「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に意見書を提出しました。

MIAUは、文化庁の「著作物等の利用円滑化のためのニーズの募集」に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2015年7月27日

「著作物等の利用円滑化のためのニーズ」意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

(1) どのような種類の著作物等をどのような場面、方法で利用するにあたり課題がありますか。現在又は将来想定される課題について具体的に御記入ください。また、そのような利用ができないために、既にビジネスに支障が生じている、又は支障が生じうることが考えられる場合は、それについても具体的に記載をお願いします。

1. いわゆる自炊代行など、ユーザーが合法的に入手した著作物のデジタル化・アーカイブを、有償無償問わず第三者に依頼することができない。

デジタル化やアーカイブ化はユーザーにとっても重要な視点である。書籍を例に取ると、自身が合法的に所有する書籍をデジタル化しようとした場合、現状では所有者自身がスキャンせねばならないことになっている。しかし高齢者や蔵書が大量にある人にとって、それは敷居が高く、また時間もかかる。その点を解消するためにいわゆる自炊代行業が存在するが、現在権利者が自炊代行業者に対して訴訟を起こし、その利用や発展が止まってしまっている。

またVHSテープやレコードなどのアナログメディアも、その再生機器が今後は入手困難になることが予想される。そのためにもメディアチェンジを代行する事業者を認める必要がある。

2. ユーザーが合法的に入手、あるいは自身が作成したソフトウェアが携帯電話やタブレット端末などのOSによって実行させることができない場合、その制限を解除(いわゆるJailbreakやRoot化)して、それらのソフトウェアを実行させることができない。

現状iOSなどのスマートデバイス向けOSでは、そのソフトウェアの実行や配布に対して、OSを提供するベンダーとの有償契約が必要となっている。またそのベンダーが不適切だと判断したソフトウェアは、アプリストアに並べることもできない。またその判断理由が明らかにされないことも多い。

しかし任意の端末の上で動作するソフトウェアを記述し、それを実行することは、プログラマおよびその端末を購入したユーザーの自由である。教育の現場では、教員が開発した教材を生徒のタブレット上で動作させられないなどの弊害も出てきている。

3. 教育や批評、セキュリティ検証、公正に入手したコンテンツの視聴やアーカイブ目的などの公正かつ必要な複製を行うために、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避する行為ができない。

教育や批評を行う場合、手法として対象の引用は必要不可欠である。しかしDVDやBru-layなどの映像媒体やテレビ番組には、コピーコントロールないしアクセスコントロールがかけられており、現状ではその解除は目的を問わず違法とされている。

現在そのアクセスコントロールが事由により、ユーザーが合法的に入手したコンテンツにもかかわらず、オープンソースプラットフォームでは視聴することができない。あるいはそのコンテンツをバックアップする目的で私的複製する際も同様である。SACDやDVD Audio、DTS Music Discなど、今後プレイヤーの普及が望めないソフトについても、ユーザー自身でのリッピングによるデータ取り出しやバックアップを認めるべきである。

一方でソニーBMG製CD XCP問題のように、コピーコントロールのソフトウェアにセキュリティ上の問題があることがユーザー自身の検証によって初めて明るみに出るなど、ユーザーによるセキュリティ検証が重要な役割を果たすことがある。この事例を考えれば、コピーコントロールやアクセスコントロールを回避することを一律に違法とすることは、消費者の財産やプライバシー保護の観点で大きな問題がある。

4. 読み上げ機能や点字変換機能を利用するため、電子書籍のDRMを解除する行為ができない。

我が国においても電子書籍市場は拡大し、一般的なものになりつつある。電子書籍の利点として、紙の本では難しかった自動読み上げや点字ディスプレイへの対応が容易であることが挙げられる。

しかし現実として、電子書籍にはDRMがかけられており、そのような利点を活かすことができない状況がある。これは障害者への情報アクセスを不当に害している。

5. ハードウェアドングルが実行に必要なソフトウェアにおいて、そのソフトウェアのサポート切れやハードウェアインターフェイスの進化によって、そのハードウェアドングルが物理的に利用できなくなった場合、そのソフトウェアにドングルを回避するような改変を加えることができない。

6. 情報公開請求によって開示された行政文書や、行政が公開しているデータを、ユーザーがウェブサイト上で公開したり、利用したりすることができない。

情報開示請求に応えるための行政文書の複製は権利制限されているが、それを広く知らしめ、批評のためにウェブサイトなどにアップロードすることが、時に複製権や公衆送信権、あるいは送信可能化権によって問題となったケースがある。これは市民の知る権利や、ジャーナリズムを害することがある。またこれは政府の進めるオープンデータおよびオープンガバメント推進政策を阻害する。

7. 批評やオンラインショップやネットオークション等で販売するため、その商品の写真(書影やジャケット等)を撮影し、それをウェブサイト上に掲載することができない。

Eコマースの普及により、現在は事業者同士、あるいは事業者消費者間の取引だけでなく、インターネットオークションやフリーマーケットアプリなどを用いた消費者同士での取引が実施されるようになってきている。この際はその商品の状態を示すために商品の写真を掲載することが重要であるが、現状ではそのような商品イメージをウェブサイトに掲載することに許諾が必要である。しかしこれは権利者の権利処理コストをあげるのみで、かつ迅速な流通を害するのみである。

8. 会議資料や取材資料作成など業務のために、著作物を複製し、利用することができない。

9. Podcastや動画作成、DJミックスなどCGMコンテンツ作成の際に、音楽をBGMとして用いたくても、現状の包括契約モデルでは著作隣接権をクリアする手続きが煩雑で、利用料金の目安もない。

(2) (1)で挙げる利用は、現在の著作権法のどの規定(権利に関する規定・権利制限規定)との関係で課題がありますか。

  • 1. 著作権法第30条
  • 2. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 3. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 4. 著作権法第2条・第30条・第113条・第120条
  • 5. 著作権法第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第30条
  • 6. 著作権法第30条
  • 7. 著作権法第30条
  • 8. 著作権法第30条
  • 9. 著作権法第21条・第23条・第30条

(3) (1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ①権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、具体的にどのような制度を望みますか。また、そのような制度設計が望ましいと思われる理由を述べてください。

当該の行為が実施できるような権利制限規定、特に個別規定でなく、包括的な権利制限規定を創設すべきである。その際には米国のフェアユース規定を範とし、さらに現代の情報通信環境に即し、言論の自由を担保する、先進的な「日本型フェアユース」の導入を目指すべきである。

(1), (2)で挙げられた課題の解決方法について ②権利制限規定の見直しによって解決すべきであるとお考えの場合、(1)に挙げた利用が著作権者等の利益を不当に害さない(著作権者等の正規のビジネスとの競合、衝突の有無や度合いを含む。)と判断する理由は何ですか。

1. あくまでも正規に入手した著作物のメディアチェンジにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。

2. 自身のデバイスの上で動かすソフトウェアに関わるものにすぎないため、著作権者等の利益を不当に害さない。ソフトウェアの違法コピーとは論点が異なる。

3. 公正かつ必要な複製であるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

4. 障害者の情報アクセスを担保するためであるから、著作権者等の利益を不当に害さない。

5. 正規に購入したソフトウェアを実行するためにすぎないから、著作権者等の利益を不当に害さない。

6. 市民の知る権利やジャーナリズムを担保するため、著作権者等の利益を不当に害さない。

7. 目的とする著作物そのものをやりとりするものではなく、その流通に資するものであるため、著作権者等の利益を不当に害さない。店頭に陳列されている状態と変わらない。

8. 現実問題としてこのような軽微な利用は広く行われており、多くの人が違法状態にある状況は打開すべき。また現在議論されているTPPの知的財産条項に著作権侵害の非親告罪化が導入されるという議論もあり、その際のセーフガードとしても議論すべき。

9. BGMなどの軽微な利用は、著作物そのものを単独で利用するわけではなく、音源配信とはバッティングしない。よって著作権者等の利益を不当に害さない。

③著作権の集中管理の促進など、ライセンシング体制の充実によって解決すべきとお考えの場合は、具体的にどのような環境整備を望みますか。

特になし。

④その他の解決方法について御提案があれば、理由とともに具体的に御記入ください。

拡大集中許諾制度(Extended Collective Licensing; ECL)の導入なども検討し、利用したいユーザーが自由に正しく利用しやすい環境整備を進めることが、最適なクリエーターへの適切な対価還元につながる。

以上
著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2015-07-31 23:24:26

文化庁 文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会で意見発表をしました

平成27年度文化庁文化審議会著作権分科会「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」の委員として、MIAU代表理事の小寺信良が任命され、その第1回の審議が平成27年7月3日に実施されました。その審議の中で「クリエーターへの適切な利益還元」について、主婦連合会と共同で意見発表を行いました。

意見発表に使用した資料は下記のとおりです。

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2015-07-06 20:23:17

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2015」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2015」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2015年5月20日

「知的財産推進計画2015」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

アーカイブの利活用に関して

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開を

アメリカ議会図書館や欧州委員会のEuropeanaは、パブリックドメインとなった書籍・映画・音楽等のアーカイブ・オンラインでのデータ配信に熱心である。著作権が切れパブリックドメインとなった著作物は、速やかに全国民が利用しやすい形態で提供し、我が国の文化の向上に資するのが、文化を担う行政機関の責務である。

我が国には著作権が消尽し、文化的意義が大きいにも関わらず、鑑賞・閲覧の困難な戦前の作品が多数存在する。市場性が薄くなり著作権も切れた作品については国が主導して保存・公開する必要性が高いにも関わらず、こうした点についての現状認識・問題意識が乏しいのは大変遺憾である。

