、MIAU代表理事の小寺信良が任命され、その第1回の審議が平成27年7月3日に実施されました。その審議の中で「クリエーターへの適切な利益還元」について、主婦連合会と共同で意見発表を行いました。

意見発表に使用した資料は下記のとおりです。

著作者 :
最終更新日 : 2015-07-06 20:23:17

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2015」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2015」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2015年5月20日

「知的財産推進計画2015」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

アーカイブの利活用に関して

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開を

アメリカ議会図書館や欧州委員会のEuropeanaは、パブリックドメインとなった書籍・映画・音楽等のアーカイブ・オンラインでのデータ配信に熱心である。著作権が切れパブリックドメインとなった著作物は、速やかに全国民が利用しやすい形態で提供し、我が国の文化の向上に資するのが、文化を担う行政機関の責務である。

我が国には著作権が消尽し、文化的意義が大きいにも関わらず、鑑賞・閲覧の困難な戦前の作品が多数存在する。市場性が薄くなり著作権も切れた作品については国が主導して保存・公開する必要性が高いにも関わらず、こうした点についての現状認識・問題意識が乏しいのは大変遺憾である。

また我が国では著作権の切れた書籍について、権利を持たない者の申し出によって国立国会図書館ウェブサイト上での提供が一時凍結されたことがある。今後このような不必要な配慮を行わないよう知的財産推進計画に明記することを求める。

アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を

放送番組のアーカイブ化およびその一般利用は、2003年のNHKアーカイブス設立をきっかけに本格的にスタートした。当時から実践されてきた権利処理のモデルは非常に厳格なものであるが、これが後々他の事業者の権利処理のモデルとなった。だがNHK基準の厳格な権利処理にかかるコストでは民間事業は成り立たず、事実上の参入障壁となっている。

権利処理のうち、膨大な人件費がかかっているのは肖像権の処理であり、特にタレントなど契約によって出演契約が行なわれた者ではない、映像に収められた一般市民の権利許諾が大きな負担となっている。

我が国においては、肖像権は明文化された権利ではなく、判例によって一部パブリシティ権などが認められた例があるに過ぎないが、一般市民の間では過剰に権利を拡大して解釈する傾向が強まっているのも事実である。

このようなバランスを考慮し、収蔵された放送番組の利活用においては、研究および教育利用に限定した上で、オプトアウトで始めたらどうか。その課程で人物の特定および権利処理の手がかりが掴める可能性もあり、事業者の権利処理の負担が軽減できる。アーカイブは、蓄積しても利用されなければただの死蔵であり、利用開始が長引けばそれだけ資産価値を減少させ続ける結果となる。放送番組のアーカイブ利活用については、最終的には国民の直接視聴に繋がることを睨みつつも、資料としての価値を優先する形で、現実的な手段を検討すべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開を

インターネットを利用した選挙活動が解禁された今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるよう、政見放送をインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

フェアユース規定の導入を

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入されたが、これは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。よって知的財産計画2015において、再度権利制限の一般規定の導入の方針を示し、ユーザーによるアーカイブされたコンテンツの利用の利便性の向上及び国内産業の活性化を目指すべきである。

行政の持つデータのライセンスを利用しやすいものに

政府や自治体の持っている各種データもアーカイブとして捉え、行政の持つデータの利活用についても知財戦略に盛り込み、知財戦略としてもオープンガバメントを推進していくべきである。例えば、過去に行政機関が発刊した白書や報告書といった、税金で作成され極めて公共性の高い文書にまで著作権の制限がかかり、全文のネット上での公開に支障が発生するような事態は、極めて非民主主義的であり悪しき官僚主義的な矛盾に満ちていると評さざるをえない。「オープンガバメント」の推進に不可欠なオープンデータを進めていくためには、行政の持つビッグデータを国民が利用しやすいライセンスと形式で公開することが重要である。経済産業省や文化庁が進めているような、行政のデータをパブリックドメインないしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて公開する取り組みを、国全体として進めていくべきである。

模倣品・海賊版対策に関して

ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備に関して

クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備を

クラウド・コンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、メディア変換やフォーマット変換などの公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築を