また我が国では著作権の切れた書籍について、権利を持たない者の申し出によって国立国会図書館ウェブサイト上での提供が一時凍結されたことがある。今後このような不必要な配慮を行わないよう知的財産推進計画に明記することを求める。

アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を

放送番組のアーカイブ化およびその一般利用は、2003年のNHKアーカイブス設立をきっかけに本格的にスタートした。当時から実践されてきた権利処理のモデルは非常に厳格なものであるが、これが後々他の事業者の権利処理のモデルとなった。だがNHK基準の厳格な権利処理にかかるコストでは民間事業は成り立たず、事実上の参入障壁となっている。

権利処理のうち、膨大な人件費がかかっているのは肖像権の処理であり、特にタレントなど契約によって出演契約が行なわれた者ではない、映像に収められた一般市民の権利許諾が大きな負担となっている。

我が国においては、肖像権は明文化された権利ではなく、判例によって一部パブリシティ権などが認められた例があるに過ぎないが、一般市民の間では過剰に権利を拡大して解釈する傾向が強まっているのも事実である。

このようなバランスを考慮し、収蔵された放送番組の利活用においては、研究および教育利用に限定した上で、オプトアウトで始めたらどうか。その課程で人物の特定および権利処理の手がかりが掴める可能性もあり、事業者の権利処理の負担が軽減できる。アーカイブは、蓄積しても利用されなければただの死蔵であり、利用開始が長引けばそれだけ資産価値を減少させ続ける結果となる。放送番組のアーカイブ利活用については、最終的には国民の直接視聴に繋がることを睨みつつも、資料としての価値を優先する形で、現実的な手段を検討すべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開を

インターネットを利用した選挙活動が解禁された今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるよう、政見放送をインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

フェアユース規定の導入を

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入されたが、これは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。よって知的財産計画2015において、再度権利制限の一般規定の導入の方針を示し、ユーザーによるアーカイブされたコンテンツの利用の利便性の向上及び国内産業の活性化を目指すべきである。

行政の持つデータのライセンスを利用しやすいものに

政府や自治体の持っている各種データもアーカイブとして捉え、行政の持つデータの利活用についても知財戦略に盛り込み、知財戦略としてもオープンガバメントを推進していくべきである。例えば、過去に行政機関が発刊した白書や報告書といった、税金で作成され極めて公共性の高い文書にまで著作権の制限がかかり、全文のネット上での公開に支障が発生するような事態は、極めて非民主主義的であり悪しき官僚主義的な矛盾に満ちていると評さざるをえない。「オープンガバメント」の推進に不可欠なオープンデータを進めていくためには、行政の持つビッグデータを国民が利用しやすいライセンスと形式で公開することが重要である。経済産業省や文化庁が進めているような、行政のデータをパブリックドメインないしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて公開する取り組みを、国全体として進めていくべきである。

模倣品・海賊版対策に関して

ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備に関して

クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備を

クラウド・コンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、メディア変換やフォーマット変換などの公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築を

そもそも私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

また2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会での議論は、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間 がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみであった。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考える。以上の認識から主婦連合会と共同で2015年3月27日に文化庁に対して意見書を提出した(http://miau.jp/1427440922.phtml)。本意見書の内容を知的財産推進計画2015にも同様に盛り込むよう求める。

著作権の権利制限規定の見直しについて

情報技術の進化によって、新しく魅力的なサービスの可能性が広がる中で、著作権の権利制限規定の見直しについて、新たな時代に対応できる柔軟な規定についての検討を含め、未来志向の議論が展開されることを要望する。

著作権法第三十条第一項第一号について

本小委員会ではクラウドサーバーが著作権法第三十条第一項第一号(以下本条文)に該当するかどうかが議論され、小委員会の中ではいくつかの個別事例 について該当しないことが確認された。しかし本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっている。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望する。

クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要がある。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからだ。来期に予定される対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを要望する。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考える。特に私的録画に関しては、ダビング10との関係 という視点を避けて通ることはできない。公共性のある地上波のテレビ放送に、メディアシフトが事実上不可能なDRMがかけられている現状について、その 見直しも視野に入れて議論を進めることを要望する。

その際には総務省はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考える。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未 来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからだ。

TPP(環太平洋経済連携協定)の知的財産分野に関して

現在協議が進んでいるTPPの知的財産分野は我が国の知的財産戦略を考える上ではTPP交渉は大きなかなめであり、結果によっては本報告書で提言されている積極的な取り組みもTPPによって実現不可能となる可能性が十分にある。このような国際協定が国民、しいては国会議員ですらアクセスできない秘密下で議論されていることは大変遺憾である。知財戦略としてTPP交渉の公開、及びこれまでの交渉の情報公開を求めるよう報告書に明記し、開かれた知財戦略の議論を進めるべき。

TPPの知的財産分野で議論されているとされる論点のうち、特にアーカイブの利活用という観点からは特に下記の論点が懸念される。ただしTPPの知的財産分野で懸念される論点は下記のみではない。必要であれば当協会がTPP政府対策本部に提出した意見書(http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/dantaiiken/001.pdf)を参照されたい。

著作権保護期間延長

孤児作品(Orphan Works)の保存と活用に関しては本報告書内でも問題として提起されている。著作権保護期間の延長はこの孤児作品を増やす最も大きな要因である。

また著作権の保護期間が早く終われば、その著作物を用いて二次的著作物を制作したり、その作品を上演したりする際の許諾や著作権使用料が不要となるため、二次的著作物の制作や作品の上演が大きく加速される。結果として近代や現代の作品を演奏・上演する楽団や劇団などが増加し、著作物の漫画化やノベライズ、パロディといった新たな創作物の出現が活性化される。

現代の著作物においては非常の多くの人がその制作に関わっており、制作に関わった関係者にも著作隣接権が付与される。その著作物を保存・活用しようとした場合、著作隣接権者を含めたすべての著作者に許諾を取る必要があるが、数年前に制作された著作物であっても著作者が不明という理由で許諾を取ることが不可能なケースも発生している。より高い創作性をもった環境を維持するためには、むしろ著作権保護期間は短縮すべきであり、さらには著作権を放棄し、パブリックドメイン化する仕組みも必要である。

さらに著作権が切れた著作物を利用することで、新たなビジネスが生まれている。例えば著作権が切れた書籍のデジタル化を進めている「青空文庫」のデータは数多くの電子書籍端末などに収録されており、日本における電子書籍の普及に役立っている。しかし著作権保護期間の延長によって、このような創造のサイクルが大きな打撃を受け、新たなビジネスチャンスを失うことになる。

著作権侵害に対する職権による刑事手続(著作権侵害の非親告罪化)

わが国の著作権法においては、著作権侵害における刑事手続は権利者からの申し立てによるもの(親告罪)であるが、TPP交渉においてはこれを職権によって刑事手続を行うことができる(非親告罪)ようにする要求が米国などから提出されているようである。しかしわが国は著作権侵害を非親告罪とすべきではない。

わが国には二次的著作物やパロディに関する法制度が存在せず、司法では二次的著作物やパロディは著作権侵害と判断される。しかし現実には二次的著作物やパロディによる作品が数多く存在しており、今やそれらは日本の文化の一翼を担っている。そしてこのわが国独自の個性豊かな文化は世界に向け発信され、世界の共感を得ている。これは知的財産戦略本部が策定した「知的財産戦略2013」の中にも盛り込まれている「クール・ジャパン」の源泉となっている。このような文化が熟成されたのは二次的著作物やパロディについて、その制作者と原著作者との間に信頼関係があり、著作者が黙認していたことに由来する。しかし著作権侵害が非親告罪となれば、このような信頼関係に関わらずあらゆる二次的著作物やパロディが刑事告訴の対象となり、パロディ法制などのないわが国においては「クール・ジャパン」の源泉となる文化が萎縮する結果となり、国益を害する。

また著作権侵害が非親告罪となることで相対的に捜査機関の権力が増大し、これまで見逃されていたような軽微な著作権侵害について著作権侵害を理由に捜査機関が逮捕することができるようになる。またインターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できないという根本的な問題もあり、これは別件逮捕などの違法な捜査を助長するおそれがある。

知的財産に関する基本的な視点に関して

著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。 なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

アクセスコントロール回避規制

2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避することが違法となった。無条件のアクセスコントロール回避規制は、ユーザーによるコンテンツのアーカイブを不可能とし、国民の正当なコンテンツ利活用を妨げる。特にコンテンツの視聴のためであってもオープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要である。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。

またアクセスコントロール回避規制はわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なっており、それに対する手当は一切なされていない。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきである。

電磁的な一時的複製の規制

著作物を一時的に電磁的なかたちで記憶装置に複製する行為についても複製権の対象とし、許諾なく電磁的な一時的複製を行った場合も著作権侵害とするような枠組みの策定が議論されている。しかしわが国は電磁的な一時的複製を著作権侵害とする要求を受けいれるべきではない。また国際的な経済連携協定に電磁的な一時的複製を規制する条項が入ること自体に強硬に反対すべきである。

現代のコンピュータはプログラムとそのプログラムが処理するファイルの一時的な複製をメモリーに自動的に作り続けることで動作する。またインターネットの利用においては、ネットワークから受け取ったデータを先読みしてメモリーにバッファしておくことで大容量のストリーミングコンテンツを快適に利用することができる。また一度見たウェブサイトのデータをハードディスクに一時的に保存しておくことで、高速なウェブサイトのブラウズが可能となり、またトラフィックの軽減につながるため、ネットワーク資源を有効に活用することができる。このように電磁的な一時的複製はコンピューティングを支える基幹の技術であり、電磁的な一時的複製を規制することはIT技術の実際と大きくかけ離れており、全く現実的ではない。

テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2015-07-06 19:53:47

『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました

MIAUは、主婦連合会と共同で、文化庁に対し『「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2015年3月27日

文化庁 長官 青柳 正規 様
 文化庁 著作権課 課長 森 孝之 様

「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」および今後の検討事項に関する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)
主婦連合会

2014年7月に設置された著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(以下本小委員会)における議論の成果として、2015年2月に「クラウドサービス等と著作権に関する報告書」(以下本報告書)がとりまとめられました。本報告書の「おわりに」では、残された課題として「クリエイターへの適切な対価還元に係る課題」を挙げ、今後、本小委員会で引き続き検討を深めるとしています。

クリエイターへの適切な対価還元に係る課題の議論は大変重要な課題だと認識しておりますが、進化を続けるクラウドなどIT技術を駆使したサービスと著作権の問題について、本小委員会で議論が十分に尽くされたとは言いがたい状況にあると私たちは認識しています。

そもそも本小委員会は、コンテンツの利用環境が刻々と変化する中、「我が国の著作権法における私的使用目的の複製の範囲とクラウドサービスとの関係が不明確であるため、事業者がサービス展開を萎縮しており、当該関係を整理し、事業者が積極的にサービス展開できるように所要の措置を講じてほしい」という事業者からの要望や、知的財産政策ビジョン(平成25年6月知的財産戦略本部決定)の中で「著作物の公正な利用と著作物の適切な保護を調和させ、新しい産業と文化の発展を続けるため、クラウドサービスやメディア変換サービスといった新たな産業の創出や拡大を促進する全体的な法的環境の整備を図るため、著作権の権利制限規定の見直しや円滑なライセンシング体制の構築などの制度の在り方について検討を行い、必要な措置を講じる」とされていることなどをうけて設置されたものです。

しかしながら、新しい産業と文化の発展を続けるための議論であったはずが、実際の議論はロッカー型クラウドサービスという限定的なサービス類型に関する議論にかなり時間がかかってしまい、ロッカー型クラウドサービス以外のものについては現時点での明確な立法事実があるかどうかが議論されたのみでした。つまりクラウドサービス等と著作権についての議論が十分に行われたとは言えない状況にあると考えます。

以上の状況認識に立ち、本報告書、および本小委員会の今後の検討事項に関して、消費者、そしてインターネットユーザーの立場から、下記の通り意見を述べます。

1. 著作権の権利制限規定の見直しについて

情報技術の進化によって、新しく魅力的なサービスの可能性が広がる中で、著作権の権利制限規定の見直しについて、新たな時代に対応できる柔軟な規定についての検討を含め、未来志向の議論が展開されることを要望します。

2. 著作権法第三十条第一項第一号について

本小委員会ではクラウドサーバーが著作権法第三十条第一項第一号(以下本条文)に該当するかどうかが議論され、小委員会の中ではいくつかの個別事例について該当しないことが確認されました。しかし本条文が、制定された趣旨とは異なる形で解釈されることで、用途に関わらずインターネットサーバーが本条文の該当機器となるおそれがあることから、情報通信サービスの萎縮を生むことになっています。事業者だけでなく消費者やユーザーもサーバーをレンタル、あるいは自ら運用するような技術革新があるなかで、サーバーが本条文の該当機器から除外されることを明確にするなど、現実に即した形で本条文の概念が見直されることを要望します。

3. クリエイターへの適切な対価還元に関する議論について

クリエイターへの対価の還元については、常にユーザー側のコピー制限との関係で論じる必要があります。ユーザーの私的複製の自由と対価の還元は密接に関係する、いわば車の両輪だからです。来期に予定される対価の還元の議論は、ユーザーの自由を制限するDRMとのバランスという視点を盛り込んで行われることを要望します。そのことにより、保護と利用のバランスのとれた新しい制度設計につながると考えます。特に私的録画に関しては、ダビング10との関係という視点を避けて通ることはできません。公共性のある地上波のテレビ放送に、メディアシフトが事実上不可能なDRMがかけられている現状について、その見直しも視野に入れて議論を進めることを要望します。

その際には総務省 [1] はじめ、関係省庁の審議会との合同会議の設定が必要であると考えます。大きな課題となっている、私的録画についての対価の還元議論を解決する道は、多くの関係者の参加によって、より合理的で、豊かなサービスの可能性を縛らず、コンテンツ産業、録画機器メーカー、消費者・ユーザーすべてにとってのより良い未来の環境整備となる新たなルール設定を決断する以外にないと考えるからです。

以上

[1] 本小委員会の議論の中でも引用された総務省情報通信審議会の『「デジタル・コンテンツ流通の促進等」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に関する答申』では、対価還元の検討の際は「コピー制御方式などコンテンツ保護のあり方に加え、コンテンツの流通の促進、製作力の強化によるコンテンツ市場の拡大等、より幅広い観点」の議論も求められています。

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2015-03-27 17:04:00

MIAUは「リミックス映画祭2014」に協賛します

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は、2014年8月2日に開催される「リミックス映画祭2014」に協賛します。


「リミックス映画祭2014」とは

リミックスカルチャーの祭典「リミックス映画祭」が2014年の夏、本邦初公開となる新作ドキュメンタリーを引っ提げてやってくる!

日本初公開となる「Copiad Malditos~ステファンの挑戦」をはじめとする、リミックスカルチャーとデジタル時代の著作権を多角的に見つめたドキュメンタリー作品がデンマーク、アメリカ、スペインの3カ国から大集合!

チャックDやジョージ・クリントンらのインタビューでヒップホップのサンプリングの軌跡をたどる「コピーライトクリミナルズ~音楽は誰のもの?」と、ライブハウスはもちろん、ピザ屋のCDデッキからも使用料の徴収に躍起なスペイン音楽著作権団体SGAEと現代のアーティストの報酬とのズレを捉えた「Copiad Malditos~ステファンの挑戦」の抱合せ上映にスペシャルゲストを交えたディスカッションを行う。オープニングには、DJデンジャーマウスら出演の「グッドコピー、バッドコピー」を無料上映。合計3作品の上映を通じ、DJやクリエイター、弁護士など多彩な顔ぶれが集まる参加型フェスティバル。

開催日

2014年8月2日 開場 15:30 / 開演 16:00

タイムスケジュール

16:00〜
映画『グッドコピー、バッドコピー』(2007年 デンマーク)

17:30〜
ディスカッション(出演:福井健策氏[弁護士]、KAZUHIRO ABO氏[DJ、トラックメイカー、ライター])
映画『コピーライト・クリミナルズ ~ 音楽は誰のもの?』(2009年 アメリカ)
映画『コピアッド・マルディトス ~ ステファンの挑戦』(2011年 スペイン)【日本初公開】

会場

UPLINK FACTORY
〒150-0042東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル
http://www.uplink.co.jp/

参加料金

2,500円(別途ワンドリンクオーダー必要)
※『GOOD COPY BAD COPY』のみワンドリンクオーダーのみでご覧いただけます。

イベント詳細

http://www.remixfilm.org/

主催

5th-element.jp

協賛

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2014-07-30 17:19:42

『「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対する意見』を提出しました。

MIAUは、内閣官房IT総合戦略室に『「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対する意見』を提出しました。

内容は以下の通りです。

2014年7月24日

「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

注:本意見における「消費者委員会の意見」とは平成 26 年7月 15 日に内閣府消費者委員会が発表した『「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に関する意見 』(http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2014/166/doc/20140715_iken.pdf)を指す。

1. 「個人が特定される可能性を低減したデータ」(p.7-8, p.10)について

意見:制度設計にあたっては、加工方法について、どのような事業であっても、個人の権利利益の侵害のおそれが極力少なくなるよう個人情報保護法のなかで担保されるようにすべき。そのため、加工方法の自主規制ルールの認定にあたっては、プライバシー影響評価を義務づけるべき。その上で、認定自主規制ルールに基づく低減加工のデータの第三者提供・目的外利用のみを、本人同意を得ずに認めるとするべき。また、この項目に関する消費者委員会の意見に全面的に賛同する。

理由:パーソナルデータに関する検討会では、技術検討ワーキンググループを中心として、個人が特定される可能性を低減したデータへの加工法を一般には定めないことが明らかにされ、その結果として一律に定めないことになったと承知している。しかし今後の法制度変更の具体化のプロセスにおいては、技術検討ワーキンググループの問題意識が引き継がれるかは明確となっていない。個人が特定される可能性の低減は、事業者にとってはプラスとなる要素は少ないと考えられるため、自主規制ルールが特定可能性を低減せず、再識別禁止に頼るような緩いものへと流れる危険性が高いと考えられる。パーソナルデータの多様性を考慮すると、加工方法の適正性の担保は透明性では足りず、プライバシー影響評価も必要であろう。プライバシー影響評価の中で、再識別の技術的な困難度も明らかにされると考えられる。