そもそも私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

また2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会での議論は、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間 がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみであった。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考える。以上の認識から主婦連合会と共同で2015年3月27日に文化庁に対して意見書を提出した(http://miau.jp/1427440922.phtml)。本意見書の内容を知的財産推進計画2015にも同様に盛り込むよう求める。

著作権の権利制限規定の見直しについて

情報技術の進化によって、新しく魅力的なサービスの可能性が広がる中で、著作権の権利制限規定の見直しについて、新たな時代に対応できる柔軟な規定についての検討を含め、未来志向の議論が展開されることを要望する。

著作権法第三十条第一項第一号について

本小委員会ではクラウドサーバーが著作権法第三十条第一項第一号(以下本条文)に該当するかどうかが議論され、小委員会の中ではいくつかの個別事例 について該当しないことが確認された。しかし本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっている。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望する。

クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要がある。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからだ。来期に予定される対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを要望する。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考える。特に私的録画に関しては、ダビング10との関係 という視点を避けて通ることはできない。公共性のある地上波のテレビ放送に、メディアシフトが事実上不可能なDRMがかけられている現状について、その 見直しも視野に入れて議論を進めることを要望する。

その際には総務省はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考える。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未 来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからだ。

TPP(環太平洋経済連携協定)の知的財産分野に関して

現在協議が進んでいるTPPの知的財産分野は我が国の知的財産戦略を考える上ではTPP交渉は大きなかなめであり、結果によっては本報告書で提言されている積極的な取り組みもTPPによって実現不可能となる可能性が十分にある。このような国際協定が国民、しいては国会議員ですらアクセスできない秘密下で議論されていることは大変遺憾である。知財戦略としてTPP交渉の公開、及びこれまでの交渉の情報公開を求めるよう報告書に明記し、開かれた知財戦略の議論を進めるべき。

TPPの知的財産分野で議論されているとされる論点のうち、特にアーカイブの利活用という観点からは特に下記の論点が懸念される。ただしTPPの知的財産分野で懸念される論点は下記のみではない。必要であれば当協会がTPP政府対策本部に提出した意見書(http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/dantaiiken/001.pdf)を参照されたい。

著作権保護期間延長

孤児作品(Orphan Works)の保存と活用に関しては本報告書内でも問題として提起されている。著作権保護期間の延長はこの孤児作品を増やす最も大きな要因である。

また著作権の保護期間が早く終われば、その著作物を用いて二次的著作物を制作したり、その作品を上演したりする際の許諾や著作権使用料が不要となるため、二次的著作物の制作や作品の上演が大きく加速される。結果として近代や現代の作品を演奏・上演する楽団や劇団などが増加し、著作物の漫画化やノベライズ、パロディといった新たな創作物の出現が活性化される。

現代の著作物においては非常の多くの人がその制作に関わっており、制作に関わった関係者にも著作隣接権が付与される。その著作物を保存・活用しようとした場合、著作隣接権者を含めたすべての著作者に許諾を取る必要があるが、数年前に制作された著作物であっても著作者が不明という理由で許諾を取ることが不可能なケースも発生している。より高い創作性をもった環境を維持するためには、むしろ著作権保護期間は短縮すべきであり、さらには著作権を放棄し、パブリックドメイン化する仕組みも必要である。

さらに著作権が切れた著作物を利用することで、新たなビジネスが生まれている。例えば著作権が切れた書籍のデジタル化を進めている「青空文庫」のデータは数多くの電子書籍端末などに収録されており、日本における電子書籍の普及に役立っている。しかし著作権保護期間の延長によって、このような創造のサイクルが大きな打撃を受け、新たなビジネスチャンスを失うことになる。

著作権侵害に対する職権による刑事手続(著作権侵害の非親告罪化)

わが国の著作権法においては、著作権侵害における刑事手続は権利者からの申し立てによるもの(親告罪)であるが、TPP交渉においてはこれを職権によって刑事手続を行うことができる(非親告罪)ようにする要求が米国などから提出されているようである。しかしわが国は著作権侵害を非親告罪とすべきではない。