2. 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取組の活用(p.10)について

意見:保護の対象となるパーソナルデータの範囲の明確化について、「個人の身体的特性に関するもの等」以外についても、広く進めるべき。

理由: 消費者委員会の意見に同じ。

3.「個人情報の取扱いに関する見直し」(p.11)について

意見:大綱に明示はないが、未成年者の本人同意の問題について、今後検討を深めていくべきであると考える。

理由:パーソナルデータの利活用にあたっては、本人の権利利益の保護のため、本人同意が重要であり、大綱における利活用の促進にあたっても、その基本は変更されていないと理解している。ただ、未成年者には、本来、民法5条で法律行為が制限されており、さらに法定代理人の同意が必要なはずである。しかしながら、個人情報保護の枠組では、自主規制のJIS Q 15001 に基づいて、12〜16歳程度以下の児童について保護者同意を利用者に求める程度のことしか行われていない場合が多い。個人情報やパーソナルデータにもさまざまな程度のものがあることから、全ての場合について民法5条を厳格に適用することは現実的ではないが、個人情報の種類や利用目的に関わらず、一定の年齢に満たない子どもでは本人同意の能力を欠くと判断すべき場合はある。いくつかの種類の「オプトアウト」についても、本人同意の能力が十分でない場合に、オプトアウトによって本人同意とみなすことは、かえって事業者側にもリスクを生み、利活用の壁となると考えられる。

従って、未成年者の個人データの本人同意や保護者同意のあり方について、一定の規律を示すべく、今後検討を深めていくことが必要である。ひとつの方向性としては、米国の Children's Online Privacy Protection Act と同様なものがありうるが、必ずしもそれにこだわるわけではない。

4. 「利用目的の変更」(p.11)について

意見:利用目的の変更については、新旧対照表や変更点のポイントなどを用いて、変更点を消費者に明確に伝えるような規律を整備すべき。

理由:長文の分かりにくい個人情報保護方針の新版のみを提示する事業者が少なくないが、それらは消費者の真摯な同意をとろうとしているとは思われない。消費者が事業者の態度を好感し信頼することで利用しやすくなることこそが、産業振興には重要である。

4-2. 「利用目的の変更」(p.11)について

意見:利用目的の変更について、少なくとも本質的な追加部分については新たな明示的同意を原則とすべきである。

理由:大綱案への全国地域婦人団体連絡協議会の意見(2014年6月16日)にもあるように、既に目的外利用の潜脱事例が現れている。騙し討ち的なオプトアウトによる、サービスのコンテキストに沿わない顕著な第三者提供を許容することは、個人の権利利益を損ね、また消費者がサービス利用を控えることにもつながる。これは産業振興の面でもマイナスとなる。ただし、利用目的の変更について、その一部削除や些細な修正については同意の取り直しは不要とするような弾力性は認めてもよい。

5. 「第三者提供におけるオプトアウト規定」(p.12)について

意見:第三者提供におけるオプトアウト規定を利用できる事業者について、法で定める特定の種類の事業者、及び第三者機関の認定する事業者に限定するべき。

理由:オプトアウト規定は、いわゆる名簿屋により濫用され問題となっているところであり、原則として認めないことが望ましいが、オプトアウト規定を利用する第三者提供、あるいは本人の事前同意のない第三者提供が社会的に正当な事業も存在しうると考えられるところではある。そこで、それらの例外については認めた上で、他の場合は事前同意のない第三者提供を認めないとするのが適切であると考える。

5-2. 「第三者提供におけるオプトアウト規定」(p.12)について

意見:第三者機関への届け出を、オプトアウト規定による第三者提供を行っている事業者のみではなく、提供を受ける事業者にも課すべき。また、届出事項には、第三者提供を行っている事業者については提供先、提供を受ける事業者には提供元を加えるべき。

理由:オプトアウト規定は、いわゆる名簿屋により濫用され問題となっているところであり、 その利用を極力抑制するような、ごく限られた場合にのみ適用されるような例外規定となる制度設計が必要と考える。そのためには、名簿屋の把握のみでは足りず、その名簿の利用者も把握する必要がある。また、不正な名簿が出回った場合の対策のひとつとして、名簿の取引ルートの把握は必須と考える。既に述べた事業者の限定を行う場合でも、提供を受ける事業者と事業者間の関係の把握は必要と考える。

5-3. 「第三者提供におけるオプトアウト規定」(p.12)について

意見:第三者提供におけるオプトアウトは、個別の事業者に対して求めるものだけではなく、一カ所に届け出るだけでオプトアウト第三者提供に対して原則有効となる一括オプトアウトの制度を検討すべき。

理由:現状、名簿屋間の取引で名簿個人情報は拡散しており、個人が特定名簿に由来する自身の個人情報について、オプトアウトを完全に求めることはほぼ不可能である。一括オプトアウトは、名簿屋間での名簿の拡散によってオプトアウトが現実的に不可能となっている現状への打開策である。また、一括オプトアウトを多くの個人が申請することにより、名簿屋の取引対象とする名簿の価値自体を低減させ、名簿屋ビジネスを抑制していく効果も長期的には期待できる。名簿屋以外の正当な事業において一括オプトアウトに適さないもの(例えば信用情報機関の信用情報など)は、事業者や業種の単位で第三者機関が認定して、あるいは法の例外として除外することにすればよい。一括オプトアウトのための機関は、第三者機関そのものである必要はなく、認可法人や特殊会社などの形態もありうるだろう。あるいは、第三者機関が認定する複数の民間組織が一括オプトアウトを個人に代わって行うといった立て付けもありうる。

6. 「民間主導による自主規制ルール策定・遵守の枠組みの創設 」(p.12-13)について

意見:消費者委員会の意見に同じ。

理由:消費者委員会の意見に同じ。

7. 「第三者機関の体制整備 」(p.13-15)について

意見:消費者委員会の意見に同じ。

理由:消費者委員会の意見に同じ。

8. 「行政機関、独立行政法人等、地方公共団体及び事業者間のルールの整合性 」(p.15)について

意見:個人情報及びプライバシーの保護という観点からは、地方公共団体について、各地方公共団体に独自の個人情報保護条例がある現状に代えて、地方公共団体個人情報保護法を設け、各地方公共団体においては施行条例を設けるといった形に改めることを検討するべき。なお、行政機関、独立行政法人等については、総務省「行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会」などにて必要な検討がすすめられるものと理解している。

理由:現在、地方公共団体においても「ビッグデータ」のかけ声でパーソナルデータを利活用する事業が積極的に行われているが、大綱では国から地方公共団体に対しては情報提供を行うとするに留まっていて、規律のループホールとなる懸念がある。

例えば、佐賀県武雄市では、武雄市図書館のカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)による指定管理について、図書館利用者の自動貸出機利用に際して行われるTポイント(CCCのポイントプログラムの名称)の付与について、図書館システムがCCCに送信するのは「T会員番号、利用年月日、利用時刻、ポイント数」のみであり氏名等を含まないので個人情報に該当しないとしている(武雄市教育委員会臨時会[H24.7.10]会議録、及び武雄市平成25年3月定例会の石丸定市議一般質問に対する古賀教育部長答弁)。しかし、T会員番号はCCCにおいては会員データベースと照合して容易に特定の個人を識別することができる。武雄市の認識は容易照合性を個人情報の定義に含んでいない武雄市個人情報保護条例に基づけば整合している可能性はある。が、現行個人情報保護法、さらに本大綱が目指す規律の中にあっては個人情報として保護すべき範囲が狭すぎる方向で一致していないのは問題である。また、武雄市図書館では、図書館の利用者証を利用者登録時にTポイントカードと非Tポイントカードを選択させることで、図書貸出時のデータ送信について包括同意としているが、1979年以降、日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」に基づき、ほとんどの図書館では図書館の利用事実を利用者のプライバシーとして固く保護してきたことで慣習的に形成された規律を考慮すると、「個人情報ではない」という判断で個別同意を行っていないのは問題である。

しかし、地方公共団体の個人情報保護条例における個人情報保護の定義が、個人情報保護法とも行政機関個人情報保護法とも整合しない場合があり、また保護の水準が民間と行政機関のいずれにも劣る内容となる場合があるのは、必ずしも全てが個別の地方公共団体の問題ともいえない。これまで、法律による規律を行わず、各地方公共団体に独自の個人情報保護条例を設けるよう求めてきたことの結果である。国が法律で最低限の規律を定めてこそ、全国で一定水準以上の個人の権利利益が保護され、パーソナルデータの利活用につながると考えられる。

8-2. 「行政機関、独立行政法人等、地方公共団体及び事業者間のルールの整合性 」(p.15)について

意見:地方公共団体個人情報保護法を設ける前提で、第三者機関が地方公共団体に対し助言・勧告等を行う権限・権能を持たせるべき。

理由:現在、ビッグデータの活用に少なくない地方自治体が取り組み始めているが、中には、千葉市のように「クローズド(開示不可)×ビッグ(データ量大)」の領域に重点のひとつを置く自治体がある。千葉市では、この領域は住民の個人情報が中心であり多くはセンシティブな性質のものであるため、そのままでは外部に出せるものではないことは認識し、自治体自らが主体となって、将来的な財政負担を抑制する「課題抑制型事業」に用いるとしている。しかしながら、一般論としては、自治体から外部への提供がない場合でも、ビッグデータ事業それ自体がプロファイリング(大綱16ページ)の側面をもつことから、個人の権利利益の侵害につながる危険性はある。また、そのままでは外部提供できない情報を個人特定可能性を低減する加工(大綱10ページ)を行って外部提供などを行う場合の課題は、民間と変わらない。

自治体の事業では、その事業の公益性を考慮する必要はある。しかしそれでもなお、個人の権利利益とのバランスをとる必要がある。また、自治体と係わってパーソナルデータに関係する事業を行う事業者の視点に立っても、独自の条例以外の担保のないパーソナルデータや、個人特定可能性低減データとされるものを自治体から取得するのはリスクがあり、かえって利活用の壁となる。 そして、適切な基準作りには専門的知見が必要とされることから、「国から地方公共団体に対する情報提供」から踏み込んで、第三者機関に地方公共団体に対する権限を付与することを検討すべきと考える。