わが国には二次的著作物やパロディに関する法制度が存在せず、司法では二次的著作物やパロディは著作権侵害と判断される。しかし現実には二次的著作物やパロディによる作品が数多く存在しており、今やそれらは日本の文化の一翼を担っている。そしてこのわが国独自の個性豊かな文化は世界に向け発信され、世界の共感を得ている。これは知的財産戦略本部が策定した「知的財産戦略2013」の中にも盛り込まれている「クール・ジャパン」の源泉となっている。このような文化が熟成されたのは二次的著作物やパロディについて、その制作者と原著作者との間に信頼関係があり、著作者が黙認していたことに由来する。しかし著作権侵害が非親告罪となれば、このような信頼関係に関わらずあらゆる二次的著作物やパロディが刑事告訴の対象となり、パロディ法制などのないわが国においては「クール・ジャパン」の源泉となる文化が萎縮する結果となり、国益を害する。

また著作権侵害が非親告罪となることで相対的に捜査機関の権力が増大し、これまで見逃されていたような軽微な著作権侵害について著作権侵害を理由に捜査機関が逮捕することができるようになる。またインターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できないという根本的な問題もあり、これは別件逮捕などの違法な捜査を助長するおそれがある。

知的財産に関する基本的な視点に関して

著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。 なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

アクセスコントロール回避規制

2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避することが違法となった。無条件のアクセスコントロール回避規制は、ユーザーによるコンテンツのアーカイブを不可能とし、国民の正当なコンテンツ利活用を妨げる。特にコンテンツの視聴のためであってもオープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要である。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。

またアクセスコントロール回避規制はわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なっており、それに対する手当は一切なされていない。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきである。

電磁的な一時的複製の規制

著作物を一時的に電磁的なかたちで記憶装置に複製する行為についても複製権の対象とし、許諾なく電磁的な一時的複製を行った場合も著作権侵害とするような枠組みの策定が議論されている。しかしわが国は電磁的な一時的複製を著作権侵害とする要求を受けいれるべきではない。また国際的な経済連携協定に電磁的な一時的複製を規制する条項が入ること自体に強硬に反対すべきである。

現代のコンピュータはプログラムとそのプログラムが処理するファイルの一時的な複製をメモリーに自動的に作り続けることで動作する。またインターネットの利用においては、ネットワークから受け取ったデータを先読みしてメモリーにバッファしておくことで大容量のストリーミングコンテンツを快適に利用することができる。また一度見たウェブサイトのデータをハードディスクに一時的に保存しておくことで、高速なウェブサイトのブラウズが可能となり、またトラフィックの軽減につながるため、ネットワーク資源を有効に活用することができる。このように電磁的な一時的複製はコンピューティングを支える基幹の技術であり、電磁的な一時的複製を規制することはIT技術の実際と大きくかけ離れており、全く現実的ではない。

テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

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最終更新日 : 2015-07-06 19:53:47

『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました

MIAUは、主婦連合会と共同で、文化庁に対し『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2015年3月27日

文化庁 長官 青柳 正規 様
 文化庁 著作権課 課長 森 孝之 様

「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)
主婦連合会

2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(以下本小委員会)における議論の成果として、2015年2月に「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」(以下本報告書)がとりまとめられました。本報告書の「おわりに」では、残された課題として「クリエイターへの適切な対価還元に係る課題」を挙げ、今後、本小委員会で引き続き検討を深めるとしています。

クリエイターへの適切な対価還元に係る課題の議論は大変重要な課題だと認識しておりますが、進化を続けるクラウドなどIT技術を駆使したサービスと著作権の問題について、本小委員会で議論が十分に尽くされたとは言いがたい状況にあると私たちは認識しています。

そもそも本小委員会は、コンテンツの利用環境が刻々と変化する中、「我が国の著作権法における私的使用目的の複製の範囲とクラウドサービスとの関係が不明確であるため、事業者がサービス展開を萎縮しており、当該関係を整理し、事業者が積極的にサービス展開できるように所要の措置を講じてほしい」という事業者からの要望や、知的財産政策ビジョン(平成25年6月知的財産戦略本部決定)の中で「著作物の公正な利用と著作物の適切な保護を調和させ、新しい産業と文化の発展を続けるため、クラウドサービスやメディア変換サービスといった新たな産業の創出や拡大を促進する全体的な法的環境の整備を図るため、著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築などの制度の在り方について検討を行い、必要な措置を講じる」とされていることなどをうけて設置されたものです。