9. 「いわゆる名簿屋」(p.17)について

意見: 名簿屋から購入する側の規制として、現行個人情報保護法第17条は不十分と言わざるをえない。第三者からの取得については、提供者(個人情報取扱事業者に限定されない)が適正取得したことを確認する義務、ないし努力義務を設けるべきである。また、不正の手段により取得されたと疑われる個人情報が第三者提供された全ての提供先の個人情報取扱事業者について、第三者機関が利用停止や消去の命令を行うことができるとすべきである。

理由:ベネッセ個人情報漏洩事件で、不正持ち出しを行った容疑者が売却した先の名簿屋や、名簿の最終的な購入先への責任追及が十分に行い得ない状況は明らかである。不正な漏えいの被害者になりうる各個人の権利権益の立場からは、グレーゾーンを狭め、不正な手段によって取得された個人情報によって構成される名簿を購入することが実効的に抑制される必要がある。また、被害が起きた際に、実効的な被害回復が図られる必要がある。

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2014-07-24 12:58:04

知的財産戦略本部「知的財産推進計画2014」策定に当たっての意見募集に、意見書を提出しました。

MIAUは、政府の知的財産戦略本部「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見募集に、下記の意見書を提出いたしました。

内容は以下の通りです。

2014年5月16日

「知的財産推進計画2014」に対する意見

一般社団法人 インターネットユーザー協会(MIAU)

アーカイブに関するタスクフォース報告書に関して

【要旨】

本報告書においては下記を求める。

現状の課題

  • 著作権の切れた出版物のネット上での速やかな公開
  • 放送番組の権利処理にオプトアウトの導入
  • 政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開
  • 国が主導する著作権の切れた映像コンテンツのネット公開

利活用促進のために

  • TPPへの慎重な対応
  • フェアユース規定の導入
  • クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備
  • 使いやすい行政の持つデータのライセンス採用

【全文】

II. アーカイブの現状と課題

1. アーカイブの分野別の状況

(2) 出版物など

著作権の切れた出版物のインターネット上での速やかな公開を

アメリカ議会図書館は、パブリックドメインとなった書籍・映画・音楽等のアーカイブ・オンラインでのデータ配信に熱心である。700万点以上のデジタルデータが用意され、図書のみならず、映画、広告、ラジオ音声など幅広い 資源が用意されている。著作権が切れパブリックドメインとなった著作物は、速やかに全国民が利用しやすい形態で提供し、わが国の文化の向上に資するのが、文化を担う行政機関の責務である。

ひるがえってわが国では著作権の切れた『大正新脩大蔵経』『南伝大蔵経』について、著作権を持たない一般社団法人日本出版者協議会及び大蔵出版株式会社の申し出によって国立国会図書館ウェブサイト上での提供が一時凍結され、『南伝大蔵経』については未だ提供されないままとなっている。『南伝大蔵経』についてもすみやかに国立国会図書館ウェブサイト上での公開を行い、また今後このような不必要な配慮を行わないよう知的財産推進計画に明記することを求める。

(3)放送番組

アーカイブされた放送番組の権利処理にオプトアウトの考え方を

放送番組のアーカイブ化およびその一般利用は、2003年のNHKアーカイブス設立をきっかけに本格的にスタートした。当時から実践されてきた権利処理のモデルは非常に厳格なものであるが、これが後々他の事業者の権利処理のモデルとなった。だがNHK基準の厳格な権利処理にかかるコストでは民間事業は成り立たず、事実上の参入障壁となっている。

権利処理のうち、膨大な人件費がかかっているのは肖像権の処理であり、特にタレントなど契約によって出演契約が行なわれた者ではない、映像に収められた一般市民の権利許諾が大きな負担となっている。

わが国においては、肖像権は明文化された権利ではなく、判例によって一部パブリシティ権などが認められた例があるに過ぎないが、一般市民の間では過剰に権利を拡大して解釈する傾向が強まっているのも事実である。

このようなバランスを考慮し、収蔵された放送番組の利活用においては、研究および教育利用に限定した上で、オプトアウトで始めたらどうか。その課程で人物の特定および権利処理の手がかりが掴める可能性もあり、事業者の権利処理の負担が軽減できる。アーカイブは、蓄積しても利用されなければただの死蔵であり、利用開始が長引けばそれだけ資産価値を減少させ続ける結果となる。放送番組のアーカイブ利活用については、最終的には国民の直接視聴に繋がることを睨みつつも、資料としての価値を優先する形で、現実的な手段を検討すべきである。

政見放送や国会審議などの公的なコンテンツの公開を

インターネットを利用した選挙活動が解禁された今、有権者がインターネットを用いて選挙に関する情報を集められるよう、政見放送をインターネットで見られるような取り組みを進めるべきである。また政見放送や国会審議などの公的なコンテンツ及び災害に関する報道などの公共性・緊急性の高い番組については、通常放送に掛けられているCASを外して放送することを義務化し、国民が利用しやすい環境の整備を進めるべきである。

(4) 映画

国が主導する著作権の切れた映像コンテンツのネット公開を

「ネットを通じた映画の提供については、民間の映像コンテンツの配信サイトから行われている」とあるが、これでは不十分である。わが国には著作権が消尽し、文化的意義が大きいにも関わらず、鑑賞・閲覧の困難な戦前の映像作品が多数存在する。市場性が薄くなり著作権も切れた作品については国が主導して保存・公開する必要性が高いにも関わらず、こうした点についての現状認識・問題意識が乏しいのは大変遺憾である。こうした映像作品について、国家が主導してアーカイブを作成しネット上で公開していくという、アメリカ議会図書館が行っているAmerican Memoryプロジェクトに倣った行動を早急に実践していく必要があろう。

III. アーカイブの利活用の促進のために

1. アーカイブの利活用の促進に係る取り組み

(2) 利用者の活動をしやすくすること

[1] TPP(環太平洋経済連携協定)の知的財産分野への慎重な対応を

現在協議が進んでいるTPPの知的財産分野はわが国の知的財産戦略を考える上ではTPP交渉は大きなかなめであり、結果によっては本報告書で提言されている積極的な取り組みもTPPによって実現不可能となる可能性が十分にある。このような国際協定が国民、しいては国会議員ですらアクセスできない秘密下で議論されていることは大変遺憾である。知財戦略としてTPP交渉の公開、及びこれまでの交渉の情報公開を求めるよう報告書に明記し、開かれた知財戦略の議論を進めるべき。

TPPの知的財産分野で議論されているとされる論点のうち、特にアーカイブの利活用という観点からは特に下記の論点が懸念される。ただしTPPの知的財産分野で懸念される論点は下記のみではない。必要であれば当協会がTPP政府対策本部に提出した意見書(http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/dantaiiken/001.pdf)を参照されたい。

・著作権保護期間延長

孤児作品(Orphan Works)の保存と活用に関しては本報告書内でも問題として提起されている。著作権保護期間の延長はこの孤児作品を増やす最も大きな要因である。

著作権の保護期間が早く終われば、その著作物を用いて二次的著作物を制作したり、その作品を上演したりする際の許諾や著作権使用料が不要となるため、二次的著作物の制作や作品の上演が大きく加速される。結果として近代や現代の作品を演奏・上演する楽団や劇団などが増加し、著作物の漫画化やノベライズ、パロディといった新たな創作物の出現が活性化される。

現代の著作物においては非常の多くの人がその制作に関わっており、制作に関わった関係者にも著作隣接権が付与される。その著作物を保存・活用しようとした場合、著作隣接権者を含めたすべての著作者に許諾を取る必要があるが、数年前に制作された著作物であっても著作者が不明という理由で許諾を取ることが不可能なケースも発生している。より高い創作性をもった環境を維持するためには、むしろ著作権保護期間は短縮すべきであり、さらには著作権を放棄し、パブリックドメイン化する仕組みも必要である。

さらに著作権が切れた著作物を利用することで、新たなビジネスが生まれている。例えば著作権が切れた書籍のデジタル化を進めている「青空文庫」のデータは数多くの電子書籍端末などに収録されており、日本における電子書籍の普及に役立っている。しかし著作権保護期間の延長によって、このような創造のサイクルが大きな打撃を受け、新たなビジネスチャンスを失うことになる。

・著作権侵害に対する職権による刑事手続(著作権侵害の非親告罪化)

わが国の著作権法においては、著作権侵害における刑事手続は権利者からの申し立てによるもの(親告罪)であるが、TPP交渉においてはこれを職権によって刑事手続を行うことができる(非親告罪)ようにする要求が米国などから提出されているようである。しかしわが国は著作権侵害を非親告罪とすべきではない。

わが国には二次的著作物やパロディに関する法制度が存在せず、司法では二次的著作物やパロディは著作権侵害と判断される。しかし現実には二次的著作物やパロディによる作品が数多く存在しており、今やそれらは日本の文化の一翼を担っている。そしてこのわが国独自の個性豊かな文化は世界に向け発信され、世界の共感を得ている。このような文化が熟成されたのは二次的著作物やパロディについて、その制作者と原著作者との間に信頼関係があり、著作者が黙認していたことに由来する。しかし著作権侵害が非親告罪となれば、このような信頼関係に関わらずあらゆる二次的著作物やパロディが刑事告訴の対象となり、パロディ法制などのないわが国においては「クール・ジャパン」の源泉となる文化が萎縮する結果となり、国益を害する。

また著作権侵害が非親告罪となることで相対的に捜査機関の権力が増大し、これまで見逃されていたような軽微な著作権侵害について著作権侵害を理由に捜査機関が逮捕することができるようになる。またインターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できないという根本的な問題もあり、これは別件逮捕などの違法な捜査を助長するおそれがある。

・アクセスコントロール回避規制

2012年10月の著作権法の改正によって、DVDなどにかかっているアクセスコントロール技術を回避することが違法となった。無条件のアクセスコントロール回避規制は、ユーザーによるコンテンツのアーカイブを不可能とし、国民の正当なコンテンツ利活用を妨げる。特にコンテンツの視聴のためであってもオープンソースソフトウェアの利用を制限する現状の制度は、コンテンツ利用促進の観点からも負の影響が大きく、早急に手当が必要である。またコンテンツの批評や引用など、著作権法で認められた用途においても著作物を利用することができない状況を解決する必要がある。

またアクセスコントロール回避規制はわが国のICT技術の発展を不当に妨げ、ひいては日本の家電製品の競争力をも損なっており、それに対する手当は一切なされていない。ユーザーが購入したコンテンツを長く、そしてオープンソースソフトウェアによっても利用できるように規制のあり方を再度検討すべきである。

・電磁的な一時的複製の規制

著作物を一時的に電磁的なかたちで記憶装置に複製する行為についても複製権の対象とし、許諾なく電磁的な一時的複製を行った場合も著作権侵害とするような枠組みの策定が議論されている。しかしわが国は電磁的な一時的複製を著作権侵害とする要求を受けいれるべきではない。また国際的な経済連携協定に電磁的な一時的複製を規制する条項が入ること自体に強硬に反対すべきである。

現代のコンピュータはプログラムとそのプログラムが処理するファイルの一時的な複製をメモリーに自動的に作り続けることで動作する。またインターネットの利用においては、ネットワークから受け取ったデータを先読みしてメモリーにバッファしておくことで大容量のストリーミングコンテンツを快適に利用することができる。また一度見たウェブサイトのデータをハードディスクに一時的に保存しておくことで、高速なウェブサイトのブラウズが可能となり、またトラフィックの軽減につながるため、ネットワーク資源を有効に活用することができる。このように電磁的な一時的複製はコンピューティングを支える基幹の技術であり、電磁的な一時的複製を規制することはIT技術の実際と大きくかけ離れており、全く現実的ではない。

[2] フェアユース規定の導入を

知的財産計画2009においては、権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入するとの方針が決定された。その議論の結果、2013年1月の著作権法の改正によって新たな権利制限規定が導入されたが、これは文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の報告書にまとめられた、いわゆる「3類型」をも網羅できないようなものとなってしまった。これは権利制限の一般規定と呼べるようなものではなく、いくつかの個別規定を増やしただけのものにすぎない。よって知的財産計画2014において、再度権利制限の一般規定の導入の方針を示し、ユーザーのアーカイブされたコンテンツの利用の利便性の向上及び国内産業の活性化を目指すべきである。

[3] クラウドコンピューティングに対応した著作権制度の整備を

クラウドコンピューティングを用いた各種サービスが世界的に飛躍的に広がっている中、日本では「カラオケ法理」等によって直接侵害の範囲が過度に拡張され、先進的なサービスが生まれにくい状況にある。制度の見直しにあたっては直接侵害の範囲を縮小・整理し、メディア変換やフォーマット変換などの公正な利用をセーフハーバーとして著作権侵害としないような制度の設計が必要である。その際に「間接侵害」を創設するということであれば、間接侵害の範囲を過度に広げないようにし、間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定することが求められる。

[4] 行政の持つデータのライセンスを利用しやすいものに

また政府や自治体の持っている各種データもアーカイブとして捉え、行政の持つデータの利活用についても知財戦略に盛り込み、知財戦略としてもオープンガバメントを推進していくべきである。例えば、過去に行政機関が発刊した白書や報告書といった、税金で作成され極めて公共性の高い文書にまで著作権の制限がかかり、全文のネット上での公開に支障が発生するような事態は、極めて非民主主義的であり悪しき官僚主義的な矛盾に満ちていると評さざるをえない。「オープンガバメント」の推進に不可欠なオープンデータを進めていくためには、行政の持つビッグデータを国民が利用しやすいライセンスと形式で公開することが重要である。経済産業省や文化庁が進めているような、行政のデータをパブリックドメインないしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを用いて公開する取り組みを、国全体として進めていくべきである。

音楽産業の国際展開に関するタスクフォース報告書に関して

【要旨】

本報告書においては下記を求める。

  • サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態を受け入れる環境整備
  • 著作権に関する国際協定の交渉にもマルチステークホルダーの導入
  • 補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築
  • ミュージシャン自身が利用できる柔軟なミュージックファンド

【全文】

第2章 わが国の音楽産業を取り巻く環境

サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態を受け入れる環境整備

消費者の音楽の聴取形態として、従来のCDやネット配信によるコンテンツの購入に加えて、サブスクリプションサービスを用いるものが増えてきている。日本においてもレコチョクBestやKKBox、Music Unlimitedなどがサービスインしたが、未だ海外の作品を中心とした配信で、日本初の音楽はまだまだカタログが少ない。また世界的にサービスを開始しているSportifyやPandoraは日本では現在利用できない。さらに先日日本でサービスインしたiTunes Matchはサービス開始の発表から2年半遅れのスタートであるし、Google Musicは未だ日本では利用できない。このような新たな音楽の聴取形態に合わせたサービスで日本の音楽を利用できるようにすることは、日本の消費者の利便性を高めるにとどまらず、日本の音楽を世界に広めるための重要な施策のひとつである。海外の消費者が違法ダウンロードに頼ることなくわが国のコンテンツを楽しめるよう、サブスクリプションサービスなどの新たな音楽の聴取形態に速やかに対応することを知的財産推進計画に明記することを求める。

第3章 音楽産業の国際展開の現状と課題

(6)海外での権利保護システムの改善と海賊版対策

著作権に関する国際協定の交渉にもマルチステークホルダーの導入を

「相手国政府との二国間協議などを通じて、著作権保護の枠組作りを進めていくことが求められる」とあるが、このような国際交渉は公開とし、また権利者だけでなく、ユーザーもステークホルダーとして交渉の場に臨む形を目指すべきである。このようなマルチステークホルダーの考え方はインターネットガバナンスを考える上で主流の考え方となってきている。

(7)「面」を「立体」にー日本ブランド構築によって関連産業の輸出拡大へ

補償金に頼らない音楽産業と製造・サービス業の協力関係の構築を

「わが国製造・サービス業などが自発的にコンテンツの国際展開へ向けた資金的支援に乗り出していくことが望まれる」とあるが、これがクリエイターへの対価還元としての新たな補償金制度の創設を求めるものとならないようにすべきである。

そもそも私的録音録画補償金制度は、あくまでも複製による損失の補償を目的とした制度であり、そもそもクリエイターに対する環境の整備という役割は小さい。強力なDRMやダビング10によってデータの複製が制限されている以上、複製による損失はなく、デジタルチューナーのみを持つレコーダーに対する私的録画補償金については、その根拠がないことが司法によって示された。よって現状のコピーコントロール・アクセスコントロールが続けられる以上、クリエイターに対する環境整備と称して私的録音録画補償金の対象機器を広げることで、制度の拡張を進めることは誤りである。

私的録音録画補償金をクリエイターに向けた環境整備の一環として位置づけるのであれば、現状のコピーコントロール・アクセスコントロールの撤廃や改善、フェアユースの導入など、ユーザーがコンテンツを利用しやすい制度構築も同時に行うべきである。また文化予算の増額や、コンテンツの鑑賞に国が一定額の補助を出す「芸術保険制度」の導入、コンテンツに関わる人や団体に寄付をすることで控除を受けることができるような寄付税制の推進など、ユーザーとクリエイターの両方が利益を得られるような制度の構築も考えるべきである。

第4章 音楽産業の国際展開に向けて政府・業界が取り組むべき課題

ミュージシャン自身が利用できる柔軟なミュージックファンドを

本報告書31ページの参考資料内に英国のクリエイティブ産業支援策が紹介されているが、ここに記載のないものとして英国のMusic Fundがある。これはミュージシャンに対して海外ツアーやプロモーション、そして世界最大級の音楽見本市 SXSW(http://sxsw.com/)やMidem(http://www.midem.com/)などへの出展の費用を一定の審査のもとで総額の70%まで補助するものである。業界団体や法人だけではなく、ミュージシャン自身が自らのコンテンツを海外でアピールできるようなミュージックファンドの創設を政府のクリエイティブ産業支援策として求める。

「知的財産推進計画2014」全体に関して

【要旨】

安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境作りを推進すべき。TPPには慎重に対応せよ。ACTAの推進は時代錯誤。著作権を報酬請求権化すべき。著作権がイノベーションを阻害しないような環境整備を求める。知財戦略の議論にはコンテンツの利活用に明るい利用者の代表を加えるべき。違法ダウンロード刑事罰化、リーチサイト規制には反対。災害時の放送のインターネットサイマルを可能とする法整備を求める。

【全文】

安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境作りについて

電子書籍に関する環境整備は出版社については進んだが、消費者の保護に関する取り組みは進んでいない。特に電子書籍の再ダウンロード権が5年に制限されていたり、またエルパカBOOKSやJMangaなどのように、事業者の撤退によって購入した電子書籍が読めなくなってしまったりという事態が一度ならず発生している。これでは消費者は安心して電子書籍を購入できない。消費者が安心して電子書籍などのデジタルコンテンツを購入できる環境の整備が求められる。もっとも消費者の利益が高い状態はDRMの排除であるが、Amazon MP3など既に実現し軌道に乗っているサービスがあることを鑑みれば、DRM無しの事業化も不可能とは考えられない。業界のビジネスモデルの稚拙さや経営の失態を消費者に尻拭いさせることがないような施策を知的財産本部としても進めてほしい。