しかしながら、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみでした。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考えます。

以上の状況認識に立ち、本報告書、および本小委員会の今後の検討事項に関して、消費者、そしてインターネットユーザーの立場から、下記の通り意見を述べます。

1. 著作権の権利制限規定の見直しについて

情報技術の進化によって、新しく魅力的なサービスの可能性が広がる中で、著作権の権利制限規定の見直しについて、新たな時代に対応できる柔軟な規定についての検討を含め、未来志向の議論が展開されることを要望します。

2. 著作権法第三十条第一項第一号について

本小委員会ではクラウドサーバーが著作権法第三十条第一項第一号(以下本条文)に該当するかどうかが議論され、小委員会の中ではいくつかの個別事例について該当しないことが確認されました。しかし本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっています。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望します。

3. クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要があります。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからです。来期に予定される対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを要望します。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考えます。特に私的録画に関しては、ダビング10との関係という視点を避けて通ることはできません。公共性のある地上波のテレビ放送に、メディアシフトが事実上不可能なDRMがかけられている現状について、その見直しも視野に入れて議論を進めることを要望します。

その際には総務省 [1] はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考えます。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからです。

以上

[1] 本小委員会の議論の中でも引用された総務省情報通信審議会の『「デジタル・コンテンツ流通の促進等」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に関する答申』では、対価還元の検討の際は「コピー制御方式などコンテンツ保護のあり方に加え、コンテンツの流通の促進、製作力の強化によるコンテンツ市場の拡大等、より幅広い観点」の議論も求められています。

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最終更新日 : 2015-03-27 17:04:00

MIAUは「リミックス映画祭2014」に協賛します

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は、2014年8月2日に開催される「リミックス映画祭2014」に協賛します。


「リミックス映画祭2014」とは

リミックスカルチャーの祭典「リミックス映画祭」が2014年の夏、本邦初公開となる新作ドキュメンタリーを引っ提げてやってくる!

日本初公開となる「Copiad Malditos~ステファンの挑戦」をはじめとする、リミックスカルチャーとデジタル時代の著作権を多角的に見つめたドキュメンタリー作品がデンマーク、アメリカ、スペインの3カ国から大集合!

チャックDやジョージ・クリントンらのインタビューでヒップホップのサンプリングの軌跡をたどる「コピーライトクリミナルズ~音楽は誰のもの?」と、ライブハウスはもちろん、ピザ屋のCDデッキからも使用料の徴収に躍起なスペイン音楽著作権団体SGAEと現代のアーティストの報酬とのズレを捉えた「Copiad Malditos~ステファンの挑戦」の抱合せ上映にスペシャルゲストを交えたディスカッションを行う。オープニングには、DJデンジャーマウスら出演の「グッドコピー、バッドコピー」を無料上映。合計3作品の上映を通じ、DJやクリエイター、弁護士など多彩な顔ぶれが集まる参加型フェスティバル。

開催日

2014年8月2日 開場 15:30 / 開演 16:00

タイムスケジュール

16:00〜
映画『グッドコピー、バッドコピー』(2007年 デンマーク)

17:30〜
ディスカッション(出演:福井健策氏[弁護士]、KAZUHIRO ABO氏[DJ、トラックメイカー、ライター])
映画『コピーライト・クリミナルズ ~ 音楽は誰のもの?』(2009年 アメリカ)
映画『コピアッド・マルディトス ~ ステファンの挑戦』(2011年 スペイン)【日本初公開】

会場

UPLINK FACTORY
〒150-0042東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル
http://www.uplink.co.jp/

参加料金

2,500円(別途ワンドリンクオーダー必要)
※『GOOD COPY BAD COPY』のみワンドリンクオーダーのみでご覧いただけます。

イベント詳細

http://www.remixfilm.org/

主催

5th-element.jp

協賛

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)

著作者 :
最終更新日 : 2014-07-30 17:19:42
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