また当協会が「知的財産推進計画2013」の策定に向けた意見募集に際して提出した下記の意見を2014年度においても引き続き求める。

知的財産に関する国際条約・協定について

■TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について

本意見募集に対して「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム」(thinkTPPIP)が提出した意見に当協会は全面的に賛成する。知財戦略が国際条約の中で議論をされるようになった現代においては、日本政府として確固たる戦略を持ち、知的財産を他の分野のバーターとすることのないように交渉を進めるべきである。またその交渉については十分な情報公開を各国に提案するとともに、充実した交渉のためにも国民との課題共有を進めるように求める。

■ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)について

知財戦略としての「模倣品・海賊版の拡散防止」という方向性には賛同する。しかしACTAはその目的から大きく逸脱したものであり、国内外から批難を浴びた。特に「HELLO DEMOCRACY GOODBYE ACTA」のスローガンのもとに、ACTAが欧州議会において大差で否決されたことを政府は厳しく認識すべきである。ユーザーの知へのアクセスを阻害し、また不透明なプロセスで批准が進められたACTAの発効の推進は、日本から見ても、そして交渉参加国から見ても知的財産戦略としては誤りで、知財計画に掲載すべきものではない。

知的財産に関する基本的な視点

■著作権について

わが国では、著作権の許諾権としての性格が強く意識されすぎている。著作権者に強力な許諾権があることは、企業がコンテンツを活かした新規事業に乗り出す上で不透明な「著作権リスク」をもたらし、企業活動を萎縮させる一方、ユーザーのコンテンツ利活用における利便性も損ねている。かつ、学界では、強力な許諾権があるからといって必ずしも著作権者に代価がもたらされるわけではないとする研究が有力である。このように、現状の許諾権としての著作権は、ユーザーの利便性と産業の発展を無意味に阻害していると言わざるを得ない。そこで、より高度なコンテンツ活用を目指すべく、著作権を報酬請求権として扱うようにシフトしていくべきであろう。

近年はICT技術やインターネットの普及に伴い、ユーザー=クリエイターという関係が強く見られるようになった。ユーザーのコンテンツ利活用における利便性を高めることは、新たに多様なコンテンツを生み出すこととなり、結果的にコンテンツホルダーにとっても利益になる。ひいては経済活動の活性化をもたらし、日本経済にも貢献することになる。 なお、ハーバード大学では著作権の報酬請求権化についての研究が進んでおり、参考になる。日本でも、例えば著作権法上のレベルでは許諾権のままでも、産業界の自主的な取り組みとして、合理的な範囲で報酬請求権として運用することが可能である。産業界にイノベーションをもたらし、経済を拡大するために、政府は報酬請求権としての可能性の啓発に取り組むべきである。

■「プロライツ」から「プロイノベーション」へ

今後の経済政策としてふさわしいのは、権利を囲い込み、墨守するだけの「プロライツ」ではない。権利を活かしてリターンを最大化する「プロイノベーション」の形を目指すべきである。安直なプロライツ(プロパテント・プロコピーライト)は結果としてイノベーションや競争を阻害し、ひいてはユーザーの利便性が向上する機会を損なう。ゆえに、コンテンツ産業戦略全般において、プロイノベーションという方針を明記し、それに従った具体策を策定すべきである。これからの時代のコンテンツの利用や創作は、それを鑑賞するための技術イノベーションと不可分である。ユーザーの利便性を高めてコンテンツを活用していくためには、技術のイノベーションを阻害しないことに最大限留意すべきである。

■政策立案プロセスへのユーザー代表の参加

知財戦略としての政策目的を促進するためには、公的な議論にユーザー代表が参加する必要がある。業界内やコンテンツホルダーとの間の短期的な利害対立に対する政府の調整能力は、既に限界にきている。一方、ICT産業やコンテンツ産業の一部においては、ユーザーの利便性への要求が産業を成長させてきた。特に近年では、ユーザー生成メディアが莫大な利益を生み、あらゆるコンシューマビジネスがこれを取り入れつつあることは周知のとおりである。このようにユーザーの利便性を高めることが産業界のイノベーションを産み、コンテンツの利用の拡大をもたらすことに鑑みれば、技術やコンテンツの利用態様に明るいユーザーの代表が知財政策で強く発言していくべきである。

その他タスクフォースで議論されていない論点について

■違法ダウンロード刑事罰化について

2012年10月の著作権法の改正によって、インターネット上に違法にアップロードされた音楽や映像を、そのファイルが違法であると知りながらダウンロードする行為について刑事罰が科せられる(いわゆる違法ダウンロード刑事罰化)こととなった。本改正の付則として定められた事業者による教育・啓発活動の義務規定や違法ダウンロード防止への努力規定による取り組みが進められているとはいうものの、これは「インターネットでダウンロードされたファイルが違法なものかどうかは技術的・外形的に判断できない」という根本的な問題をクリアできるものではない。

また本法改正は文化審議会での議論を経たものではなく、音楽事業者や映像事業者を中心としたロビイングによって進められた。国会による議論もほぼなく、一方的に議員立法によって進められたこの改正のプロセスは大きな問題を抱えている。このように政府による知財計画や文化審議会での議論を無視し、業界団体のロビイングに唯々諾々と賛同し進めてしまったことは今後の知財戦略を考える上で大きな負の遺産を残した。

違法ダウンロード刑事罰化が本質的に抱える問題、そして政府や審議会の決定を無視したプロセスで利害関係者の一方的な要望が通ってしまった問題から、違法ダウンロードの刑事罰化については白紙撤回し、知財戦略本部や文化審議会における議論を行うべきである。

■リーチサイト規制について

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されているリーチサイト規制については全面的に反対である。リーチサイトと言っても、その有り様は多種多様であり、リーチサイトへのリンク行為はどうなるのか、リーチサイトのURLがSNSを通じて転送され続けた場合はどうなるのか、また適法な内容を示すサイトを掲載したはずが、後日同じURLのままで違法なファイルの掲載などがされた場合はどうなるのか、といった予見できない状況が数多く発生する。

情報と情報を関連付けるハイパーリンクは情報通信の基幹技術であり、インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされている。またハイパーリンクはいまやウェブサイトにとどまるものではなく、現在普及過程にある電子書籍にもハイパーリンクは用いられている。リンク行為を規制することは、今後の情報通信技術の発展全体に影響を及ぼすだけでなく、社会に大きな混乱をもたらす。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなく、違法アップローダーや違法アップロードされたコンテンツへの対処でカバーすべきである。

■テレビのインターネットサイマル放送について

東日本大震災の際に、各テレビ局がニコニコ生放送やUstreamなどの既存のプラットフォームを用いてテレビ放送をインターネットでもサイマル放送した。この取り組みによって在外邦人や海外メディア、そして被災地にもいち早く情報を届けることができた。しかしこのサイマル放送はテレビ局の自発的な取り組みではなく、ユーザーが緊急的に独自に行なった行動をテレビ各局が追認して進められたものである。このような事例を活かすためにも、テレビ局が自発的にインターネットでサイマル放送を行えるような法整備が求められる。特に災害時などの緊急事態には、インターネットサイマル放送を義務化するなど、知財戦略としても災害対策を進めるべきである。

以上
著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2014-05-16 15:59:25

MIAU設立6周年記念イベント「MIAU祭2014」開催のお知らせ

MIAUは2013年10月で設立から6周年を迎えました。そこでこれまでの6年間を振り返りつつ、支援をいただきました皆様に感謝を伝え、さらにこれからのMIAUの活動の方針を考えるイベントを以下の要領で開催いたします。

基調講演には米国よりデジタル時代の自由な言論を守るために活動し、MIAUのロールモデルともなったNPO Electronic Frontier Foundation(EFF、電子フロンティア財団)の国際政策アナリストのMaira Suttonさんをお迎えし、今世界が直面するインターネットの自由に関する諸問題についてご講演をいただきます。その他のセッションでもそれぞれの分野のスペシャリストをお迎えし、議論を進めてまいります。

遠隔地の方や日程が合わない方もニコニコ生放送でライブストリーミングをいたします。どうかお誘い合わせの上、ご参加ください。

イベント詳細

日程
2014年3月15日(土曜日)
会場
国際大学GLOCOM ホール(東京・六本木)
参加費
無料(ただし先着順)
MIAUメルマガ「ネットの羅針盤」購読者の方は優先入場いただけます。

ニコニコ生放送

お申込み

お申し込みは締め切りました

タイムスケジュール・登壇者

※登壇者は現在ご出演が確定している方々です。

※タイムスケジュールは予告なく変更の可能性があります。

■基調講演(13:00〜13:40)

Maira Sutton
Electronic Frontier Foundation (EFF) Global Policy Analyst

■Session 1:インターネットと著作権(14:00〜14:50)

久保田裕
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事
田村善之
北海道大学大学院法学研究科教授
田中辰雄
慶應義塾大学経済学部准教授
heatwave_p2p
ブロガー
津田大介(モデレーター)
MIAU代表理事、ジャーナリスト/メディア・アクティビスト

■Session 2:インターネットとプライバシー(15:10〜16:00)

鈴木正朝
新潟大学法科大学院教授
石井夏生利
筑波大学図書館情報メディア系准教授
高木浩光
産業技術総合研究所セキュアシステム研究部門主任研究員
津田大介(モデレーター)
MIAU代表理事、ジャーナリスト/メディア・アクティビスト

■Session 3:MIAUの今後(16:20〜17:10)

清水亮
株式会社ユビキタスエンターテインメント 代表取締役社長 兼 CEO
小倉秀夫
弁護士
モーリー・ロバートソン
ミュージシャン+ジャーナリスト
ハリス鈴木絵美
Change.org Japan Campaigns Director
小寺信良
MIAU代表理事、文筆家
津田大介(モデレーター)
MIAU代表理事、ジャーナリスト/メディア・アクティビスト

■Session 4:オープンデータ・オープンガバメント(17:30〜18:20)

渡辺智暁
国際大学GLOCOM主幹研究員、コモンスフィア理事
福井健策
弁護士、thinkC世話人
楠正憲
国際大学GLOCOM 客員研究員
庄司昌彦(モデレーター)
MIAU理事、国際大学GLOCOM講師/主任研究員

サプルメントセッション

各セッションの間にMIAUのメンバーよりMIAUの活動や最近のトピックスに関する下記のテーマの報告・解説を行うセッションを行います。

  • ビットコイン(八田真行、ゲスト:楠正憲)
  • リテラシー教育(小寺信良)
  • ネットと政治(現在調整中)
  • 自炊代行訴訟の動向(小寺信良)
著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2014-03-13 01:13:31

東京都知事選に向けた「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」実施のお知らせ

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は2月9日に行われる東京都知事選挙に向けて、出馬する候補者に情報通信政策やネット・アニメ・漫画規制に対するスタンスを問う「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」を実施いたしました。

結果は下記サイトで公開しております。
http://miau.jp/miaupub/tokyogov2014/

参考エントリ:東京都知事選に向けた「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」実施のお知らせ
http://miau.jp/1390556568.phtml

著作者 : 香月 啓佑
最終更新日 : 2014-02-02 23:29:23

東京都知事選に向けた「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」実施のお知らせ

一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は2月9日(日)に行われる東京都知事選挙に向けて、出馬する候補者に情報通信政策やコンテンツに対する表現規制に対するスタンスを問う「都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート」を実施することをお知らせします。本アンケートの結果は各立候補予定者から回答を受領後、ウェブサイトに掲載いたします。大手メディアでは話題になりにくい論点について、各候補者のスタンスを確認することを目的としております。みなさまの投票の際の参考の一つとなれば幸いです。

アンケートを送付した立候補予定者(都選管発表順、敬称略)

  1. ひめじけんじ(郵送済)
  2. 宇都宮けんじ(FAX送信済)
  3. ドクター・中松(FAX送信済)
  4. 田母神としお(FAX送信済)
  5. 鈴木たつお(FAX送信済)
  6. 中川智晴(FAX送信済)
  7. ますぞえ要一(FAX送信済)
  8. 細川護煕(FAX送信済)
  9. マック赤坂(FAX送信済)
  10. 家入かずま(Facebookで連絡済)
  11. ないとうひさお(郵送済)
  12. 金子博(郵送済)
  13. 五十嵐政一(FAX送信済)
  14. 酒向英一(郵送済)
  15. 松山親憲(郵送済)
  16. 根上隆(郵送済)

公開スケジュール

回答締切:1/31(金)いっぱい

回答公開:2/1(土)

※締切後に回答を受領したものは随時公開してまいります。

都政におけるメディアに関する政策についてのアンケート

インターネット利用に関する施策について

  1. インターネットには、多くの有益な側面と共に有害な側面もあると考えられます。都民のインターネットの利用に対してはどういった政策を重視する必要があると思いますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 情報リテラシー教育を進めて、利用者の問題対処能力を高める。
    2. 事業者による安全・安心のための自主的取り組みを促進させる。
    3. 行政主導の安全・安心対策を促進する。
    4. 選択理由(              )
  2. 青少年が利用するインターネット端末に対する施策について
    現在携帯電話やスマートフォンだけでなく、携帯ゲーム機やテレビ、音楽プレーヤーなど、様々な機器でインターネットのアクセスが可能になっています。これらの機器を青少年が利用するにあたり、どのような施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 機器メーカーに対してフィルタリング搭載義務などの規制を加えるべきである。
    2. ネットサービス事業者が行なう自主的な取り組みを推進すべきである。
    3. 未成年者への販売に対して機器販売者に何らかの規制を加えるべきである。
    4. 学校教育の一環として、ネットリテラシーに対する教育を行うべきである。
    5. 各家庭へのネットリテラシー教育支援で対応すべきである。
    6. 選択理由(              )
  3. SNSやメッセージアプリケーションを巡るトラブルについて
    携帯電話やインターネットが普及したことで、TwitterやFacebookなどのSNSやLINEなどのメッセージングアプリケーションによるコミュニケーションサービスが新しいライフスタイルや価値を生み出している一方、青少年を中心にトラブルに巻き込まれる事例も増えています。東京都としてどのような施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 携帯電話やインターネット接続の利用そのものに、新たな制限が必要である。
    2. 幾つかのウェブサイトの利用には、新たな制限が必要である。
    3. 事業者による、新たな啓発活動が必要である。
    4. 学校による、新たな啓発活動が必要である。
    5. 家庭での取り組みを促進するために、新たな啓発活動が必要である。
    6. 選択理由(              )

ゲーム・漫画・アニメ等の規制について

  1. ゲームの規制について
    ゲームには、教育効果が期待される場面もある一方で、青少年に有害な影響を与えており、規制を強化すべきであるという意見があります。東京都としてどのように取り組むことが望ましいと思いますか。最も近いものをお選びください。
    1. 現状は適切な区分が行われているとは言えず、規制強化する必要がある。
    2. ゲームの影響を科学的に判断するために、さらなる調査が必要である。
    3. 現在の表現区分・販売規制で適切である。
    4. 選択理由(              )
  2. 青少年育成条例での漫画・アニメへの規制について
    平成23年に、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」が改正・施行され、漫画やアニメに対する表現規制が強化されました。この改正の内容や、議論のプロセスは妥当であったと考えますか。また、今後改正するとすれば、表現の自由と青少年保護のバランスは、どのような方向性であるべきと考えますか。
    1. 妥当であった ・ 妥当ではなかった
    2. 理由(              )
    3. 今後(              )
  3. コンテンツに対する規制の主体について
    ゲームや漫画、アニメ等に対する内容・表現の規制は、青少年へ悪影響があるから、一定の規制が必要だという意見がある一方、販売時のゾーニングや業界団体のレーティングが機能しており、国や自治体が立ち入るべきでないという意見があります。この点についてはどうお考えでしょうか? 最も近いものをお選びください。
    1. 国レベル、法律レベルで議論し、強制力のあるしっかりした規制を導入すべきである。
    2. 自治体レベルで、地域の実情にあわせた販売規制を導入すべきである。
    3. 個々の企業や業界団体と連携し、民間の自主的な取り組みを支援するに留めるべきである。
    4. 本来、個人や家庭の問題であり、行政はあくまでこれらのサポートに徹するべきである。
    5. 選択理由(              )

都政におけるICT利活用について

  1. 都民の声を政策に反映させるために、パブリックコメントや都政モニター、ウェブサイトからの「都民の声」募集などといった取り組みが行われていますが、もし不足があるとしたら、どういった新しい施策が必要と考えますか? 最も近いものをお選びください。
    1. パブリックコメント制度の位置付けを明確化し、さらなる拡充を図るべきである。
    2. 審議会の委員構成を公募とする等、都民の声をこまめに政策決定過程に反映させるべきである。
    3. インターネットを使った政策募集、議論の場の提供といった、新たな制度を導入すべきである。
    4. 現行の制度で十分である。
    5. 選択理由(              )
  2. 国会のネット中継や放送のアーカイブなど、ICTと映像を利用した生の情報発信が盛んに行われるようになってきています。東京都では今後、このような取り組みをどのような形で推進すべきだとお考えですか? 最も近いものをお選びください。
    1. ニコニコ動画やUstreamなど、民間のサービスを活用した方策を取り入れたい。
    2. 衆議院TVのような都独自のサイトを作って、生中継やアーカイブ公開を実施したい。
    3. 地上波やケーブルテレビといった既存メディアでの情報発信をより重視したい。
    4. 現状の情報発信で十分である。
    5. 選択理由(              )
  3. 平成23年の東日本大震災では、政府や地方自治体がTwitterアカウントを作成し、積極的に緊急情報を発信しました。自然災害情報に限らず、現在東京都はTwitterやFacebookを用いた情報発信を進めています。今後どのような形で東京都からの情報発信を推進すべきだとお考えですか? 最も近いものをお選びください。
    1. Twitterやfacebookなど、民間のソーシャルメディアを活用した方策を取り入れたい。
    2. 東京都の公式WEBサイトをさらに充実させることで対応したい。
    3. 現状の情報発信で十分である。
    4. 選択理由(              )
  4. 公共情報サービス等を開発するコンテストを開き、民間のアイディアを募って新たな解決手法を探る例があります。国内では横浜市や千葉市、海外ではニューヨーク市などが先駆的な都市として知られています。このような施策を東京都ではどのように取り入れるべきだと思いますか? 最も近いものをお選びください。
    1. 積極的に行政が持つ情報を公開し、民間とのコラボレーションを推進すべきである。
    2. 公開をする前に、行政が持つ情報を自治体自身でもっと積極的に活用することを推進すべきである。
    3. 東京は民間サービスも充実しているため現状で十分であり、行政によるこれ以上積極的な情報提供は必要ない。
    4. 選択理由(              )

ICT政策全般について

  • 上記以外で、東京都として取り組むべきと考えるICTを活用した新しい施策をお考えでしたら、下記にご記載ください。またインターネットユーザーへのメッセージなどございましたら合わせてご記載ください。
    • (自由回答)
    著作者 : 香月 啓佑
    最終更新日 : 2014-01-25 00:08:15
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